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Lv.1の王様  作者: 小鳥遊 雨音
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携帯電話

レイブンが居なくなった後、メイド服を着たドラゴンが部屋に来てくれて、色々とお世話をしてくれた。

食事や入浴の手筈だ。

疲れ過ぎた為か食欲が無かったので食事は遠慮したが、せっかく湯を張ってくれたので、ドラゴン脚のついた浴槽には浸からせて貰う事にする。

湯船には何かの黄色い花弁が散らしてある。

やっぱりここも贅沢だと思う。

飲み物をお願いしたら、小さな傘が刺さった青い飲み物でも出てきそうなレベルだ。



湯船の中でこれまでの事を色々考えを巡らせてみる。

そもそもの原因であるあの岩と鏡の事。

レイブンという名の悪魔・導師。

剣の試練とやらの事。

それから、王様がドラゴンという事……。

自分が……ドラゴンの王?



ダメだ。

何度考えても自分に直結しない。

何度起こった事象を自分の中でいじくり回しても、自分の納得できる答えは出てこなかった。

世界も常識も違うし、あまりにも自分の理解の許容範囲を超えている。



浴槽の中で、ふと自分の手を見てみると指の皮がふやけていた。

湯船の温度もだいぶ下がってしまっていると、ようやく気づく。

寒さを感じながら慌てて上がると、サイドテーブルに置いておいた私の服が無くなっていた。

帰るときに着なきゃならないから、捨てられてないといいんだけども。

代わりに幾何学的な青い刺繍がしてある白いシャツと、ベージュの綿のズボン、靴と靴下、白の下着類がサイドテーブルに綺麗に畳まれて用意されていた。

たぶんあのドラゴンメイドさんに持って行かれてしまったのだろう。

着るものに困って、とりあえず着てみる。


ふむ。着心地は悪くない。

優しい肌触りがいい感じだ。

ズボンの裾が長かったが、足首に紐が付いていて絞れたので問題はない。

新しい服を着て鏡の前に立ってみると、自分が知っている自分じゃないような気がして少し嫌だったが、仕方ないと思った。

携帯はベッドの枕元から動かされていなかったから、よしとするしかない。


ベッドに倒れこみ、枕元に転がしてある携帯に手を伸ばす。

そろそろ電池が切れるんじゃないかと、画面の電源を入れた。


「えっ?!」

右上の電池マークは、ほぼフルの状態だ。

それだけじゃない。

何より驚いたのは、示している時間だった。

こちらの世界に飛ばされて確認した時に見た15:00のままだったのだ。

……あり得ない。

元の世界では時間が止まっているんだろうか。


相変わらず左上の電波表示は圏外のままだ。

携帯で何ができて、できないのか……これは調べてみるのもいいかもしれない。

それからしばらく携帯をいじくり回してみた。


電話、インターネットは使用できない。

メールは書けて保存はできるが、送れない。

写真は撮れる。動画も撮れる。

過去の撮った写真や動画もちゃんと見れる。

録音アプリ、正常起動。

計算アプリ、正常起動。

落としておいた音楽や落としきりのゲーム、再生可能。


なるほど、ネットや回線を使わないやつは使えそうだ。

しかも電池が減る事がない。

やった! 単純に嬉しかった。

唯一、元の世界の自分を肯定する物的な証拠だ。

この世界では私の宝物に違いない。

少し携帯に励まされた、そんな気がした。

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