第7話:過去から今もなぜチアキ?
第七話:過去から今もなぜチアキ? 2010年 12月 07日 (Tue) 18時 49分 01秒
――ああ、あつい――
――ああ、いたい――
――ああ、かなしい――
――ああ、うれしい――
――ああ……いとしい――
マゾ!?
――私を苛む熱い枷――
――私を壊す熱い杭――
――私を蕩かす熱い舌――
――私を暴く繊細な指――
――私を壊す、いとしいひと――
いやエロい事言わんといて!?
――かなしい、かなしい、かなしい、かなしい――
――うれしい、うれしい、うれしい――
いや同じこと何度も言わないでいいわよ! 十分聞こえてるから! っていうか悲しいは4回なのに嬉しいは3回なの!? それでいいの!?
――もっと、もっと、わたしを欲して――
――もっともっと私を欲しがって――
――壊して――
――暴いて――
――わたしが、あなたたちから離れられないように、あなたたちも私から離れていかないで――
いや私に言われても……ね?
――ワタシヲ、ヒトリニ、シナ_――
――戯けが! 何故あんたは自分で考えようとしない? 離れて行くのはてめぇが馬鹿だからだ――
チアキぃいいいいいいい!!!!!!!!? 突然私を一人にしないでって台詞を言う瞬間に何処からかチアキの声が……チアキ居ないのに!
夢だけど、夢じゃない。
いや、夢であってくれ、ハッキリ言ってチアキが夢に出るとオネショ確立が高いから!
べ、別に高校にもなってするわけじゃ無いんだからね!
ちゅ、中3までよ!
……白状します、この世界に来る前にしました、だってチアキが夢で出てくるんだもーん。
「ガキか!?」とか言わないでね? 物心付いた時はすでにトラウマだったから……。
濃厚な交わりをしてる夢とはいえ見せ付けられて、胸がざわざわする。
天蓋の布がふわりと動く。精神の高ぶりに風の精霊がざわめいているのがわかる。
じんじんと疼いて仕方が無い。
「あれは、きっと・・・」
前の姫巫女。黒髪を妖艶な肢体に絡ませていた。エロいっす。
そして、恍惚とした顔のまま、彼女の喉に、腕に、足に歯を立てて……噛み千切り、あふれる赤い体液を啜っていた男達。グロ!
「あれって、吸血鬼のほうがまだマシな気がする……。吸血鬼って喉にだけ牙たてるもん。でも、あの姫巫女さま、もしかしなくても、食べられそうな勢いだったなぁ……でもチアキの言葉に止められて……。
アレ……また眠く……。」
姫巫女はその言葉に殴られたの様によろめいた。
男達も止まっていた。
――何がこの世界になれるだ……愚か、この言葉が一番似合う、人に食われる事でこの世界になれるとでも? 戯けた答えだ。お前がなるのは怨霊であってお前に頼まれて食われた奴らは一生迫害される――
――つまりお前は人を迫害させ、孤独にさせる悪魔と言うのが一番似合う言葉だ――
彼女は絶句した、何も考えてなかった自分の愚かさを知ったのだろう……。
チアキは怖い、でもチアキの考えは今まで間違ったことが無かった。
それに、この答えは愚かじゃなければ誰でもわかる……。
私はチアキを誇りに思った。
その時、また目が覚めた。
「――やっぱ……こわい、よ。」
いつか、私もそんな気持ちになってしまうのかもしれない……かな? 帰れない現実に疲れて、誰かの腕を取ってしまうかもしれない……かな? それとも、帰らなくていいと思える人に出会……てるじゃん! チアキは誰にも渡さない♪
って私、チアキの事が好きなの!?
ややや、そんなの嫌よ! チアキが好きって私マゾなの!? で、でも間違った事したとき怒ってくれるし、ファーストキッスは……チアキに使ってるし……あれ? 私ってチアキ以外にキスしたことあったっけ?
お父さんとお母さんにもした事無いよ!?
やっぱチアキ以外……私に婿は居ないな、ハハハ……私将来大丈夫かな?
