お姫様達の恋の行方は?
今日は凱旋パレードが朝から行われた。皆に良く見えるようにと、馬車がオープンな造りの為、密かに結界を張っておくようにと言われ…念の為に馬車を覆うように結界を張ってから馬車に乗り込んだ。
今のところ、皆が懸念していたような事態は起こっていないけど、王宮滞在中は注意を怠ってはいない。
凱旋パレードは大歓声に迎えられ、王都を一周して回ったのだけど、ゆっくりペースなこともあって、数時間のパレードとなった。多少疲れたが、そんなにゆっくりはしていられない。夜の晩餐会に向けて、仕度を整えなければいけない。
そう!凱旋パレードと、晩餐会は衣装が違うのだ!ちなみに、こうなってくると当然なのかもだけど、明日の舞踏会にも別の衣装が用意されている。どれも繊細で綺麗な衣装なのに、一度しか着ないなんて…。
もったい無いから同じ衣装で良いとは、シンシアの教えもあるから流石に言わない。王様の立場というものも考えなければならないしね。
でも、どうしてもクローゼットに眠らせておくのはもったい無いから、手直しして王都滞在中の別の機会にでも着れないかなとは思ってしまうのだった。
晩餐会は王様をはじめとした王族方と、国内の有力者を集めて行われた。王族方にはお姫様達も含まれていて…『これぞお姫様!』という可憐な姿に、惚れ惚れするユーカだった。
姫様方はもちろんユーカの視線にも気付いていたが、好意的な視線であったし、今日は英雄ご一行と個人的に話す場は取れなかったこともあって、深く気にかけることはなかった。
それよりも姫様方はそれぞれ、勇者ディーンや、戦士ショーンに目を奪われていた。魔王討伐を終えた彼らは、旅立ち前よりも勇ましく、一段と輝いて見えたからだ。彼女達は皆、明日の舞踏会で彼らが褒賞を望む際に、『姫との結婚を望む!』と言ってくれないかと、期待を込めて見つめていたのだ。
ユーカが密かに定番だと思っていた展開は、お姫様達の方には起こっていたのだった。
晩餐会の翌日、夜からの舞踏会に備え、お昼まではゆっくりと過ごしたのだが…。願い事を決めていないユーカは、『さすがに何か決めなきゃ!』と頭をフル回転させていた。そして、ようやく導き出した願いは…。
『トーガ村に支援を』
ユーカにとって、トーガ村はこの世界の故郷のような存在だ。考えたくはないけれど、もしも元の世界に戻れないのなら、トーガ村で過ごしたい。きっと村長さんやトーマさんは笑顔で受け入れてくれるはずだ。最初の時のように。
トーガ村は、辺境の地ということで、整っていない設備も多い。むやみやたらに開発するということではなく、皆が暮らしやすいように支援の手を差し伸べてもらえたら。支援の内容は皆と話し合って決めればいいしね!
なんとか願い事を決めたユーカは、シンシアに促され、舞踏会の仕度へと取り掛かった。ドレスを着るというのは本当に一苦労だ…。
時間に余裕を持って仕度を終えたユーカは、もう少しはゆっくりできると、ソファに座って皆が迎えに来るのを待つことにした。そして、やはり華やかな衣装に身を包んだディーンさん、ショーンさん、ギルさんが部屋まで迎えに来てくれ、舞踏会の会場へと向かうのだった。舞踏会会場への控えの間では、姫様方が勇者一行の到着を今か今かと待っていた。今日は勇者一行の2人にエスコートしてもらうことになっているのだ。まだ誰が自分をエスコートしてくれるのかは、わからなかったけれど、『できれば…』と、それぞれが願いを込めて。
控えの間に着き、姫様方と合流した勇者一行。ここで誰が誰をエスコートするか決めるのだが、ディーンは当然のようにユーカをエスコートすると言い、それならとギルが第一王女を、ショーンが第二王女をエスコートすることになった。
(え?ここは、ディーンさんはお姫様をエスコートじゃない?勇者なんだし!)
と思うけれど、口に出せる雰囲気ではなかったので、諦める。ちなみに、姫様方は勇者のその様子を見て、自分達には脈はないとはっきりと理解した。第二王女はもとから戦士ショーンに惹かれていたので、良い組み合わせだったし、第一王女も改めて魔術師ギルを見てみると、勇者ディーンとはまた違った魅力があるかもと、顔を赤らめるのだった。
今後、姫様方の恋の行方がどうなるかはわからないが、『勇者と姫が結ばれる』という定番の展開はなくなったのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。次話は、25日の11時投稿予定です。よろしくお願いします。




