旅の合間に久々に薬草採取でもしてみよう!
1ヶ月間、魔物の討伐を進めながらの旅が続き、明日には補給地の町に到着予定だ。魔王について大きな足跡は見つからなかったが、魔王らしき魔力の残渣を感じ取ることはできた。やはり、魔物が多く出没し始めた地域には、魔王も関与しているのだろう。
こういった魔力の残渣を辿っていけば、いつか魔王の根城に辿り着くはずだ。根城に近いところでは、魔力の残渣も強く残っているだろうから。
(少しずつだけど、魔王に近付いているはずだ!)
翌日、昼頃には補給地の町に到着した。今回は1ヶ月と長めの旅をしてきたということで、2日滞在させてもらうことになっている。2日滞在するということで、今日の間に補給は済ませて、明日の午前中は治癒を必要としている人達を集めて、治癒を行う予定だ。薬液に魔法をかけるだけでなく、時間があるなら直接魔法をかけた方が治りも早いからね。空いた時間には、しっかり休養をとる。そして、明後日の朝には出発だ。
宿の部屋に集まって予定を確認した後は、補給したり休養したりと、それぞれの時間を過ごすことになった。
私はまずは補給だ!薬液を買いに行ったお店で、この辺りで良質な薬草が採取できる場所があることを小耳に挟んだ私は、久々に自分で薬液を作ってみたくなった。
(トーガ村を出てから、自分では薬液を作ってないしね。たまには、作るところからしといた方が良いよね。時間もまだ余裕があることだし)
薬草が採取できる場所は町の近くみたいだけど、町の外に出ることになる。勝手に行ってはいけないだろうと、一旦宿屋に戻ってギルさんに報告することにする。
なんでギルさんかって?だってギルさんは、しっかり者の頼れるリーダーだもの!
宿屋にはギルさんとディーンさんが残っていた。早速、薬草採取に行きたいことを話すと、許可は下りた。ただし、ディーンさんの護衛付き…。
(出た!また過保護!)
町の外に出るといっても、採取場所は町からそう離れてはいない。この町の薬師さんが、自分もついでに採取に行くからと、同行してくれる約束だし、決して1人で行くわけではない。もちろん、魔物の出没地域でもないしね。
だから、大丈夫だと言ったのだけど…薬師さんとの待ち合わせ場所に向かう私の横には…ディーンさんが。結局、また私の負けだ…!
薬師さんと落ち合い、ディーンさんのことを紹介する。もちろん、勇者であるディーンさんのことは、すでに町中に知られているんだけど、直接お話したわけではないしね。
そして薬師さんの先導で、採取場所へと向かい始めた。そこは、小さな林の中の泉の畔。どこでも、薬草って泉のそばに生えるのものなのかな?
薬草に触れてみる。確かに良質と言っていただけはある。トーガ村の近くの森で採れる薬草も、あの辺りではかなり良質なものだったのだけど、それ以上かもしれない。
必要な量を、決して採り過ぎないように、再び自生できるように、注意しながら採取していく。ここはディーンさんには、見てもらってるだけだ。取り過ぎて枯らしてしまったらいけないものね。
(ディーンさん、退屈じゃないのかなぁ。思った通り平和なものだし…護衛は要らなかったのにな)
やはり、ディーンの心を全くわかっていないユーカである。ユーカは護衛は要らないと言う時に、『薬師さんがいるから大丈夫!男手は足りてるよ!』と言ってしまっているのだ。そんなことを聞いておいて、自分の知らない男と二人きりで行かせるはずがないのだが、その男心を全くわかっていない。
ちなみにディーンから滲み出る雰囲気によって、薬師さんの方はディーンの気持ちに気づいているようで、不用意にユーカには近づき過ぎないように、配慮してくれているのだが…。
薬草の採取を終え、無事に宿屋に戻ってきたユーカは、早速薬液作りを開始した。夕方までに必要な量は完成し、他に必要な細かい買い物も終わらせた。
その日の夜に開かれた歓迎の宴で、夜ご飯を美味しくいただき、明日に備えて1ヶ月ぶりの柔らかなベッドで眠りにつくのだった。