今夜の夢は剣と魔法の異世界へ!
今日も一日の仕事を終えて、図書館に向かう。昨日読み終わった時代小説を返却し、今日借りる本を選び始める。
書架に並ぶたくさんの小説から目に止まったのは、剣と魔法の異世界ファンタジー小説。その本を手にとってパラリとめくって見る。
(うん。なんか面白そう!文体も好きな感じだし!)
そう思い、貸し出し手続きをしてもらい帰宅する。今日もまずは夜ご飯だ。片付けを済ませ、今日の読書のお供をジャスミン茶に決める。お茶を淹れて、読書スタートだ。
近年、魔物が活発化し魔王復活が囁かれる中、ある大国で勇者の召喚が行われる。勇者の召喚は無事成功し、勇者も魔物の討伐を引き受ける。そんな物語だった。
そして、いざ勇者が旅立つというところで話は終わった。この本は1巻目で、スマホで調べてみたけれど、続きはまだ出ていないらしい。
(続きいつ出るのかなぁ…。気になるなぁ…)
本の続きを気にしながら、お風呂に入る。ゆっくり温もり、あとは寝るだけだ。
(今日の睡眠のお供はどの本にしようかな?一昨日読み終わった本でもいいけど…今日のこの本の続きも気になるなぁ。夢を見ても続きはわからないけど、登場人物になってみたら、少しは続きのヒントがわかるかも…?)
ということで枕元に置くのは、今日読み終わった本に決めた。
・・・夢の世界。周りに障害物がまるで無い草原のど真ん中に私は立っている。今夜の夢で私がなった登場人物は…【優香】…?!
(あれ…?なんで私そのもの?!ここって夢の世界だよね?!こんな草原うちの近くにはないから、夢の世界には間違いないと思うけど…。でも、なんで本の登場人物になっていないの?しかも、ここはどこっ?!)
いつもは登場人物の知識があるから、夢の世界での生活に困ることはない。でも、今日は何故か自分自身だから、この世界の知識が不足していて、ここがどこなのかさっぱりわからない。ストーリーは一通り覚えているけど…こんな草原は出てこなかったのだ。
(…どうしよう…。周りになにも無いから、どこに行けばいいのかもわからないし…)
しばらく考え込んでいたが、ずっとここに居ても仕方ない。夜になるまでここに立ったままでいて、夢が覚めてしまうのももったいないし!と、とにかく方向を決め歩き始めたのだった。
歩き始めて数十分。ようやく街道のようなものが遠目に見えてきた。街道を歩いていれば、この世界の人と会うこともあるだろう。草原では誰にも会わなかったから、まだ情報はゼロだ。
街道に合流し、街道を歩み始める。看板も何もないからどっちに行けばいいかはわからないけど、街道なんだからどっちに行っても、どこかには繋がっているはず!できるなら、夜までに町とかに着きたいところだけど。
街道沿いを数時間は歩いただろうか。今のところ何もない。遠目にも何も見えない。でも、今更引き返すわけには行かないから、ひたすら歩いて行く。すると、かなり先だが何かが見えてきた。少しテンションと歩むペースを上げて近づくと、そこは集落ではなかったが水場や簡易な小屋があり、オアシスのような感じだった。
歩き続けて疲れた身体を休めるべく、小屋を覗いて見る。誰も居ないようだけど、生活感はまるでなく、ここを訪れた時の休憩スペースのように感じた。
湖で水を掬う。透き通った綺麗な水だ。きっと飲んでも大丈夫だろう。少し掬って口をつける。
(冷たくて美味しい!)
水を飲んで、小屋にお邪魔させてもらう。中には簡易なテーブルや椅子があって、椅子に座って休憩をすることにした。
少し休むとだいぶ疲れは取れてきた。また小屋の外に出て、街道の先を見渡す。でも、小屋に入る前と変化があるわけもなく、街道の先にはひたすら街道が延びているだけだった。
何時間歩いたのか時計がないからわからないけど、もうそろそろ日が暮れそうだ。夜までにどこかの町に着くのは無理なようだ。
(夢の中とはいえ、街道のど真ん中で眠りにつくのはなぁ…。この小屋で眠らせてもらおうかな。結局、今夜の夢では歩いただけだったな…)
でも、時にはこんなこともあるのだろう。澄んだ空気の中をこれだけ歩くなんてこと、現実世界では中々できないのだし。これも良い経験ができたということだろう。
夕方のうちに小屋の中にあったコップに水をついでおく。ベッドはないけど、椅子は布張りで結構大きいから、横にはなれないけど椅子で眠れそうだ。
・・・朝になり目が覚める。
(んー・・・椅子で寝たから身体がちょっと痛いかも。ん?椅子で…?)
夢の中では椅子で寝たけど、現実世界ではベッドでちゃんと寝たはずなのに…。寝起きのぼんやりとした頭で考えながら、周囲を見渡す。
私が今座っているのは椅子だ。目の前には簡易なテーブル。そして、ここは簡易な小屋の中。
(…あ、あれ?!夢の中で寝て起きたのに、夢が覚めてない?!)