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箱庭の言の葉  作者: 粘土
6/7

恋はとても難しいです。

 彼女の、香川先生の問いとも忠告とも取れる言葉には尻尾が付いていた。考えて、考えて出した答えを、私の心そのものがその尻尾を引っ張ってしまうのだ。当然、最初の地点に戻らざるを得ない。戻ってしまうのなら、当然、考え直さねばならない。何しろ、ハッピーエンドがハッピーでないなどと、そんな事はこれまで露ほども考えていなかった。その繰り返しに因って、お終いには私の頭さえ縛り付ける様になった。決して太くはない筈のその尻尾を断ち切らないと、考える事すら意味が無い様な思いに捉われた私は、講義の準備をする事さえ難しくなってしまっていた。わざわざ相談に応じてくれた先生に申し訳無いと思うが、余計にこんがらかがってしまった様な気がする。ただ、もうよっぽどでない限り先生に助けを求める訳には行かない。先生の言った通り、私は大人なのだ。ひょっとすると、私にはいわゆる“女子力”というものが足りないのかもしれない。いや、きっとそうだ。どこまで思い返して見ても、異性との繋がりというに足りる経験など無かったのだから。成人してから随分と経つけれども、男性と女性という関係を持った事が無い。詰まり、体を求めるだとか、委ねるだとか、そんな経験が無いのだ。今更ながらに、本当に不思議に思う。……彼はどうだろうか。私の知る限り、彼もそんな景色を見せた事は無い。多分、私と同じだ。だとするなら、彼の想いは憧憬しょうけいでしかないのか。何となく、違う気がする。けれど、それは私の己惚れかもしれない。一時の“熱”をこの先まで続くものと、知らずに喜んでいるのではないだろうか。……また、最初に戻ってしまった。苦しい。誰か、助けて欲しい。いっそ、彼の胸に飛び込んでしまいたい。そうしてしまえば、救われる。少なくとも今は。そう、今は。ダメだ。このままではおかしくなってしまいそうだ。……

 私はとにかくぐるぐると回り続ける頭を冷やそうと、浴室に飛び込んでシャワーをこれでもかという位に浴びた。ほとんど冷水に近い水を頭からかぶっているのに、頭は冷えても、なぜか、目が熱かった。一頻り浴びたところで、適当に水を拭ってベッドに倒れ込んだ。直ぐに眠気がやって来て、うとうととしているなと思った頃には眠りについてしまった。そして、夢を見た。


次で終わりです。

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