第二十六話:守り刀なんて必要無ぇ!! こちとら体が剣山じゃぁ!!
えっと、メタな発言になりますが原作と似たような生活送ってました。 今はセクハラダンスタイム、雑魚が調子に乗って私に触るなぁ!! とそんな感じで拳をお返ししてあげましたが。
――!! な、何奴!! どこからか気配がした。
「だいちゃん。 お願い!」
壁が音も鳴く崩れて、再構築を始める。・・・檻に。土の精霊が作り出した土の檻には一人、人が囚われていた。
「であえであえ~!! っと、ボケは良いとして……えっと始めまして?」
壁のむこうに潜んでいたのは、根の国の密偵だった。
そこにいた誰よりも早く異変に気づき、精霊を使役した私の手腕は鮮やかだと誰かに褒められたい……。 呼吸をするように自然に、精霊との疎通が成されている気分ね。
「はは、チヒロが本気を出せば、どんな国も砂になってしまうのだろうな。」
「あの、やはり、根の国の方ですか?」
チヒロがのんきに語りかけている。檻に阻まれた者は、観念したのかどっかりと座り込んで顔を覆っていた覆面を外しだした。
「チヒロ、下がれ。」
『この人何にも持ってないよ?』
「短剣と仕込みナイフが靴に。あと、薬らしい物もないそうです。」
「・・・そうです?」
「あ、風の精霊のふうちゃんが、危ない物持ってないって・・・」
「・・・すごいな、姫さん。」
覆面を取ったそいつは、素顔の美しい女性だった。
長い金髪を頭の上できっちりまとめ、凛々しい眼差しの、浅黒い顔。力持った瞳は金。
「根の国特有の色彩だな。エルレア殿の手の者か?」
「・・・いや、私たち1部での計画だ、あの方は知らない。 われらは忍んでこそ使える者。それが捕まったと知られれば、消される運命。
それにエルレア様には秘密である。 私は、最早、帰るところがなくなったのだ。」
女は、力なく首を振った。女にしても、今回の拘束は予想の範囲外だったのだろう。
密偵が、逃げられると踏んで取っていたはずの距離。
逃げる間もなく檻に囚われ、女は、すっかり気が削がれている様子だった。
おそらく、拷問を受け、話して聞かせることが出来る情報も、たいした物はないはずだ。覚悟を決めたのか、淡々と静かな受け答えは潔く映った。
どうするか、と逡巡する一同の中で、ひとりがあっけらかんと言い放った。
「えと、取り合えず、悪い人じゃないみたいなんで、出していいですか?」
・・・姫は相変わらず、のんきだった。
「姫、虜囚自らが驚くような事を仰らないで欲しい・・・。」
アレクシスは疲れたように呟いた。
ちなみに当の虜囚は、それはもう化け物でも見るような眼で姫を見ていた。・・・不敬だ。
「・・っ馬鹿か、きさま!」
「口が悪いですねー。女の子なんだからもっと優しくしゃべらないと。それにね、あなたすごーく精霊に愛されてる。さっきから、あなたの周りを風の精霊と水の精霊が心配してぐるぐる回っているの。どうしよう、どうしようって。このままだとあなたが酷い目に合って死んじゃうって、それはもう悲しげに。」
「精霊・・・?そんなもの、見たことはない。でたらめを言うな!どうせ、国に帰っても殺されるだけだ!それに、拷問しても私が知っている情報など微々たる物だ。何の価値もない。・・・殺せ!」
自分の胸元をぐぐっと掴んだまま、女は言った。下を向いたまま、さらに呟く。
「それに、私の帰りを待っている者は、いないのだから。さっさと殺してもらったほうが、楽になれる・・・。」
ざらり、と檻が砂になった。その砂を踏みしめて、姫は歩いた。
下を向いたままの女は、気づかない。膝をおって女の前に座り込む、姫。・・・不思議に誰も動かなかった。女の手をそっと両手でつかみとった。
姫が目を閉じ祈るように女の手に口づけた。
「・・・見て。聞こえるでしょう?あなたを心配してる精霊の、声が。」
「・・・この、こえ・ほんとうに・・・?」
女の目から涙が落ちた。
