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就職面接です!

 パン屋さんの朝は早朝から始まる。目覚まし時計とかはない世界。時間を知らせるのは鐘の音。早朝から働き始める人が起き始めるのが1の鐘。普通に皆が起き始めるのは2の鐘。1の鐘がだいたい5時くらいで、鐘は2時間おきに鳴るから、2の鐘は7時くらいだ。


 この姿でやって来たのだから、寝て起きて見たら元の世界、というのは考えていなかった。だから心配していたのは、鐘の音できちんと起きられるかどうか。『もし起きれなくても、私が起こしてあげるから』とシーラが言ってくれてはいたけど、なんとか自分で起きたい。


 早朝。澄んだ綺麗な鐘の音で目覚める。車などの騒音もない…しんと静かだからこそ、よく響く。うん、きちんと起きられた!



(寝たのも前よりもずっと早いもの。まだ少し薄暗いけど…かなりよく寝たって感じ)



 窓を開け、朝の風を部屋の中に取り込む。そして、身支度を整えていると、シーラの声が。



「おはよう、ユーカ! 起きるの大丈夫だったみたいね!」


「おはよう、シーラ! ありがとう、ちゃんと起きれて安心したわ」



 支度を済ませて、2人で居間に降りる。リックさん、マーシャさんも揃って、手早く朝ご飯を済ませる。


 リックさんは仕込みをしておいたパン生地を成形し、次々と焼いていく。マーシャさんも、それを手伝っている。シーラは焼きあがったパンを並べる傍ら、カウンターに釣銭を用意したり。私はというと、普段はマーシャさんとシーラが交代でしているという、店頭の掃除中だ。店頭はいつも綺麗にしておかないとね!


 開店と同時に朝ご飯のパンを求めにやって来るお客さん達。ピークは朝と、お昼時、後は夕方みたい。お会計はできないけれど、パンを袋詰めしたりするのを手伝うことで、忙しさを実感。次から次へと…わぁ、本当に大人気なんだね、リックさんのパンは!


 お昼ご飯は皆で交代しながら食べ、午後からも補助的な作業を手伝っていく。マーシャさんは、私がちょうどマーシャさんに声をかけられた時間くらいが、外での買い物や用事を済ませる時間みたいで。その時に、私の仕事先も探してくれるみたい。いくつか心当たりはあるから声をかけてみて、絞り込んでから実際に私を連れて行ってくれるそう。何から何まで…。できるかぎり、お手伝い頑張ります!



 そうやって数日が経過。マーシャさんの仕事はすごく早くて。もう絞り込みが進んだってことで、今日はマーシャさんに連れられて、そのお店に行ってみることになっている。午前中からお昼までは、いつものように手伝い、落ち着いた頃を見計らって、お店をリックさんとシーラに任せて出かける。


 お店は海沿いの通りにあるんだって。マーシャさんちからも、そう遠くなくて。より港に近い場所にあるのは、やっぱりお客さんに船乗りさんが多いからなんだそう。


 そのお店では店主さんが中級魔法まで扱えるということで、娘さんが薬草を栽培・採取。薬液を作ってから、店主さんが魔法をかけていたらしい。上級薬液も需要が多いようで、上級魔法まで使える人を探してはいたようだけど、そこまで使える人は王宮や貴族に仕えたりすることが多いのだって。そこにマーシャさんから私の話を聞いて、とにかく会ってみたい! となったそう。


 いくら上級魔法まで使えるとはいっても、身分証もない私を雇ってくれるか心配だったけど、そこは“マーシャさんが信用している人間”だということで、問題なかったらしい。マーシャさんへの信頼度が高いっ!



 お店に入ると、店内には懐かしい薬液の香りが漂っていた。店主はジーンさんで、娘さんはミーナさん。マーシャさんが探してくれただけあって、2人とも優しそう。


 早速、魔法を実践してみてほしいと言われ、薬液を1瓶棚から降ろしてもらう。実践するのはもちろん上級魔法。



【我は請い願う。天上の神よ、癒しの力を我に与えん。癒しの光よ、天より我に降り注げ。我は行使する。マナ・ルート!】



 魔法はきちんと実行され、薬液は透明感のある黄色に変化した。バッチリ。薬液をジーンさんに差し出す。



「確かに上級薬液だ! すごい! 是非ともうちで働いてもらいたい!」


「ユーカさん、是非うちに来てちょうだい!」



 ジーンさんだけでなく、ミーナさんからもそんな言葉がかけられて…。マーシャさんを見ると、それだけで安心できるような笑顔で見守ってくれていて。



「よろしくお願いします!」



 私は、ジーンさんのお店で働くことになった。


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