Ⅰ 再会
「朝川愛菜です。音楽を担当します。よろしくお願いします。」
初、担任するクラスを持つことができました。
去年までは、副担任だったのでうれしい…。
異動してきたばかりだから、ちょっと不安だし、緊張もする。
私が担任するのは、1年3組。
さっきの自己紹介は、学年ごとに集まっての挨拶。
今年の年間予定とかを教えてもらって…、担任の先生って大変そう…。
今年、入学してくる子の名前も把握しておかなきゃだし。
自分の机に座って、1年3組に入ってくる子たちの名前を確認したり、給食当番表を作ったり、名前シールを作ったり、今日一日でとっても疲れたよ…。
「愛菜?。」
突然後ろから声をかけられた。
振りかえると、1年4組担任の川上優南(多分、そんな名前だった気が…。)先生が、片手にお盆を持って、私の後ろに立っていた。
黒のスーツをカッコ良く着こなしていて、長い髪を後ろで一つにまとめている。男の先生よりも高い身長だ。
「忘れちゃったの?。私は、いっぱつで愛菜だって分かったのになあ。」
川上先生は、私の隣りの机の席に腰を下ろした。
そういえば、隣りだった。
「ねえ、佐藤先生?。」
川上先生は、自分の向かい側に目を向けた。
「え?。愛菜なのか?。」
さっきから、なんなんだろう。
「すいません、多分人違いかと…。」
私は、訳が分からず言う。
「絶対、人違いじゃないよ。・・・そうだ、帰り一緒にご飯行こう。」
川上先生は私の耳元で囁いた。
あなたたちは、誰なの?。
中学生より、前のころの友達?。
私は、中学生よりも前の記憶がない。
ある日、起きたら病院のベットで寝ていた。
となりには、女の人と男の人が私を心配そうに覗き込んでいた。
「記憶喪失でしょう。」
病院の先生に言われた。
そこからの記憶はある。
だから、今の親が本当の親なのか、自分の名前は本当に朝川愛菜なのか、分からない。
読んでいただいて、ありがとうございます。
次回もお楽しみに。