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私も英雄なんですか!?

 トーガ村を出発して、近場の街で馬車を用意してもらってからは、かなり楽な旅になった。御者さんだけで充分で、私達の旅に特に護衛は必要ないのだけど、魔王討伐を終えて凱旋する勇者一行に誰も付けないわけにはいかないと、騎士団の小隊が付くことになって…快適だけど、少し仰々しい旅になってしまったのだった。


 それでなくても、勇者一行の旅はどうしても人目を引いてしまう。しかも、王都を出てトーガ村に着くまでは3人だったはずの勇者一行が、いつの間にか4人に増えているのだ。ますます注目を集めてしまうのも、仕方ないことなのかもしれなかった。ほとんどの視線はディーンさん達に集まっているけど、『あいつは誰だ?!』的な視線を…特にディーンさん達に夢中であろう、女性陣から浴びることになるわけで…。



(私はライバルにはなりませんから…そんな視線は勘弁してっ!)



 魔王討伐へ向かう旅も、道中の町でも注目を浴びたけど、それ以外は4人だけの気軽な旅だった。ユーカの王都への旅は身体的には楽だけど、精神的にはぐったりするものになっていた。



 私の疲れを察してか、途中で立ち寄る町での宴は断ってくれたギルさん。



「私なら大丈夫だよ。今までも宴だけは出てたんだし」



「王都では早く詳細が聞きたいと、我々の到着を急かしているそうだ。町に立ち寄る度に宴に出ていては、到着がそれだけ遅くなるからな。それに、この仰々しい旅自体が凱旋パレードのようなものだから、宴は断って大丈夫だ。気にせず、ゆっくり休んでいろ」



 やっぱり私のことを気遣ってくれているんだろうけど、今はとにかくありがたい。今回は遠慮せずに、優しさに甘えることにしよう。それに、王都に着いて報告をしたら、大々的なパレードが行われ、晩餐会や舞踏会も開かれるらしい。王都に着いてからの事に体力を残しとかないとね。


 晩餐会に舞踏会への参加。それを聞いた時は、場違いだと思った。着ていくものもないし、そういう場面でのマナーも、もちろんわからない。


『ディーンさん達が主役であって、私は脇役なんだから無理に参加しなくても…』と言ってみたけれど、『ユーカが脇役なんてことは絶対にない。ユーカが出ないなら、俺も出ない』と、ディーンさんが言い出してしまって…勇者が欠席はさすがにまずいと、私も観念して参加することに…。


 でも、最初の問題に舞い戻って、着ていくものとマナーは結局どうすれば…と思っていたのだけど、着るものは王宮で用意するし、マナーは残りの旅の間と王宮での滞在中に教え込むからと、私に教育係が付くことになったと知らされるのだった。


 ちなみに教育係さんは、その話が出た時に滞在していた街を統治する子爵令嬢のシンシアさんが務めてくれることになった。貴族のご令嬢って聞いていたから、当然のように敬語で話しかたのだけど…。



「ユーカ様は、国を、いえ世界をお救いになった勇者様や魔術師様、戦士様と同じく、我が国の英雄なのです!わたくしなどに敬語を使ってはいけませんわ」



「いえ、私は決して英雄なんかでは…。私に様付けは必要ないです!」



「いいえ、ユーカ様は英雄でいらっしゃいます。王都まであまり時間はありませんが、どうかそのことだけはご自覚下さいませ」



 粘ってみたけど、シンシアさんの物腰も笑顔もとても柔らかいというのに…まったく引いてくれなかった。どうも引けないラインがあるようだ…。とりあえず私は王都までの旅の間で、付け焼き刃ではあるけれど、シンシアにマナーを学ぶことになったのだ。ちなみに…『シンシアさん』と、さん付けで呼ぶのも…笑顔で禁止されました。


 マナーは主に王族への礼のとり方や、晩餐会での食事の取り方に付いて教わった。勇者一行は国の英雄とされるから、王族には礼をとるが、貴族へは必要ないらしい。会話も普段の敬語か、少し丁寧にしたくらいで大丈夫だそうだ。それを聞いて、少し安心した。初めての王宮で、緊張でガチガチになって多少変な動きをしてしまっても…『この無礼者っ!』とはならないらしいから。


 晩餐会での食事の取り方も、基本を覚えてしまえば、元の世界の洋食のフルコースのマナーに近い感じだったので、問題なさそうだ。


 舞踏会で踊れと言われたらお手上げだっただろうが…踊りたかったら踊ればいいという感じで、無理に踊る必要はないらしい。それも、ユーカにとっては重要な確認ポイントだった。



 一通りのことを、王都までの旅の間で学び終わることができ、なんとか一安心できたユーカなのだった。

読んでいただき、ありがとうございました。次話は、18日の11時投稿予定です。よろしくお願いします。

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