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たいとる  作者: たかなし
4/7

現在/一瞬



今日はやけにネタが出てこない。

スランプなんかなー。。



朝ごはんを食べてからずっと机に向かっていたものの、なかなか手紙を書けないでいた。


こういうときは大概、散歩をしてネタになりそうなものを探しにいくことに決めている。

聞いてもいなかったテレビを消し、ちゃっちゃと外着に着替えて家を後にする。


随分と気温も下がったな


首襟から冷えた空気が直接服のなかへ入り込む。

マフラー必要だったかも。


防寒対策を甘くみていたことを後悔しながら、いつもくる公園のベンチに腰かける。



今日は平日。しかも正午前。

おじいさんが杖をつきながら歩いている。

女の人は何かに追われるように足早に自転車を漕いでいる。

随分と平和な時間だ。

秋風に当たりながら空を見上げる。そこには雲ひとつない青々とした空が広がっていた。

とても澄んだ青。




僕は魅入られたように、その空から目が離せなくなった。



………


あの空に飛び込みたい。


あの空とひとつになりたい。


あの空はいったいどんなものなのだろう。


あの空は何で出来ているのか。


あの奥には何が隠されているのか。


あんな綺麗な色になるためにはどうすればいいのか。




様々な思考を巡らせる。

答えなど出る訳がない。

僕は空じゃない。

空にはなれない。


いや…なれなかった。



・・・なれなかった?



なんでそんな言葉が出てきたんだろう。



その言葉を皮切りに、意識がもといた公園に戻った。




僕は空になれなかった。




妙に心に残る言葉だった。

僕は病院から帰ってきた日からあまり空のことなんて考えていない。

それ以前に空について興味がない。

天気予報くらいしか気にしたことはなかった。

ならばなぜそんな言葉が?



空。青。なんだ?

気になる。


すると突然、北風が勢いよく吹いてきた。

枯れ葉はものすごい勢いで飛ばされていく。



んあ!寒い!

兎にも角にも体温が奪われそうだ。

自販機のあったか~い何か飲み物を買おう。


自販機の前で何を買うか迷う。

コーンポタージュか。いや、缶の底にとうもろこしが残るとすごい損した気分になるから今は却下だ。箸があればおK。

おしるこも甘ったるいし、なんにしよう。


コーヒーかココアかで悩んだが、ココアにすることにした。ココアくらいの甘さなら余裕なんだよね。



小銭を出そうとしたとき、手が滑って10円玉が宙を舞った。


チャリーン。


小銭特有の金属音が響く。

僕は追いかけるように拾おうと屈んだ、その時。


映像が脳の裏側に写った。



…誰だ?

影になってる女性の顔。

その女性はこっちを見ながら笑ってる…?

それと…駅みたいな……




え?

なに今の?


一瞬のことだったので頭の整理が追いつかない。

僕の頭はハテナマークでいっぱいになった。



一旦立つ。

落ちている10円玉が目に入る。

拾う。

財布にしまう。

自販機が目に入る。

飲み物を買おうとしていたことに気づく。

何を買おうとしていたのか思い出す。

、、、ココアだ!


数秒前の思考でさえも忘れてしまうほどインパクトの強い映像だった。



ここから先、僕は何を考えて家に帰ってきたのか覚えていない。

気づいたらベッドに座っていて、買ったココアはテーブルの上に置いてあった。


あー、ココア・・・温かいうちに飲みたかった。


我にかえったところで時計を見る。時刻は1時前。ちょうどいい。

手紙の内容とさっきのことは後で考えよう。

腹が減ってはなんとやらだ。




僕は台所に向かった。



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