そして、女も、姫に落ちた。
「・・・なあ、気の済むまで拷問してくれてかまわない。そして、私が、危険じゃないと判ってもらえたら、私をあなたの護衛に雇ってはくれないか・・・?その、国に帰っても、捕まって殺されるだけだし、なら、この国で、あなたのために、死にたい・・・。」
「え?別に死ななくっていいですよー。」
姫があっけらかんと言い放つ。この変な生き物にどう突っ込もうかと思ったとき、セイラン殿が歩み出た。
「チヒロがこの者を信用するのは、なぜ?」
「え、あのですね、悪意のある人はわかります。表面取り繕ってても、精霊たちが危険って教えてくれますし。それに、こんなに精霊に愛されてる人、はじめてみた・・・。」
どこかうっとりと女を見つめる姫。女も、うっとりと姫を見つめている。
「で、イザハヤ。 お前がここに来る理由になった奴はどこのどいつだ?」
『世界一精霊を跪かせてる危険人物が現れた』
戦闘
作戦
道具
→逃げる
「逃げるな」
結局チヒロは首をとっ捕まえられた、息はできるが声は出ない状態まで締めている。
「~~~~~~!!!!!!!!」
ベチベチと手を叩くが離す気は無い、完全に暴力的である。
「逃げるな小娘、ネタに走るな」
そう言って彼女を離す。 どうやらチアキにネタを使うのは命に関わる事らしい。
「けほっけほ……すいません……えっとイザハヤ、わたしは、チヒロ・オオツキ。これからよろしくね?」
私よりやや低い背丈の、すらりとした肢体の、麗しの姫君。宵闇の黒髪が真珠の肌を縁取り、甘く、とろりと輝く月色の瞳、赤い唇。柔らかな身体。柔らかな心。
胸に押し寄せるこの感情は、なんなのだろう?
「で、イザハヤ。 言え」冷たいチアキの一言。
「根の国、密偵部隊。今回の命は、情報収集。各王の行動を把握し、報告する事が主。 ・・・同盟の有無、反意を抱く者の把握、巫女姫の確認、移動ルートの確認、全てはルツと言う男だ」
またアイツか!! とチヒロは心の中で突っ込んでおいた。
「確認が取れる位置にいる者が、叛意を抱いているのか。根の国に情報を渡して得する奴は誰だ?」
「やれやれ、われらの身辺をもう一度洗いなおさねばなるまいな。」
「火の国はこの間粛正したばかりだが、もう一度だな。」
「根の国戴冠式まで一月を切った、急がねばなるまい。」
国王達が顔をつき合わせて話し始めると、姫は少し考えてからこう言った。
「・・・精霊に聞いて見ましょうか?時間はかかると思いますが、それぞれの国に帰ってから、と考えると、こっちのほうが随分早いはずです。それに、精霊たちは、人間をよく知っています。見えないだけ、感じられないだけで、そこにいるのにね。
それに、彼らは、黒い波動を持つ人がわかるんですって。・・・妬み、嫉み、何かを求めるあまりに心失った人の、真っ黒い感情が、見えるんだって。」
淡々と、どこか苦い物を噛んでしまったような顔で、姫が言った。
「・・・そんなことが、できるのか?」
「うん。できるよって、皆が言ってる。探してきてあげる、見つけ出してあげるって言ってる。」
オウラン王が姫に尋ね、姫は応える。
・・・みんな、とは精霊を指しているのだろうが、五王国の守護精霊は、それぞれ、火、風、水、木、土、と異なる。その全てと意思の疎通が図れると公言したのだ。驚きは、ひとしお、だった。
過去、何れの国が有した巫女姫であろうとも、使役する精霊は、従えてせいぜい二つだったのに。
だが今回はチアキと言う完全なるイレギュラーが存在する。 アレが存在しているのをどう考えるのは無駄な事だ。
「――邪魔だ、退け小娘。 『空間の精霊』……」
突然チアキの目の前に牢獄のような物体が現れた。 そこには大量の人間が通勤ラッシュ+人身事故が起きた時を思わせるぐらい詰まっている。
チアキはどこかへ立ち去る時、少しだけ呟いた。
「本来なら消滅させてもよかったんだがな、下等種族」