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最期の栞  作者: 武倉悠樹
10/26

:10 手を動かしつつも

「青山さん、『RR』って知っていますか?」

「『RR』ですか? はい、知ってますけど?」

 霧島の質問に、詩織は作業の手を休め顔を上げた。

 霧島と詩織は児童ブースを離れ更衣室に居た。子どもたちのイタズラで汚れてしまった、児童ブースの折り紙の飾り付けを新たに折る作業をしていたのだ。

「今日の午後から、『RR』体験のブース始まるのよ」

「そう言えば、出てましたね。ポスター!」

「読書に馴染みのない子どもにも薦めやすい読書体験って形をとっていますが、毎年好評。機械の数に限りがあるから、抽選券も配ったり、大忙しになります」

 話しながらも、霧島の“お星さま”を折る手はすごいスピードで動いている。詩織もそのスピードに負けじと手を動かすのだが、中々巧くいかない。

「人手がいるので。他所の部署の人にも手伝いをお願いしてます。開架フロアの前島くんです」

 くしゃり、と音を立てて、詩織の折っていた“お星さま”の角が折れた。

 霧島は手を止め、詩織を見ている。

「どうかしました?」

「いえ、なんでもないです」

 詩織は対照的に顔を上げずに、折り損じの折り紙に見切りを付け、新しい紙を手に取り最初から折りなおす。

「同級生同士、協力してお願いします」

 今度は、詩織の手が止まる。

「同級生? ですか? 前島さん、が?」

「あら、違った? 青山さん、光峰高校の一年生でしょう?」

「えぇ、そうです」

「じゃあ、やっぱりそうね。前島くんも光峰の一年生だもの」

「そうだったんですか!」

「知らなかったの?」

「……はい、初対面の時は何も言ってなかったので」

 なんだ、あいつタメだったのか。

 そんな思いが詩織の心中を埋める。横柄な態度だった為に上級生とばかり思っていた詩織はこれまでさん付けで話しかけ、言葉も丁寧語を心がけていたのだ。

 なんだか、釈然としない心持ちだったせいだろうか、作業後半に折った詩織の“お星さま”はどうにも歪んで見えた。


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