初めての魔物との遭遇です!
昨日の夜、村の皆が開いてくれた壮行会。このトーガ村で過ごしたのは数カ月のことだけど、村長さんやトーマさんをはじめ、本当に良くしてもらった。
これから私は魔王討伐の旅に同行する。きっと魔王を討伐できれば、現実の世界に帰れるのではないだろうか。確信はないけれど、そう思っている。そうなると、トーガ村にはもう戻ってくることはないのかもしれない。最後のお別れを済ますつもりで、最後の夜を過ごしたのだった。
翌朝は早朝の出発だった。旅立つ先は隣国。トーガ村はこの国の辺境にあるから、トーガ村を出て私が最初に降り立った草原の方向に街道を向かえば、隣国に辿り着くそうだ。隣国には歩いて1週間程、隣国との国境には深淵の森と呼ばれる深い森があり、森を抜けるのに更に1週間程。そうすると、ようやく隣国の町に入ることができるらしい。
私が最初に歩く方向の選択を間違っていたら、2週間も歩かなければ、人の住む町には辿り着かなかったということだ。しかも、国境の深淵の森には魔物が出没するそうだから…辿り着くことさえ出来なかったに違いない。本当にあの時、トーガ村の方向を選んで良かった。
勇者一行は国を跨いでの魔物討伐、魔王探索が認められている。そして、勇者一行が滞在する国からは、支援が受けられるそうだ。魔王は世界の敵。国と国の間では小競り合いもあるそうだが、魔王討伐に関しては各国が協力を惜しまないということだ。
村の皆の見送りを受けて旅立った私達は、順調に旅を続け、深淵の森までやって来た。ここからは魔物が出没するということで、前衛にディーンさん、私の隣にギルさん、後衛にショーンさんという陣形が取られた。私を護りつつ、出てきた魔物は討伐するそうだ。
ディーンさんは剣と光魔法で、前方からの魔物を討伐。ショーンさんは剣と地魔法で強化した拳で、後方からの魔物を討伐。ギルさんは全体を見ながら、火・水・風属性の神級攻撃魔法で、魔物を討伐するそうだ。私の役目は常に結界を張っておくこと、負傷することがあれば治癒をすること、この2つだ。
それにしても…ディーンさんの光魔法、ショーンさんの地魔法、ギルさんの火・水・風魔法、私の治癒と結界魔法。魔法に関していえば、この4人が揃うと穴はなさそうだ。さすが神様が直々に選んだメンバーだな。
私の場合は実戦でどれだけ冷静に使えるかが問題だけど…そこは場数を踏んで慣れていくしかないだろう。
深淵の森を進んでいく。1時間程歩いただろうか。最初の魔物が前方から現れ、襲いかかってきた。野犬を大きくして、鋭い牙を生やし、凶暴にしたような魔物だ。早速、ディーンさんが剣を振るう。比較的弱い魔物だったようで、あっという間にディーンさんが切り伏せてしまった。
魔物は討伐されると、霧となって消える。討伐された姿は見たくはないからいいのだけど、一体どうなっているんだろう。
日が暮れるまでに少しでも距離を進めようということで、日中はあまり休憩を取らずに進んだ。魔物も出てきたが、群れで襲ってくることはなく、討伐も順調だった。
夜になると魔物も活性化し、群れで襲ってくることがあるらしい。夜の間は動かずに、強固な結界を張って、魔物をやり過ごすのが定石だそうだ。歩きながらだと、どうしても結界の力が緩んでしまう。じっとしていれば集中もできるから、強固な結界を張ることができるんだけどね。
私が充分な魔力を注いで朝まで持つように結界を張れば、それで大丈夫だろうということだった。もちろん夜の間は交代で見張りをたてるから、私が当番の時は結界に綻びがないかチェックできる。私が寝ている時は、ギルさんがチェックしてくれるらしい。ギルさんも上級までの結界魔法が張れるから、大丈夫なんだって。ギルさんはすごいなぁ。地魔法も中級までは使えるみたいだし、すごい魔法使いだよね。
野営の準備はディーンさん達に任せて、私は集中して朝まで持つように結界を張る。結界を張り終えた後は、夜ご飯作りだ。野営だし簡単なものばかりだけど、ここは私も参加する。皆に任せていると、ただ焼いただけの物とかが普通に出てくるからね。下味は必要、たまにはスープだって飲みたい。というわけで、休んでおいていいと言われても、料理には参加するのだ!
旅立ってまだ1週間だけど、だいぶ皆のことがわかってきたし、打ち解けてもきた気がする。これから魔王を探し出し、討伐を終えるまで、このメンバーでの旅が続くのだ。
(良好な人間関係を築かないとね!)