プロローグ 兄弟達の雑談
ーーー『全ての家族に血の繋がりがあるわけじゃない』
とある家庭 兄弟達の雑談
「ねぇねぇ!聞いた 空?香奈さんがまたあの孤児院から子供引き取る気なんだってさ!」
「…んだよ…大地、その話 本当か!?香奈の奴 今度はどんな奴を?」
「コラ。空ったら…。いつも言ってるけど、身寄りが無くてあの孤児院にいた僕達を引き取ってくれたのは他でもない香奈さんなんだよ?義理といっても一応 母親なんだし、せめて『さん』くらいつけようよ。」
「うるさいな。質問に答えろよ。」
「空はその男勝りな口調も直した方がいいね。みどり を見習いなよ〜。」
「その みどり はさっきから一言も喋ってねーじゃねぇか。つーか みどり は男だろ。」
「えっ?あぁ…!ごめんごめん。大地の言葉にビックリしすぎて…。あと、空も言ってたけど、俺 男だから女の子に見習わせるのは あまり 嬉しくないよ…。」
「あぁ、もう!空も みどり も冷たいんだから!」
「あははっ!もう一つ、俺が一言も喋ってなかった理由があるんだ。それはね、空と大地があまりにも仲が良さそうだったからね!」
「はぁ!?私と大地が?っていうか、今のどこが?」
「あのさ、空。そんなに否定することないじゃん…。僕 落ち込むよ。」
「ははっ!やっぱり!大地と空は仲が良い。なんていうか…、一年半くらい前に香奈さんに引き取られて二人と兄弟になったばかりの俺には入り込めない何かがあるよ。流石は同じ孤児院出身の幼馴染ってとこかな?」
「あぁ!そうだそうだ!僕 伝えに来たのに!忘れてた!実はね、その僕と空が昔いた孤児院にね、15歳の高校生の女の子と男の子がいるらしいんだよ。」
「何でだ?おかしいだろ。あの孤児院は中学生までしかいれないはずだぞ。」
「うん。そうなんだよ。何かその子達『二人一緒じゃなきゃ嫌だ。』とか言って今まで ずっと引き取り先を、無理矢理 断ってきたらしいんだ。」
「へぇ…。なんだか変わった子達だね。」
「つーか自己中心的ってやつだな。」
「まぁ、いいとして、そんな感じで院長先生が引き取り先に困ってた時に香奈さんが出張先の海外から戻ってきたんだ。んで、その女の子と男の子 メチャメチャ綺麗な顔してたっぽくてね。香奈さん一目で気に入っちゃったんだよ。」
「相変わらず、すっげー軽い人だな。」
「ねぇ、大地。その子達は何て?」
「あぁ、それが答えはノー。引き取る事、断ってきたんだって。」
「ふんっ!それは良かった。そもそも私は これ以上 兄弟が増えるのはごめんなんだよ。」
「まったく…。空は本当に根暗…いや、どちらかと言うと人嫌い?…ってほどでもないか…。まぁ いいや。そんな感じ。」
「てめーテキトーな事言ってんじゃねーぞ大地!」
「まぁまぁ、空も大地も落ち着いて…。」
「?僕は落ち着いてるよ?みどり。ていうか実はまだ話の途中なんだよ。」
「は!?まだあんのかよ…。」
「うん。実は香奈さん。諦めなかったんだ。そこで、様子見ってことで一週間くらい この家で一緒に過ごす事になったんだ。」
「はぁ!?そんなのありかよ!」
「いつからうちに来るの?大地。」
「うーんと…たしか…今週の土曜だったと思うよ。」
「…。おい大地。断れ。」
「え?何言ってんの空?無理に決まってんじゃん。」
「いーから断れっつってんだよ。」
「ちょっ…ちょっと空!そんな事言ったら大地も困るでしょ!」
「もう!我慢してよね!空!って…何で僕の事 睨むの…!?」
「大地てめぇ…いつから知ってたんだ そのこと。」
「昨日。」
「誰から聞いた…。」
「院長先生だよ。ていうか5?6歳?くらいに香奈さんに引き取られて以来あの孤児院に顔出して無いじゃん。これを機会に挨拶しに行こうよ。」
「は?別に必要無いだろ。つーか向こうから 来てくれてんだろ。月一回くらいのペースで…。」
「空…、たまには大地の言う事も聞いたら?それに こっちから顔出してれば今頃その女の子と男の子の事で こんなに考えこむこともなかったんじゃん。」
「まだ 分からねぇのか?みどり。私はこれ以上 家族を増やしたく無いんだよ。」
「でも常識的に考えて挨拶にすら行かないのはダメだよ〜?今までは僕も空に、言われるがままだったけど。まぁ、実際 中学生になってからは毎日部活があって忙しかったし…」
「俺も一度見てみたいな!2人のいた孤児院!」
「別にいたってほどじゃねーだろ。私は2ヶ月くらいで大地は一ヶ月くらいしか世話になってねーし。」
「もぉ〜空ってば本当に冷たいなぁ〜」
「まぁまぁ2人とも。続きは明日に話そうよ。今日はもう夜遅いし。それぞれの部屋に戻ろう。」
「お!良い事言うねぇ〜みどり!じゃあ僕寝るよ!おやすみ〜!」
「私もそうさせてもらうとする。じゃーな」
「うん。おやすみ。」
ーーー『全ての家族に血の繋がりがあるわけじゃない。』