神級魔法を習得したようです!
勇者様一行と村長さんに連れられて、村の小さな神殿に向かう。神殿は村の1番奥にある。神殿が1番奥から村全体を包み込むように護るのだとか。神殿に着くと祭司様に出迎えられ、話もそこそこに早速祭壇の前に立つことになった。
私に授けられた証があるかどうかの判定なので、祭壇の前に立つのは私だけ。この世界の祈り方はわからないけれど、手を合わせ祭壇を見つめる。
すると、私の周りが突然光り始める。はじめは淡かった光はどんどん輝きを増し、あっという間に神殿中を照らす光となったのだった。
「やはり貴方で間違いなかったな。その輝きこそが、授けられた証なのだから。選ばれた以上、討伐の旅に参加してもらうことになる。旅立つ準備もあるだろうから、我々はあと2日程この村に滞在しよう」
…旅立つのは決定?村長さんも、トーマさんも選ばれたのなら仕方ないと思っている様子だ。まだ選ばれた当事者が呆然としているというのに、魔術師さんと村長さん、トーマさんは、旅に必要な物などを話し始めてしまった。この信仰深い世界では、神々が決められたことへの拒否権などないのだろう…。
そんなことをぼんやりと思っていると、目の前に人影が…。見上げるとそこには…勇者様?!
「俺はディーンだ。ユーカと言ったか。これから、よろしく頼む」
そこに戦士さんもやって来て、自分はショーンだと告げる。さらに、魔術師さんもこっちに戻ってきて、自分はギルだと名前を告げられる。
(自己紹介タイム…?)
「よ、よろしくお願いします。お役に立てるかどうかはわかりませんが…むしろ足手まといになってしまったら、すみません…」
「ユーカは治癒術師なのだから、治癒に専念してくれればいい。戦闘は俺たちに任せろ。ユーカには怪我ひとつさせない」
そう言ってくれるのは、勇者様。
「あ、ありがとうございます。上級治癒魔法は結構魔力を消費するので、かけられる限界はありますけど、頑張ります」
すると、ギルさんから驚きの言葉が告げられる。
「ユーカは神々に選ばれたのだ。神々に選ばれ、それを認識した時点で、ユーカには神々の加護が与えられた。すでに神級の治癒魔法と、神級の結界魔法が使えるようになっているはずだ。使いたいと願えば、呪文が浮かんでくるだろう。わたしもそうだったからな。ちなみにわたしは火、水、風の神級魔法を扱える。神級魔法は上級魔法よりも効果は格段に上がるが、魔力の消費は少なくて済む。上級魔法を何度も行使できる魔力があるなら、問題はない」
(習ってもないのに使える?そんな馬鹿な?!)
そう思いながらも、ものは試しに念じてみる。すると、まるではじめから知っていたように、あっさりと使い方が浮かんでくる。どうやら頭の中に神級魔法の使い方が、刻み込まれているようだった。
初級・中級・上級と詠唱はどんどん長くなった。神級となったらどれだけ?!と思ったのだけど、なぜか神級の詠唱はとても短い。気になってギルさんに質問してみる。
「初級魔法から上級魔法までは、我々人間が考え出した魔法。神級魔法はその名の通り、神々が我々に授けられた魔法だ。根本から違うものだから、上級魔法より詠唱が短かくなるといっても、不思議ではないとわたしは思っている」
「そうなんですね。神級魔法は神様から授けられた人でないと、使えないんですか?」
「そうだ。いくら魔力を保有していようと、神から授けられなければ、神級魔法は使えない。我々人間の力で習得できるのは、上級魔法までだ」
(なんかすごい魔法を習得してしまったんだな。しかも、治癒魔法だけじゃなくて、今まで、使ったこともない結界魔法まで…。旅の準備もだけど、旅立つ前に何回かは練習しておいた方がいいよね。もしも可能なら、水魔法もギルさんに習えるといいんだけど…)
旅立つことは決定だ。この物語が完結するのを、少しでも手助けしながら見届けよう。帰りたいと願うだけじゃなく、自分からも動き出さなければ。そう思うのだった。