大学/教職
「えーっと…ここか」
窓口のお姉さんに渡された資料を見ながらガイダンスが行われる教室まで来た。
教授は…坂口っていう人か。下の名前は読めなかったけど、十中八九、男だろう。
女だったら改名を勧める。
時間を確認する。4時。
よし。とドアを開ける手に緊張が走る。って言ってるけど、ほんとちょっとだよ。
これからの新しい生活に比べたらかわいいもんさね。
ゆっくりドアを押す。ドアの隙間からは少し狭い殺風景な教室が。次の瞬間にはそれが視界全体に広がった。
無機質なものしかない。生体反応が何一つない。
机。椅子。黒板。教壇。カーテン。床。
誰もおらんのかい。
時間的に早かったのかなぁと考えながら、教壇からみたやや後ろ側の席に荷物をドサっと放った。
あと30分何しよう?来る人はそろそろ来ると思うけど…
とりあえず携帯をいじる。
メール確認。新着なし。
ケータイアプリ。電池消耗激しすぎるからアウト。
とにかくいじるフリをする。
なんでこう緊張してるとソワソワするんだろう。脳って不思議。
アドレナリン分泌?いや、緊張したらトイレに行きたくなるとかいうからバソプレシンか…?と、受験時に仕入れた拙い知識で瞑想する。
こんなんしてても時間の無駄だと判断した僕は、この学部棟からちょっと離れた購買のところへ行くことにした。
明日から使うかもしれないし、どんなんなのか確認したくなった。
学部棟を出て、並木道を歩く。
オレンジ色に染まる空があたりを包んでいる。
しみじみとする景色とは裏腹に、新しい生活が始まっているんだという実感が今更湧いてきた僕の気持ちは明らかに高揚していると言えるだろう。
多分、にやけてる。いやいや、入学早々あやしい人と思われたくない。顔に意識がいく。
5分ほど歩くとそこに購買があった。
なんということもない。ただのコンビニと変わりないんだから。
強いていうならば、授業で使うもの(教科書とか、白衣とか、その他雑貨)が置いてある。
あと、5%割引。ほぼ定価。学生の懐には痛手の価格設定だった。
なんかしょぼん。
コンビニと変わりない価格設定の購買と往復で10分という距離によって、さきほどまで高揚していた気分が、学部棟に戻ってきた頃にはすでに覚めていた。
教室に向かう途中、トイレを催したので寄っていくことにした。
「大学に期待しすぎたかなぁ」
と呟きながら用を足していると、二つあけたところに先客がいたことに気付いた。
その人は一度僕を見たが、そのまま先に出ていった。
聞かれたかもとか思ったけど、知らない人だからいいや。と特に気にしない。
なんの意識もしないまま教室のドアを開けると、そこには先刻期待した光景があった。
話をしてる人。ケータイをいじってる人。本を読む人。なんか書いてる人。指のささくれ取ってる人。
いろんな人がいる。一瞬でそれぞれの行動がみえた。
なんか面白い。話してる人たちは同じ学科なのかな。
ずっとこの教室にいたらこんな風に見られてたのかな。
とかなんとか思ってるうちにそろそろ時間になりそうだった。
っと席、席。あれ。
温もりが残ってるはずの席はすでに座られてしまっていた。
あたりを見回しても後ろ側には程よいスペースが空いているところはない。
かろうじて空いてるのは…一番前。
いや、一番前とかw配布物とか回収とか頼まれそうで嫌だ。
だからといって
「隣いいっすか」
とかいう勇気もない。
二者択一。
僕は前者にした。隣がいないわけでもないけど。
後ろ側はダイレクトで隣だけど、こっちは一個あけて隣(講義座席を連想してください)だし。
嫌だなとか思いつつ席に着く。直後の席にはすでに座ってる人がいて
なんだよ前くんのかよ(女)
って思われてたら印象最悪だな。
そう考えたら急に恥ずかしくなったきた。
うおお。早く始ってくれ!
心の中で願っていたら、教授のようなひとが教室に入ってきた。
いや、見た目30代でスーツ着ててオフィスビル闊歩してそうなリーマン雰囲気の人だよ?
大学の教授って中年以上で白衣着てるか、いかにも変人オーラ放ってる人連想するじゃん。
ドイツ語がそうだったように。
うん。僕の表現で合ってる。間違いない。
「えー、皆さん初めまして。アムロ・レイです。」
!!
え??
ビックリしたあとに聞き間違いだったか疑問符が出た。
「アムロです。」
2回目言っちゃったよぉぉぉ!!
あんた坂口だろぉぉぉ!
オフィスビルじゃなくてホコテン闊歩してんのかよぉぉぉぉぉ!
変人だった。見た目に騙された。
後ろでもビックリマークが飛び交ってる感じがひしひし伝わってくるから、聞き間違いではないんだろうなぁー…
…つかアムロとか古くね?とか思ったのは僕だけじゃないはず
「とまあ、緊張もほぐれたところで始めますか♪」
ちょっと上機嫌な感じが見受けられる教授の古いジョークからガイダンスは始まった。
ギャグねたを取り入れます!
シリアスばっかだとスパイスたりない。