王宮でのお茶会当日。
王宮ご招待当日。面倒なことになったなぁという私の後ろ向きな気持ちとは正反対に、天気は絶好のお出かけ日和。こんな日はお洗濯や薬草のお世話をしたり、もしくはマーシャさんのお店に行ってみたり、お散歩したり…とにかく他のことを楽しみたいよ。もう行くって答えちゃってるから、今更だけど…。
用意しておいた服を着て、ミーナさんに髪を結い上げてもらう。ミーナさんだけでなく、マーシャさんやシーラも色々気にかけてくれていて。髪飾りなんかは、今日の服装にあうものを探して、知り合いなどから借りてくれていた。ありがたい。自分ですべてを揃えてたら、貯金が崩れていく一方だもの。
お店の前には迎えの馬車。王宮までは馬車で2時間ほどらしい。日帰りできる距離で本当に良かった。
馬車に乗り込み王宮へと向かう。馬車の中にはお迎えの使者の方と私の2人だけ。そこで今日の流れを聞いておく。
まず最初に国王陛下と妃殿下にお会いするそうだ。【授けられた証】を持つ者がリーディア王国を訪れることは今までなかったようで、是非とも会ってみたいと。
え? 正式な謁見じゃないって話だったよね? ん? 謁見用の部屋じゃなくて、執務室で話すだけだから、そう固くなるなって?
そんなの無理っ!
最初に聞いていたのは、王子様と王女様方とのお茶会だけだったのだ。それがなぜ当日になって、国王陛下と妃殿下にお会いすることになっちゃってるわけ?!
どうやら当初はまだ国王陛下方の時間がとれるかどうかハッキリしてなかったそうだ。だからとりあえず王子様方とのお茶会の話だけ伝えておこうとなったのだとか。あとから国王陛下方の時間の調整もついたのだけど、それはまぁ当日伝えれば良いとなったのだって。
こっちの身になって考えて欲しかったです…。
まぁ、馬車に乗ってしまったのだから引き返すわけにもいかない。今さら仮病も使えないし。ナハト国での経験を思い出して…あの時は私1人ではなかったから、状況が違うけど…。でも、王族の方々と会うという経験自体はあるわけだから、多少は役に立つはず!
そうして到着したのは白亜の王宮。ナハト国の王宮とは、やはり国が違うから造りも違う。それは、青空によく映える王宮だった。
使者の方に案内されて国王陛下方が待つ執務室へと向かう。緊張は高まるばかりだったけど、なんとか執務室の前へと到着。
結果から言うと、国王陛下も妃殿下もとても温和な方々で、最初の挨拶こそ緊張して噛みそうになったけれど、妃殿下の優しい笑顔に励まされ、次第に緊張も解れていった。
王族の方々へは勇者一行の一員であったことを話すと決めていたので、その話を中心に。ナハト国からリーディア王国へくることになった経緯などは、色々ツッコミどころが多かっただろうに、無理に問われることもなく、途中からはなんとも和やかな空気になったのだった。良かった〜。
そして、続いては場所を移して王子様方とのお茶会。お若い国王ご夫妻のお子様方は、王子様が12歳、王女様方は10歳と9歳の年子で。陛下と妃殿下、温和なお二人の雰囲気によく似ておられ、そしてとても可愛らしかった。癒される!!
そんなお茶会は最初から和やかで。これまでの旅の話を、キラキラと目を輝かせながら聞いてくる王子様と王女様方に、私のしゃべりも絶好調! なんかちょっと喋りすぎたかもだけど…。
まぁ、当初の緊張や気負いもなくなり、王宮へのご招待は私自身もとても楽しめたのだった。
ちなみに王女様方に今日は泊まっていってとかなりねだられたのだけど…最後の方の涙目上目遣いにはすごく負けそうになったのだけど…なんとか負けずにすんだ。
ジーンさん達からは、断りきれないこともあるだろうから、数日くらいは休んでも平気だとは言われていたけど、お店のことも気になるしね。
【授けられた証】を持つ者へ無理強いが出来ないのは王族方も同じとのこと。侍従長からの無理強いはダメだとの仲裁が入ったことで、ようやく帰ることができたのだ。
また来るという約束はさせられたけどね。月に2回は来てくれと…。送迎付きとのことだし…それくらいなら良いかと思ったのだ。着ていく服にはまた悩まされるんだろうけど…。何着かの着回しで許されるかな?




