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海を渡った先には

 海賊船の襲撃をうまくかわしてからは、特に大きなトラブルは起こらなかった。魔法を見ていた船員さん達から英雄扱いされちゃったりとか…『海賊襲撃をかわせた祝いの宴だ~』とかいった飲み会で、ジュースと間違えてうっかり強いお酒を飲んじゃって、記憶が曖昧になったりとかはあったけど……これは、トラブルじゃなく私の恥ずかしい話…? うん、このことは忘れよう。


 海賊船の襲撃時点で、まだ船旅の行程は半分ほど残っていたし、心の底から『もうトラブルが起こりませんように!』と思っていたから、大きなトラブルが起こらなくて良かったのだけどね。本気でトラブルなんて求めていないわけだし。ただ…。



(まさかそう思ったことで、フラグ立てちゃってたりして?!)



 なんて…思わなくもなかったからね。でも、それは杞憂に終わった。だって今目の前に広がるのは、見慣れた大海原じゃないもの。まだもう少し距離はあるけれど、しっかりと大陸の影が見えていて。



(やった! ようやく…海を渡った! ナハト国が…皆との距離が着実に近づいてる! あともう少しで、皆に会える!)



 いつの間にか船上デッキには、王子様や旅の間にすっかり打ち解けた騎士さん方や侍女さん達も出てきていた。今回の一団は、ほとんどの面々が海を渡るのは今回が初だそうだ。だからか皆私と同じように、遠く見えてきた大陸の影に感動しているようだった。



 それからしばらくして…停泊した船から降り立ったのは、かなり栄えた港町。この国はリーディア王国の友好国ということで、私達の一団を迎え入れてくれるため、わざわざ領主一行が出向いてきてくれていて。

 彼等との挨拶は王子様や大臣達に任せ、私は少し後ろから港町の様子を眺めていた。



(リーディア王国のヨハネスもかなり規模の大きい港町だったけど、ここも負けず劣らず…いや、むしろ大きいくらいかなぁ? リーディア王国からの船もあるけれど、他の国の船もたくさん停泊している。魔王討伐の旅で、皆といろいろ旅して回ったと思っていたけれど、こっちの大陸にもまだまだ行っていない場所がたくさんあるんだなぁ…)



 そんなことを考えながら少し感慨に耽っている間に、どうやら挨拶は終わったようだった。今日はこの後、領主一行の案内で領主館に向かうことになるらしい。そして何日か領主館に滞在して、歓迎の宴などに参加することになるようだ。また他にも、この国との主要取引の品である工芸品などの工場視察も行うのだとか。


 もちろん私の本音としては早くナハト国に向かいたい。だけれども、自分の力ではこんなに早くここまでたどり着けていなかったわけで。

 多少のトラブルはあったとはいえ、快適に早く海を渡ることが出来た。これは一人旅だと、無理だったものね。

 そして、外交も兼ねてナハト国に向かうのだから、王国一団が各地での外交の時間を持つのは当たり前のことで。それは最初から分かっていたことだから、仕方ない。私一人が勝手に抜け出してナハト国に向かうことが出来ないのも、一団として連れて来てもらった以上、仕方ないことだ。


 一刻も早く行かなければ、ナハト国や皆がどっかに逃げちゃうってわけじゃない。今は魔王の危機もないわけだし、ナハト国で問題が起きているって話も聞こえてきていない。だから、焦らなくても大丈夫。私がいても外交の役にはたたないけれど、ちゃんと一団の一員としてナハト国入りを果たそう!


 そう自分に言い聞かせ、逸る気持ちを抑えつつ、領主館に向かう馬車に乗り込むユーカなのだった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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