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最期の栞  作者: 武倉悠樹
26/26

:26 栞の先

 宮野は一息に悟の遺言を読みおえた。

「……死にゆく者が紡ぐ死にゆく者への物語を? 絶望の答え……と、言う」

 その時、光ケ丘中央図書館全体を揺るがすような悲鳴が館全体を包み込んだ。

「っっ!! なんだっ!!」

 慌てて、手すりに駆け寄り下を見下ろすと、館内から慌てふためき駆け出してくる人々の姿が見えた。口々に悲鳴を上げ、涙を流している者も多かった。

 宮野は慌てて館内に戻り、階段を駆け下りた。

 四階のフロアに出て、中央の吹き抜けから下の様子を見ようとし、そこに広がった驚愕の光景に宮野は愕然とする。四階の中央に設けられたパネルは粉々に砕け散り階下へと降り注いでいる。書架の至るところに広がる破片。

 そして、その中央にはおよそ尋常とは思えないほどに折れ曲がった人体と、そこから広がる赤いしずく

 それは変わり果てた詩織の姿だった。

 数多散らばった破片と、誰も寄せ付けない異様な迫力で、フロア中央に鎮座する死体。それが本と本が所狭しと並ぶ図書館のフロアを支配していた。

 泣き声。悲鳴。怒号。罵声。フロアは狂乱の最中にあった。

 何人をも物語に近づけないと言う圧倒的な迫力。

――死にゆく者が紡ぐ死にゆく者への物語。 

 これが、たった一人の青年が心の内で孤独に飼い続けていた絶望の現れなのか。その光景を前に、宮野はただただ涙を流し、震えることしか出来なかった。

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