「――しにしても、うう。夢に流されすぎだよ。」
気を取り直すと、ベッドから降りて顔を洗おうと隣室の洗面所に行って……侍女サン方に捕まりました(涙)
今日はやれシェンラン風の髪飾りがどうの、紅はトウキザワ産のだ、帯がどーだこーだと、アソバレマシタ。ええ、仕事なんでしょうが気分的に。
うなだれながらされるがままにしていると(だって選べって言われても知るか!)満足げな顔をした侍女サンが、ほうっとため息をついて、うっとりと私を見つめていった。
「ああ、やはり美しい御髪ですわ。わたくし、姫巫女様の御髪を結える日が来るとは思ってもみませんでした。それも文献上にも無い、完璧な太陽と月の巫女さまの、です。わたくしはなんてしあわせなんでしょう……。」
その言葉に次々にほかの侍女サンが同意を示す。
「えと、黒い太陽の巫女さまは何人かこちらに現われたんですよね?太陽と月の巫女も何人かいたんじゃないの?」
私の問いに、侍女サンたちは話し始めた。
「風の国の保護を受けた黒い太陽の巫女様は、46年前のお一人のみです。ほかの国にも姫巫女様はいらっしゃったことがありますが、いずれもその時代におひとりのみですね。」
「すでに100年は前の話になります。巫女様は五王国のひとつの国を選びそこに現われ、五王国のひとつの国を選ばれそこにお住まいになります。」
「巫女様のお住まいになる国はほかの国より敬意をうけ、姫巫女様はその国の王と婚姻を結ぶのが、習いで・・・」
ごおっと風がなった。
侍女サンたちの悲鳴が耳をつくけどかまっていられなかった。
結ってもらった髪が風にあおられ、うねる。
コンインって婚姻よね。それって。
「け……けっこんんんんんっ!!!」
ああ、オヤクソク。
ちなみに、着飾った後は、その五王国の公子様方とお食事なんだそうな。
それっていわゆる「品定め」ってやつですか。
だって私が着飾ったところで、「あの」きらきらした人たちと何を話せと……?
しかも、あんな夢見た後にデスカ……?
チアキ、早く私を頂いて!
「無理。」
『ゴン!』
痛い……い、いつの間にいやがった。
なんかいろいろ考えなくちゃいけないはずなのに、畳み掛けるようにしてなし崩しに結婚させようって事なのか?どうも、姫巫女はどこの国も欲しい存在らしいし。
他国への牽制のための政略結婚なんてごめんだわ。
姫巫女なんて、帰る手段を身に着けるまでの仮のすがたよ。
だって次の皆既日食には地球に帰るんだから!日本以外の国で数年後には皆既日食があるはずだもん。地球のどこかの国に出れさえすれば、後は日本へ帰るだけ。なんとかなる!
ゆらゆら揺れていたろうそくの火が、風にあおられたのか、ひときわ大きく炎を揺らし……ばちっと音を立てて宙に舞った。
「きゃっ」
「巫女様、気をお静めください。火の精霊が姫様の気に煽られております!」
「……え。」
「巫女様」
「気をお静めください!」
侍女サンたちの悲鳴に、我に返り、周りで踊っているような炎たちに意識を集中する。
くるくると、楽しそう。でも……。
「やけどしちゃうと危ないから、もどってくれる?」
するとかあっと熱くなった。
「うん。私を焼いたりしないの知ってるわ。でも、ここには、私以外の人がたくさんいるでしょう? その人たちを怖がらせないで。火はやさしいの、そうでしょう?」
キャンプの時の炎の暖かさが大好きなのよ。ま、チアキの膝枕に比べたらどうってこと無いけどね!
――ハイ、自重します……そうだよね、チアキに膝枕させてもらったぐらいで偉そうにするなってね……。
赤く青く点滅しながら楽しそうにろうそくに戻っていく。炎たち。
思わずうれしくなってにっこり微笑んで。
「ありがとう」
といったら、(どういたしまして!)と陽気な声が頭に響いた。
火の精霊は、やんちゃないたずら坊主みたいだ。
そういえば雷の精霊が私の携帯に潜んでるのか、ちょっとピリピリする。
ついでにア●フォンです(笑)
あ、最後に一言。
――ああ、ウザイ――
――ああ、コワイ――
――ああ、冷たい――
――ああ、腹立たしい――
――でも……大好きなアイツ――
――私を戯けとよく言うけど、あいつの言っていることは正しい――
――私を導く黒き光―
――私を口説き落とすツンとした言葉――
――私を引っ張ってくれる暖かく、大きな広い手――
――私を見るだけでドキっとさせる偉大な背中――
――ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ――
――抱きつきてぇ、抱きつきてぇ、抱きつきてぇ――
何となくアレンジしたけど、やっぱり私……チアキに惚れてる!?