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BLOOD AND LIE 〜ブラッド アンド ライ〜  作者: 桃内香里
一緒にいたいんです
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二人の日常

孤児院『天使の卵』


「だぁーかぁーらぁ!院長先生!昔から言ってるけど、あたしは奏夜と一緒がいいの!」


そこでは一人の少女が【奏夜ーそうやー】と呼ばれた少年と共にこの孤児院の院長に訴えかけていた。


この孤児院『天使の卵』通称『エンジェル』は身寄りのない子供や ここら辺には少ないが虐待を受けている子供を引き取り育てている施設だった。


だが、国からの寄付金がらあるものの少額で貧しいエンジェルは『中学生までしかいれない』という制度があった。


そのため、幼いうちに子供の引き取り先を見つけ、家族を与えていた。

なので実質は大きくても小学生までだった。


しかし、先ほどの少年少女は その制度を破っていた。


彼女達は高校生になって、一ヶ月という月日が過ぎている。


孤児院側にとっては大変迷惑な問題児だったのだ。


というのも、彼女達自身が引き取り先を断ってきたためであった。


彼女達二人には、引き取りたいという人が しばしばいる。

だが その全てを断っているのだ。

その理由は極めて単純であった。


『仲が良すぎる』のだ。


少女、【明乃ーさやのー】と奏夜は、同じ年、同じ月、同じ日にエンジェルの前に捨てられていた子供だった。


おまけに同い年のため、物心が付く前から共に成長してきた本当の兄弟…いや、姉弟(?)のような存在だったのだ。


そして今、明乃はまた断っていた。


そんな明乃に院長は困った顔で対応する。


「あのね、明乃ちゃん。私達も昔から言ってるけど、それは難しいのよ。ただでさえ引き取ってくれる人が減ってるんだから。

高校生にもなると、引き取ってくれる人が一人いるだけでもありがたいのよ。」


そんな院長に対し明乃の一歩後ろにいた奏夜が前へ出る。そして焦ったような表情で


「そこを何とかなりませんか!?

そっ、そのっ…ボクも、さや…のと、一緒にいたいんです。」


と、後半 声が小さくなり、申し訳なさからか俯きながらも言う。


「奏夜くんまで…。」


「ははっ!よく言ったぞ!奏夜!」


「うん。明乃もね!」


「じゃー こんな退屈な話やめて向こうで遊ぼ!実はこの前 書いてた小説が完成したから見て欲しいんだ!」


「えっ!?本当!?うわぁ!絶対読むよ!それでボク、最高の主人公を演じるよ!きっと ここの小さい子達も大喜びだね!」


そんな会話を繰り広げながら明乃と奏夜は遊びに行ってしまった。


院長は溜息しかでないのだった。


ーーーーーーーーーーー


「へぇ〜!じゃあ今回の主人公は勝気な少年と その少年が、恋をしてしまった少女とのラブストーリーなんだね!」


「そ!どう?できる?奏夜」


「うん!もちろん!」


奏夜は明乃が書いた小説を見ながら勝気な表情を見せた。


明乃と奏夜は綺麗な顔をしていた。

そんな二人の夢は小説家になった明乃が書いた作品をドラマや映画になった時、俳優になった奏夜が演じる事であった。


そのため、2二人の趣味は明乃は小説を書き奏夜がそれを演じる事なのだ。


明乃は三つ編みにした髪を輪にしており整った可愛い顔によく合う。

その上、長めの丈のシャツにショートパンツという組み合わせでシャツにショートパンツが隠れ、普通の男なら顔を赤らめてしまうであろう危ない格好をしていた。


そんな明乃の書く小説は この前まで中学生をしていたとは思えないほどの出来であり、それを奏夜に演じてもらう事が明乃にとって一番幸せな時だった。


そして奏夜は後ろだけ長い髪の毛を三つ編みにしており、並の…いや、普通の可愛い女子よりも数段可愛い綺麗な顔をしていた。

おまけに まだ声変わりしていないのか声も高く、背は明乃とほとんど変わらない。


基本的にラフな普通の格好をしており、男とのの服装でなければ本当に女子に間違えてしまいそうだ。

街を歩けば必ず女子は奏夜を見る。


そして奏夜にはもう一つ、素晴らしい才能があったのだ。


それが演劇だった。


幼い頃にドラマで主演をしていた女優の演技に惚れて以来その女優に憧れを抱き、演技の勉強を独学で始めたのだ。


その上、そのドラマは明乃にも強い影響を与える事となった。


ドラマの内容に惚れた明乃はその原作となった小説を読み、その作家に憧れを抱いた。

そうして今の二人があるのだ。


「そういえばね明乃!藍城優さんが またドラマで主演を演じる事になったんだって!」


「あぁ!知ってるよ〜!そのドラマ 下総先生の小説が原作だもん!」


「おもってたんだけどさ、下総先生の作品の主人公って、藍城優さんのイメージに合わせて作ってあるよね。藍城優さんの演技の実力を抜きにしても。」


「奏夜もそう思う?実際、下総先生の作品がドラマや映画になるとほとんど藍城さんが主演だしね。

まっ!私達に共通の話題が出来るわけだしいいけどね。」


そんなたわいない会話をしながら いつもと変わらない時を過ごす。


だが二人はまだ知らなかった。


この孤児院は昔 明乃と奏夜 以上に、それも『規格外』と言えるほどの問題児がいたことを。


しかも その かつての問題児が仕事先の海外から帰国していたことを…

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