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人には得手不得手があります。

 まずは旅の仕度からだ。といっても、野営に必要な物などは全て揃っているから、自分の身の回りの荷物だけで良いとギルさんから聞いている。となると、そこまで荷物はない。そんなにたくさん服を持っているわけでもないからね。


 服などを鞄に詰め、歩きやすい丈夫な靴と、風や砂除けにマントがいるだろうということで、それらを買い足したら、旅仕度は終了だ。



 さて、次は神級魔法の練習だ。神級の治癒魔法を薬液にかけてみることにする。神様に授けられた証を認識することで、いつの間にか覚えてしまっていた魔法。詠唱もだけど、その魔法のもたらす効果も、知識として頭に入っていた。


 神級の治癒魔法は、上級治癒魔法では治せなかった身体の欠損も、欠損してすぐに治癒を行えば治すことができる。魔力の枯渇も治すことができるようだ。万能のようにも思えるけれど、神級の治癒魔法は自分にはかけることができない。神級の治癒魔法をかけた薬液なら、多少は効果が下がるものの、自分にも効くみたいだけどね。ということは、薬液もいくつか常備しておかないと。練習を終えたら、早速荷物に加えよう。


 さて、肝心の詠唱はというと。【神の力によりて癒しを】だ。呪文は短く、たったのこれだけだ。



 短い詠唱で済むのは、本当に助かる。今までは薬液にかけるくらいだったから、いくら長くても大丈夫だった。でも、実戦では薬液なんて悠長に配ってられないだろうし、上級の長い詠唱を敵の妨害なく、集中して唱えきれるとも限らないだろうからね。


 さて、実践だ。薬液に手をかざし、詠唱を開始する。



【神の力によりて癒しを】



 薬液は光り輝き、その光を丸ごと閉じ込めたように銀色の輝きを持つ薬液が完成した。



(綺麗だけど…飲み物って感じではないなぁ…。あんまり飲みたくないなぁ…)



 そんなことを思ってしまったが、気を取り直して結界魔法の練習に移る。神級の結界魔法も、詠唱や効果についてが、ちゃんと頭に入っている。どうやら、術者からの半径を狭めれば狭めるほど、その効果は上がるようだ。物理攻撃も魔法による攻撃も防いでくれるみたい。もちろん結界の力が、攻撃の力よりも勝っている分にはだけれど。


 ちなみに神級の結界魔法は覚えたけれど、初級から上級の結界魔法についてはわからないままだ。上級までの人間が考え出した魔法と、神級の魔法。本当に別物の魔法なんだと思うのだった。


 結界魔法の詠唱を試してみる。どれくらいの範囲に結界を張るかを思い浮かべて、詠唱を開始する。



【神の力によりて守護を】



 思い浮かべた範囲を、キラキラした光の粒子が囲っているように見える。今は外から攻撃してもらう相手がいないから、実際に攻撃を受けた時の様子はわからないけれど、今はここまでにしておこう。流石に誰かに攻撃してくださいとは…言いにくいしね。



 自主練習を終えて、まずは一旦部屋に戻ることにする。トーマさんに言って薬液を幾つか分けてもらい、荷物に加えた。これで、今度こそ旅の仕度は終わりかな。



 まだ日暮れまでには時間がある。明日はトーガ村での最後の日になるから、できるならゆっくり過ごしたい。夜には村の皆が壮行会を開いてくれるみたいだしね。


 ギルさんの時間があればだけど、今日のうちに水魔法を教えてもらいたい。そう思って、一行が滞在中の村長さんの家に向かった。



 村長さんの家に声をかけながら入ると、最初に出会ったのは勇者のディーンさん。



「ユーカか。どうした?」



「こんにちは、ディーンさん。ちょっとギルさんに用事があったんだけど、ギルさんはいる?」



「ギルなら、部屋にいるはずだ。呼んでこよう」



 勇者様に呼んで来てもらうなんて申し訳なかったけど、止める間もなくギルさんを呼びに行ってしまったから仕方ない。ディーンさんには、勇者だからと言って『様』付けはいらないとか、もっと気安くしろとかいろいろ言われたしね。だから、敬語はなし。『さん』付けはやめないけどね。



 そんなことを考えているうちに、ディーンさんがギルさんと一緒に戻ってきた。



「わたしに用事があると聞いたが。用事というのは?」



「こんにちは、ギルさん。前に魔法の適性を見てもらった時に、治癒の他に水魔法の適性も少しあると言われたの。でも、習う機会が今までなくて。ギルさんに時間があったら、教えて貰えないかなと思ったんだけど、いいかな?」



「容易いことだ。早速、教えよう」



 快く引き受けてくれたギルさんと一緒に、村長さんの家の中庭に向かう。なせがディーンさんも一緒だ。暇なのかな?



 練習を開始してわかったこと。水魔法の適性は確かにあった。あったけれど、本当に少しだった。結局、使えることができたのは、初級の攻撃も魔法と水を生み出すことくらいだった。水を生み出せるのは、生活面では助かると思うけどね。



 ちなみに水の攻撃魔法は、水球を作り出して敵に放つというもの。初級なだけあって威力はさほどなく、魔物相手には意味がないだろうということだった。呪文は…割愛。詠唱する機会もないだろう…。


 水を生み出す呪文はとっても単純。生み出したい水の量を思い浮かべて、【生成】と唱えるだけ。忘れることもなさそうだ。



 水魔法の適性が少なすぎて、少し凹んでいたのだけど、ギルさんやディーンさん、途中から加わったショーンさんにも慰められた。



『攻撃面では自分達がいるから大丈夫。サポートを頼む!』と。これは慰めなのかな…?

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