神級魔法まだ使えるよね?
マーシャさんちからの引っ越しも済ませ、仕事にもジーンさんとミーナさんとの生活にも慣れてきた。そして今日は、お店の休日。ジーンさんとミーナさんは、朝からそれぞれの用事でお出かけ中で、私はお留守番。出かける時は戸締りをしていけばいいから、出かけられないわけではないんだけどね。
今週の私の当番は洗濯。洗濯は朝からバッチリ済ませたから、あとは夕方前に取り込むまでは、ゆっくりできる。そんな時間がある時に、家の中に1人…こんな時こそ試してみよう。そう、神級魔法を! 薬液にかけちゃうと、完成品が残ってしまうし、神級魔法を使えることを伏せている今は、神級薬液を売るわけにはいかない。そんなただの実験に、ミーナさんが作った薬液を無駄に使うわけにはいかない。やっぱ自分の身体に試すのが良いんだろうけど…。
(といっても、今はどこも怪我してないしなぁ…。わざと怪我するのも変な話だし…まぁ、魔法がきちんと行使されれば光り輝くんだから、かけてみるだけでいっかなぁ。あ、それとも…)
窓辺に置いてある鉢植えを見る。窓辺のスペースを有効活用しようと、この前買ってきた鉢に花を咲かせる薬草を分けてもらって植えてるものだ。
(これにかけてみようかな? 水魔法で生成した水でも成長に効果があるくらいだから、薬草と魔法との相性は良いみたいだし)
そう決めて、鉢植えに掌をかざして呪文を唱える。
【神の力によりて癒しを】
すると手のから銀色の光が。薬草が一瞬光り輝き、輝きが収まった後は…なんか一気に艶やかになったというか…もしかしたら薬草の効能も上がってるのかもしれない。そうだとしたら今度こっそり薬草園の薬草にかけてみてもいいけど…ミーナさんはすぐに変化に気づいちゃうだろうし…うん、やめておこう。
神級の治癒魔法の次は、結界魔法だ。結界魔法は突然神級を使えるようになったあら、初級から上級まで順に覚えていった治癒魔法と違って、神級魔法しか使えない。守るなら強力なものの方が良いに決まっているから、呪文も習わなかった。だから、今回結界魔法は一度も試していなかったのだ。これも発動したら、感覚で分かるものだから…と、呪文を唱えていく。
【神の力によりて守護を】
私の周りを中心に結界が張られた感じ。うん、結界魔法の方もちゃんと使えるようだ!
神級魔法が問題なく行使可能なことが分かった。あとは…これは伏せる必要はないのだけど、水属性の魔法を復習しておこうと思う。初級魔法しか使えないから、復習といってもあまりすることはないのだけど。
水を生み出す【生成】ではなく、初級の攻撃魔法。
【我が手より水球を】
すると、かざした掌の前に水球が。これを飛ばせば攻撃魔法になるわけだ。この水球を小さく小さく…そして、たくさん生み出すことが出来れば、雨みたいに降らせることができないかなと思うのだ。初級魔法ならそこまでは魔力を使わないし、それなりに魔力の保有量はある。治癒魔法の分は残しておかなければいけないけど、多少の雨を降らせるくらいは大丈夫なはずだ。休日になら練習し放題ということで、店の裏手に出て早速試してみる。
まずは水球を小さく小さく…本物の雨ほどは小さくならなくてもいいから…ここは想像力の問題だ。雨粒を思い浮かべながら集中して…。すると、だいぶ小さな水球を作り出すことに成功する。最初に小さめに作ってみた水球と比べたら、だいぶ本物の雨粒に近づいているように思う。
今度はこの小さな水球を一度にたくさん、だ。これは一粒の水球を生み出すよりも集中を要する。何度も失敗して生み出してる途中で消えてしまうこともあったけど、最後にはなんとか目の前の土地に雨を降らせるくらいには精度を上げることが出来たのだった。薬草園全体に降らせるのは…もうちょっと練習が必要だ。
集中していたので時間の感覚がずれていた。思っていたより時間をかけていたようだ。そろそろ洗濯物を取り入れなければ! 洗濯物を取り入れ、片付けているとミーナさんが帰宅し、続いてジーンさんも帰宅。ぐんと賑やかになった。さ、今日の夜ご飯はミーナさんの当番だから期待大! あ、ジーンさんの料理は、ミーナさんがいうほどには微妙ではなかった。だから、『ジーンさんを料理当番からは外そうかな計画』はなくなったのだった、私の中での勝手な計画だったのだけど。




