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第二十五話:目覚めたらなんじゃこりゃ!?

目覚め……たらなんじゃこりゃ!?  2011年 06月 18日 (Sat) 22時 32分 58秒





 ぽっかりと、眼を開いた。 まず目に入ったのは、ベージュ色の天井。そこから、幾重にも薄絹が下がっていて、見事な天蓋を形どっていた。それから。


 死にかけのインラン、シャラ様、セクハラン。


 みんなのいつものボコボコの姿を見て、ほおっとした。


 じわじわと、実感する。「帰ってきた。」

 おかしいな、帰るのは、ずっともとの世界だって思っていたのに。いつの間にか、この世界のこのひと達は、私の帰る場所になっていた。


 「え、と・・・。ただいま?」


 そう言うと、彼らは一瞬ピクっと動いて……それから動かなかった。


 まだ本調子じゃないから、と言うわけでぐでーッとベッドで横になってると


 『ひめさま、王さま、来るよ』

 『ひめさま、王さま、来た』


 風の精霊と、水の精霊がそういった。


 「ん、王様って、アレクシス様と、リシャール様?」

 「チヒロ?」死にかけの奴らが復活した。

 「精霊達が、王様が来るって教えてくれたの。多分、アレクシス様と、リシャール様だと思う」

 「ふん。早いな。もうきたのか・・・。」


 シャラ様が呟くのと同時に、部屋の扉がノックされた。誰何の声に、予想通りの答えが返る。扉は緩やかに開かれ、そこに、風の国の王、アレクシスと、水の国の王、リシャールの姿があった。

 表面上は穏やかに話し始める。


 (寝たまんまじゃいけないって思って起きようとすると、にっこり笑顔で脅迫する、甘いな。 チアキの脅迫は完全に首根っこをとっ掴まれるぞ!!)


 「姫を攫ったのは、シャザクスの貴族と聞いたが?」

 「もう、手は打った。」

 「姫を攫って、我が物とする・・・けしからん輩が多いね。」


 そう言ってリシャール様は曰くありげな流し目をセクラハンに送った。・・・んなことよりチアキどうしたんだろ?


 「闇の国の息がかかっていると聞きましたが、如何?」

 「傀儡術の匂いがした。人の望むとおりの未来を見せて、思い通りに操る。下法だ。」

 「ハクオウ国のセイラン殿の言。間違いはあるまい。あらゆる医術に長けたお方だ。見立ては、確か。では、このまま、ここに姫を置いておくのは得策ではないのも承知であろう?」

 「・・・だが、姫は弱っている。今、動かすのは、軽率だ。」

 「ああ、確かに。」


 そう言って、みんなの眼が私を見た。 とっさにその目線を避ける為にウサギさんぬいぐるみを盾に隠れた。


 「「「「「見られたく無いのか!! というか隠れて無いぞ!!」」」」おお、素晴らしい声の調和。 やっぱり親戚同士なんだね。

 「あの、私大丈夫だよ?動いたほうがいいなら、動くけど・・・。」


 その言葉に、食いついたのは、誰あろう、インランだった。


 「・・・大丈夫だと?三日間昏倒していた奴に言われたい台詞じゃないな。」

 「・・・三日ぁっ!」


 なに、もう3日も立ってるだと!! ぁぁ、戸棚に隠してた牡丹餅は大丈夫かな……?


