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最期の栞  作者: 武倉悠樹
7/26

:7 意外な前途

 その後、裏側の案内も済み、昼休みをまたぐと、詩織は別の人間に引き継がれた。

「はじめまして、青山さん。私は霧島きりしまです。霧島きりしま穂乃果ほのか。サービス部児童YAサービス係です」

 そう、自己紹介をしながら霧島は詩織を見上げた。

 詩織は決して、背の高い方ではない。160と少し。その詩織を見上げるのだから霧島の身長が窺える。

 小柄な体躯。肩の高さで切りそろえた黒髪に、大きく澄んだ瞳。童顔、童声。仲の良い職員は彼女のことを座敷童子と呼ぶ。

「ワイエー、ですか?」

「ヤングアダルトの略ね。この図書館には児童書コーナーで一つブースがあるし、この季節学生さんの利用も多いです。そう言った利用者の方々へのサービスを専門に行う部課です。」

「そうなんですか」

 霧島は極めて事務的に毅然と説明を続ける。アダ名を含め、周りからいじられやすい事から身についた態度だったが、そんな事情を知らない詩織は、柔和な高田との違いに少し緊張を覚えた。

「えぇ、青山さんは夏休みの間のバイトだと聞いてます。主に、この児童向けの係を手伝ってもらうことになります」

「はい、わかりました。よろしくお願いします」

「まぁ、今日は初日ですから、午前中高田さんと館内を回ったように、係の仕事を見てもらうことからですね。メモは持ってますか?」

「はい」

「青山さんの対応だけに人は割けないので、分からない点、気になった点はメモに纏めておいてください。適宜時間が取れたら、質問に答える時間を設けます」

「はい、よろしくお願いします」

 その一言に、霧島が一瞬だけ相好を崩した。

「はい、よろしく。がんばって」

 その笑顔に、詩織は、お客様扱いはもう終わりだと気合を入れなおした。

 その日の午後。詩織のバイト初日の午後は、貸し出し用の絵本を持ったまま館内を走り回る子どもとの鬼ごっこで、見学どころではない騒ぎのまま幕を閉じることに成る。

 こちらが恐縮してしまう位、本当にすいませんでしたと、何度も頭を下げる保護者の方を見送ると、詩織に隣に並んでいた霧島は「これがこの係よ」と小さく告げた。

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