Ⅳ 記憶喪失
四角い箱の中にあったのは、指輪。
指輪と言っても、当時の中学生のおこづかいだから、そこまで高くないもの。でも、私は嬉しかったんだ。
日記が出てきた。
この日記は中学生と書かれていた。
中身を見ていく。
淳と仲良くなったいきさつや、佐藤先生や川上先生と仲良くなったことも書かれていた。
告白されたことも、初デートのことも。
引っ越すことになったことも。
ここまでは特に何もなかったことを思い出した。
このあと、なにが起こったのかわからない。一部しか記憶が戻っていないようだ。
その次のページをめくるのは怖かったけれど、めくった。
白紙だった。
何も書いていない。
その次のページも。
一番最後のページに、白い封筒に入った手紙が挟んであった。
「朝川愛菜 様」
とても丁寧な字で書かれていた。
「いきなりの無礼をおゆるしください。
ずっと、愛菜さんに会いたいと願っておりました。
そして、遠くからいつも思っておりました。
この度の騒動は、実にもうしわけないと心から反省しております。」
「水浦 弟より。」
聞いたこともない・・・。
ある?。
いや・・・。
ある。
一つずつ、記憶がつながって行く。
水浦くんの弟だ。水浦くんとは、淳の名字だ。
そうだ。淳、私のこと助けてくれなかったんだ。
たくさん、助けを求めたのに。
だから、記憶喪失になっちゃったんだ。
水浦くんが私と付き合っている、って噂があって淳との関係を否定されたんだ。
私の唇を奪った。
それだけのことで、って思うかもしれないけれど、私にとってはとてもショックだった。
好きでもない人に唇を奪われるのは。
読んでいただいてありがとうございます。
次回もお楽しみに。