 「かなり疲れたんだろ、精霊達からも全く問題は無いと毎回聞かされたからな」


 おおぅ、疲れただけで3日寝る私ってすげぇ! ・・・落ち着いてから、見えない敵の話になった。


 「金の髪に金の瞳。おまけにカフェオレ?色の肌・・・ねえ。カフェオレってなんだ?」


 そこからか。


 「・・・えーと、このテーブルの色をもっと濃くした感じで・・・。」

 「ふん。根の国の者か。」

 「王子と呼ばれていたのですね? その、男は。」

 「はい。呼んでた男は、ルツって呼ばれてました。」

 「ルツ・・・根の国の・・・傀儡のルテインか。」

 「では、王子とは、根の国の第二王子。」

 「でも何か相当第2王子が精神的に疲れてたけど……?」

 「「「「「いや何があった!?」」」」」









 「何も出来ない小娘だと、侮っていたな。」

 壁に開けられた大きな穴(というより、空間)から空を見上げ、呟いた。ここより遥か高く舞い上がった鳳凰が、小さな点に見えた。鮮やかに、風を纏い、天女のように身軽く、鳳凰とともに翔上ったその姿は、鮮烈な印象を俺に与えた。 修復すんのメンドクサイのだが……。


 「――ルツ、お前のせいで俺の隠して居たワインが全て粉々に砕け散ったぞ……それに俺は、俺の力で、根の国を掌握する」強い力で言い放つと、ルツは頭をたれた。

 「エルレア第二王子殿下」

 「光栄に思え、お前はクビだ。 ついでに俺は今日は寝る!!」


 彼、エルレアは精神的にまいってしまったようだ……。

 五王国の次点にたつ根の国は、軍事と策略に長けた国だ。

 その王は、いつも最悪の人材だった。

 人の悪意にはそれを逆撫でし、自滅に追い込むことで、答える。

 人の善意には丁寧に張った罠で首を絞めることで、答える。

 異議を申し立てた者を、追い詰め、追い落とし、屈辱の中で絶命を選ばせる。

 隙を見せた国を襲い衰退させ乗っ取るか、富を吸い上げる餌場にする。

 そうして彼らは、五王国に取って代わろうとしていた。


 「・・・俺の父は、俗物だ。力に溺れる哀れな老人にすぎない。 まぁ既に“いない”がな。 そして“第一王子”も既に……な」

 片眉を上げ、皮肉に笑いながら、エルレアは呟く。

 「さて。堕落した王家でも守ろうという殊勝な奴が一人ぐらいいるといいがな……なぁチアキ……“本来の俺”は相当の不幸って奴だな……」


 エルレア第二王子はもしも……いや、本来の世界について暗がりに向かってその言葉を言う。


 彼は目を瞑る、本来この国は最悪な国……いつしか現れた“彼”により、無理やりな世界の修正が行われた。 この運命を完全に塗り替えられたこの世界に感謝をした。


 エルレアはチヒロに空けられた穴の向こうに見えた一人の姫。 本来なら「国をきどり、この俺にまで色目をくれやがった化粧臭い女」と言っていただろう姫は何一つ目的も無く、ただガーデニングを幸せそうに楽しんでいるのが見えた。


 「――幸せってのは何気ない日常……か……」


 実は姫の育てている花はエルレアに告白する為の花だとは誰も思わないだろう……。

















 体が本調子になったので、「全快した!」と言ったけど、私は自分の部屋に閉じ込められ、コッソリと抜け道を作っているので毎日忙しい。

 三食はベットで。見張りつき、無論その目を盗んでは抜け道作り。


 最近またチアキが帰ってきて、ご飯はやっぱりチアキだね。


 朝。ご飯(コシヒ●リ)の玄米を特盛り、黄身の味噌漬け、マグロの干物。

 昼。ダチョウの目玉焼き乗せ特盛り焼きソバ。

 夜。スパゲティ・タマゴ・チーズ・エビのてんぷら乗せハンバーグカレー。


 そんな彼らは私の部屋で顔を突き合わせてなにやら画策中の模様。

 なんか、黒い物が漂ってるよ!

 「貴殿は、どうする?」

 「・・・行きたくはないが、行かねばなるまいな。」

 「・・・だが、姫はだめだ。」

 「ならば、誰が残る?」

 「・・・・・」


 ずっとこんな感じ。行きたくはないけど、行かなきゃならない。王様は、みんなそう思っているみたい。だから。


 ガチャ……扉が開き、チアキが現れた……。


 「根の国へ行くぞ、支度をしろ。 時間制限は1時間、それ以上は待つ気は無い」


 鬼ぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!


