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たいとる  作者: たかなし
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大学/初日

2009年4月。まだ気温もそこまであがらず、肌寒い日が続く。

今年から大学生!と意気込んではいるものの、あまり実感はない。とりあえず可愛い子がいればいいかなーなんて思ってた。なんてったって高校時代はむさ苦しい男子校だったから。唯一のオアシス(?)はいつも使う駅と文化祭だけだった。女子とすれ違うだけでもちょっとテンション上がるんだよ、男の子は。


入学式では緊張して女の子の顔とか見れなかったし、身体測定のときは行動がみんなバラバラだったからイマイチ誰が誰だかわからない。ってことで実質今日が同じ学科の顔合わせになる。


そして記念すべき第一回目の授業はドイツ語。ぱっとしません。先生、というよりここでは教授?もぱっとしません。なんか髭生えててパーマかかってる。よくドラマとかに出てきそうなヨーロッパ風のダンディーな人と想像してください。その教授が

「ドイツ語は-」

と話し始めた。みんな教科書に目がいく。そのなか僕は辺りを見回した。あんなり可愛いと思う子はいなさそうだ、残念ながら。ちょっと落胆。これからいくらでも出会いはある!と自分に言い聞かせて教科書に目を落とす。

チャイムが鳴り、ノートと筆記具をしまう。初日の授業はおしまい。特に誰と話すこともなく教室を出た。


僕には行くとこがあった。学生課だ。親に教職はとっといたほうがいいと思うよなどとさとされ、なんとなく取ることにしていた。ここの大学の教職は選択というか、自己申告制なのだ。みんなが帰る頃、残って教職の授業を受けるという感じになる。

忙しくなりそうだと直感はしていた。でもそれよりも、大学生活をもっと充実させたいと思っていた僕にとっては都合がよかった。


リュックから資料を取り出して学生課の窓口にやってきた。

「あの、一年の教職を取りたいのですが」

「はい、では申告書はお持ちですか」

僕は手に持っていた紙を渡そうとしたとき、紙が服に引っ掛かって真ん中の折り目でベリッと破いてしまった。

おぁ!と心で叫んだ。のが多分口にしていたんだと思う。廊下に響いた。

「大丈夫?」

と窓口のお姉さんに声をかけられてさらにテンパった。

「ちょっと破けてしまったんですが、、」

窓口のお姉さんは優しく、これなら大丈夫よ、と言ってくれた。

「では受付ましたので、この資料見といて下さいね。あと、今日の4時から教職の説明がありますので、ここに書いてある教室に来てください。」

わかりました。と僕はお姉さんに告げて踵を返した。歩きながら資料をしまおうとしたとき、前方にいる女性と目が合った。


きれいめで背が高い。学科にはいなかった人。


見蕩れてしまった。


これからの僕にとってかけがえのない人との出会いだった。

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