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マイハウス

作者: 天明

 ジリリリリリリリリリ

 警報がどこかでなっている。近所に住んでいる人間は慌てて避難を始める。

 私は慌てず、安心して家の中にいる。硬化ガラスに囲われたスケルトンハウスにいる限り、世界のあらゆるものから守られ、私に害が及ぶことはないからだ。

 一杯の紅茶を啜りながら。今日の警報はなんだろうかと私は思考を巡らせる。

 ――トルネードだろうか?いや、それはない。一昨日トルネードは来たばかりだ。

 北国からの侵略だろうか?それもない。確か5時間前に停戦条約が結ばれている。

 新種のウイルスだろうか?それだ。それに違いない、新種のウイルスが今朝方隣町で発見されたと言っていた。

 私は納得して、紅茶を啜り本の続きを読もうとしたが、あることに気がついて手が止まった。室外に設置されている、超高性能空気清浄機の起動音がしないのだ。

 スケルトンハウスのいくつもある売りの一つがこの超高性能空気清浄機である。ゴーという轟音を立てながら最新の化学兵器もウイルスでもなんでも浄化していく、この機会のおかげで何度も命拾いをした私はこの音を聞くだけで安心した。清浄機を作った会社もそのような意図があり音をつけたのだと公言している。後から音を足しているだけでこの轟音は本来の浄化するという機能に全く役に立っていないのだ。それを証拠に静音モードに切り替えると、音が全くしなくなる。そこに清浄機があるのかもわからなくなる。

 何処か遠くで流てくる警報が聞こえてきた。

「今朝、条約が結ばれた……侵略してきました……あと…分ほどで、首都の……」

 途切れ途切れに流れてくるアナウンスからほとんど内容が理解できた。世も末だ。数時間で約束は反故される時代に入ったのだ。それも、単なる口約束ではない、いま地球上で一番権威を持っているとされる、地球平和協会の調停によって作られた条約を破られたのだ。多くの人間はこの事件をどう見ているのだろうか?

 ふと窓の外を見ると、巨大な剣山といった風貌の物体が何台も存在した。

 そのうち中でも長い針が動きこちらに向いた。その段階になってやっとその針が砲身であって、その物体が洗車であることに気がついた。

――ドン……ガッ

 曇った音とともにものすごい速さでなにか飛んできたと思ったら、鼻先でその物体が爆発した。目の前で爆風が巻き置き、爆炎が舞い上がる。粉塵が舞い起こったためか空気清浄機が轟音を鳴らし稼働し始めた。いくら安全と思っていてもその迫力を見ると、首筋に一筋の汗をかいていた。

 しばらく粉塵が視界を塞ぎ、外の世界が見えないくなっていた。どれぐらいたったのだろうか徐々に視界が晴れてきたとき少しの違和感を覚えた。何やらプレッシャーを外から感じるのだ。視界が晴れた時それは判明した。

 スケルトンハウスを囲むようにして戦車や得体の知れないモノを担いだガスマスクをした兵士に囲まれたいたのだ。

 彼らはなにか指示を待っているようで静止したまま手に持っている物体の先端をこちらに向けている、マスクの下に通信機が隠されているだろうか、機械のように正確な陣形と姿勢をとっていた。

――緊張が走る

 その空気に耐え切れず、思わず立ち上がったその瞬間

――ババババババババババ

全方位から轟音が鳴り響く、兵士の持っている物体の先端から火花が飛び交う。思わず僕はしゃがみ込む。空気清浄機がまた轟音を立てて起動し始める。

どれぐらい打ち続けただろう、突然ぴたっと銃声が成りやんだ。ただ空気清浄機の轟音が鳴り響いている。スケルトンハウスの壁は頑丈で傷ひとつ付いていなかった。

 兵士たちは、なんのこともなかったように立っている。

 またも嫌な雰囲気が流れた。どれぐらいたっただろうか。兵士がまたもや突然動き始めた。というより退却を始めた。

 流れるように、精錬された動きだった。

と同時に戦車が一台スケルトンハウスギリギリ近くまでやってきた。睨みを効かせるようにずっとそこに存在し続け、何十分もそこにいた。兵士たちがいなくなると今度は全速力でハウスから離れていった。

 戦車がいなくなったその場所に、直径1メートルほどで卵型をした緑色のテカリのある物体が存在した。なんなのだろうと、じっと見ているとその物体がいきなり破裂した。

 歯列というか蒸発といったほうがいいだろうか、さっきまでそこに厳として存在していたのがあと欠片もなく消えていた。

 次の瞬間、空気清浄機が轟音を上げて動き出した。

 

 それから半年後、北国は徐々に劣勢に追い込まれ、気がつくと私の住んでいる地区は奪還されていた。半年間、特別なラインから食事が届いていたので特に困ることはなかったが人恋しくなっていたため奪還されて人が戻ってくる。というのは楽しみだった。

 今日は、ちゃんとこの地域が安全か調べるために兵士がやってきた。

 兵士は、我が家の傍までやってきた。嬉しそうな笑顔を浮かべて。

 しかし次の瞬間その兵士は血反吐を吐いて死んだ。

 原因を調べてみると敵国が置いていった爆弾は超高性能のもので数百年は毒性が消えないという。スケルトンハウスの中では大丈夫だが、そばによると死んでしまうらしい。

 さらに厄介なことにスケルトンハウスの出入り口周辺までその猛毒ガスがそんざいしていて、しばらくこのハウスにいないといけないらしい。

 私はここの中で生きていくことになってしまった。嫌ではない。しかし味方であるはずの兵士のあるいは近所の人間のハウスを見る目を見るとどこか怖いのだ。 

 そして、そのハウスを見るような目で俺のことを見るのが何とも言えず怖いのだ。

2020年までに1001本書こう企画第一作です。

読んで興味が出た方は下記URLにアクセスしてみてください。

この企画の手助けとして、小説のテーマ募集してます。このテーマで書いて欲しいなどあったら、劇団公式HPより連絡ください。


http://surrealismcircle.com/

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