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上級治癒魔法習得しました!

 翌日、まずは薬草園の水遣りと台所用の水汲みを済ませ、治癒術師さんを訪ねることにする。


 治癒術師さんは村へ滞在中は、村長さんの家に滞在している。なので、村長さんの家に向かった。村長さんの家は相変わらず、オープンだ。声を掛けて中に入ると、入ってすぐのスペースで昨日の治癒術師さんが待っていてくれたのだった。



「こんにちは!今日はよろしくお願いします!」



「こんにちは、ユーカさん。では、早速始めましょうか。村長にお願いして、中庭を使わせてもらうことにしているので、中庭に行きましょう」



 廊下を抜け、中庭に出る。中庭と言っても、結構広い。練習する場所としては、丁度いいくらいかもしれない。



「初級の治癒魔法の呪文は覚えていますね?」



「はい。【癒しを求む】です」



「そうですね。この呪文が中級、上級となるに連れて、長くなっていきます。詠唱が長くなれば、それだけ魔力を消費します。だから、魔力量が充分でないと、中級以上の魔法は使えないのです。初級と中級では、消費魔力がかなり違ってきますからね。ユーカさんの魔力量は豊富ですから、上級魔法も行使できるでしょう。でも、最初に中級魔法を使う時は、どっと抜けていく魔力の感覚にビックリするかもしれません。そこで、慌ててしまわないようにしてください、大丈夫ですからね。ここまでは大丈夫ですか?」



「はい。大丈夫です」



「よろしい。それでは、早速試して貰いましょうか。中級の治癒魔法の呪文はこうです。【我は求めん。癒しの光を。輝く光で包み込み、我の求めに応じて癒しを与えん】、間違えないように、しっかり覚えてください」



 詠唱は途切れてはいけない。間違えずに言えるように、しっかり諳んじる。魔力を込めない呪文は、何度練習しても大丈夫だからね。


 そろそろ大丈夫だろうと許可を貰い、魔力を込めて試すことにする。治癒魔法をかけるのは、やはり薬液だ。薬液に手をかざし魔力を込める。そして、呪文を唱えていく。



【我は求めん。癒しの光を。輝く光で包み込み、我の求めに応じて癒しを与えん】



 すると……詠唱を始めた途端、手のひらから魔力が抜けていく感覚を覚える。初級魔法を唱えた時は、こんな魔力が抜ける感覚はなかった。これは確かに、事前に言っておいて貰わないと、ビックリして途中で詠唱が途切れてしまったかもしれない。術師さんの『大丈夫』という言葉を信じて、詠唱を終える。すると薬液が一瞬光で包み込まれ、光が落ち着くと薬液の色が変わっていた。薬草の濃い緑色から、透明感のある黄緑色になっているのだ。



「ど、どうでしょう…?」



「成功ですね。成功すると、澄んだ黄緑色になりますから。ちなみに上級魔法も成功すると、色が変わります。ほとんど黄色に近い色になりますね」



(緑色から黄緑色、そして黄色かぁ…。まるで、光の色に近づいてるみたい…)



 そんなことを思うのだった。しかし、考え込む暇はなく、続けて上級の治癒魔法を教えてもらう。治癒術師さんは明日には、次の巡回先に向けて旅立つ。忙しいのだ。



「上級の治癒魔法も試して貰います。呪文はこうです。【我は請い願う。天上の神よ、癒しの力を我に与えん。癒しの光よ、天より我に降り注げ。我は行使する。マナ・ルート!】」



「確かに長い…というのもありますけど、最後の言葉はなんですか?意味がわからなかったんですけど…」



「最後の言葉は古語ですね。上級魔法の呪文には必ず古語が入ります。古代、魔術研究は盛んでしたが、残念ながら途切れた時代があったのです。現代はまた魔術研究が盛んですが、古代のそれには全く及んでいないのが現状です。なので、古代の呪文を取り入れる方が、効果のある魔法が使えるのですよ」



 また呪文を完璧に言えるように、しっかりと諳んじる。そして、実践だ。薬液に向かって呪文を唱える。



【我は請い願う。天上の神よ、癒しの力を我に与えん。癒しの光よ、天より我に降り注げ。我は行使する。マナ・ルート!】



 どっと魔力が抜けていく…。でも、唱えきる!薬液は光輝いた後、透明感のある黄色に変化した。成功だ!



「成功です!素晴らしい!一度で成功するとは!上級の治癒魔法まで覚えれば、治癒術師としてもやっていけますよ。ぜひ、治癒術師になる道も考えてみて欲しいですね。もちろん薬師を続けてもらってもいいのですがね」



 そう言って、軽く治癒術師への道に勧誘されるのだった…。



「ちなみに上級の治癒魔法では、たいていの怪我や病気を治癒することができます。不治の病と言われるものや、なくした腕を元に戻すというようなことはできませんが…ね。上級の治癒魔法をかけた薬液も、同じ効果がありますが、効果は永久ではありません。効き目も即効性があるのは、直接魔法をかける方にありますしね」



「薬液の効果はどれくらい持つのですか?」



「数日は大丈夫でしょう。薬液さえしっかり管理されてれば、魔法自体は再度かける事も可能ですよ」



「わかりました!ありがとうございます!」



 帰り際までさりげなく勧誘はされたが、ごり押しはしてこなかった。それに、魔法を教えてもらうのも、無償で良いらしい。使い手を増やすことで、少しでも多くの人が救われたらということらしい。



 翌日、旅立つ治癒術師さんを見送りにトーマさんと村長の家に向かった。他の村民さんたちとの別れの挨拶は、あらかた済ませたらしい。術師さんは最後にまた教えてくれた。



「治癒魔法は上級までお教えしましたが、私は水魔法は使うことができないのでお教えできませんでした。折角、使える能力があるのですから、いつかは習ってみるべきでしょう。この村には魔術師も魔術書もないですが、少し大きな街には1人は水魔法の使い手がいるでしょう。いつか、師事を仰ぐと良いでしょう。それでは、また次の巡回でお会いできるといいですね。さようなら」



「本当にありがとうございました!さようなら!」



 そうして、治癒術師さんは旅立って行ったのだった。


 アドバイスを思い返す。確かに折角水魔法も使える力があるなら、覚えておきたい。トーマさんも半年に一度くらいは街に出掛けることがあるみたいだから、その時に一緒に行けるように頼んでみようかな。


 魔術書もあるかもしれないし…普通の本も…。そう、この村には本が1冊もないのだ!この世界では本は貴重品で、村にある方が珍しいんだって…。それを知った時の悲しさといったら…。本が原因でこの世界に来たとは言え、本に罪はない!やっぱり本がない生活はあり得ないのだ!

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