 まぁ私に支度は5人がやるとの事で関係無いので予てから計画してた事に手を出そうと思いました。

 この日のために、せっせと話しかけ、ようやく仲良くなった侍女サンに、拝み倒して頂いた侍女の制服。

 わくわくしながら袖に手を通す。髪は丸めて帽子で隠し、準備オッケー。


 「キュウちゃん?」


 確認の声をかける。いくら私でも単独行動がどれほど危険か、よおく判ったから。人の変わりに精霊ってのもなんですけど。


 「あのね、変なひとがいたら、警告してね。ふうちゃんも、お願いね。みどりちゃんは私の手首にまきついて。だいちゃんは隠れてる人がいたら閉じ込めて。足元崩すのもいいかも。あ、怪我はさせないようにね。りゅうちゃん、呼んだら、出てきてくれる?」

 「きゅう」

 「是」

 「応」

 「了」

 「わかった。危ないまねはするな。」

 火、風、木、土、は短く肯定の念を返してくれて、水の精霊のみ、過保護に答えを返してくれた。


 「チヒロ、コイツも持っていけ」


 私の元に何か生き物が飛んで来た!!


 それは……ハリネズミ!? ピリピリしてる!?


 「えっと怒ってる?」

 「当然よ! 貴方に使えるよう言われたのに全く機会が無かったのよ!! ……寂しかったんだから……」


 つ、ツンデレ!? ってこの子、女の子なんだ。 チヒロ、新しい扉を開きそうです。


 「それじゃあ、チヒロいっきまーす!」ガン●ム風に。


 部屋を抜け出し、お茶セットを持って、調理場へ。

 シャラ様のお声がかりだと大事になって誰も目線すら合わせてくれない。でも、今度こそ、刺激のないものが食べたいから、侍女サンに化けて、調理人に会うのデス。

 ・・・そーっとなかを伺うと、一人のおじさん一人。仕事は終わったのだろう、調理場はきれいだった。


 でも甘い香りが漂う……。


 「む!! その気配は姫さまだな!!」

 「何で分かったの!?」調理場のおじさん魔改造されてるよ!!

 「チアキ殿に色々と『てれう゛ぃ』って物で食べ物の作り方を見させてもらってな、今はスイーツ系を練習してるんだ」


 キィ……っと扉が開く音と共に赤毛短髪の男の人が現れた。 たぶん20代後半?


 「親父そこにいたのか。 丁度良い、俺の作ったケーキ食って見てくれ。 ん? お前誰だよ?」

 「おま、この方は姫様だぞ!」

 「あ? 姫? こんなチンチクリンが?」失礼な!!

 「チンチクリンで悪かったわよ!!」

 「まぁ良いや、俺のケーキお前も食うか?」


 チアキが作っただろう冷蔵庫(もちろん氷の精霊が充満してる)からロールケーキが現れた。


 「うわぁ……ロールケーキだ……」

 「どんな味だ?」


 私とおじさんは同時に齧りついた。


 シャク……


 フワフワの生地の内側のクリームがまるでアイスのように凍ってる、でもアイスと違ってそこまで硬く無い。

 優しい甘みが私の舌を唸らせた……。


 「す、凄い! これって何!?」

 「こ、これを俺の馬鹿息子が……作っただと!!」

 「クソ親父に馬鹿って言われる筋合いはねぇぞ!! っと、このケーキは地球で最近話題のアイスロールケーキって言う奴でな。」


 ――あれ? 普通に地球って発音してる?


 「どうした馬鹿姫?」

 「馬鹿言うな!! それより貴方、発音が……」

 「ああ、昔俺、行方不明になったんだ。 空間に空いた穴があってよ、そこに手ぇ突っ込んだらそのまま地球で……。

 この世界に戻れたのも1ヶ月前、チアキって奴が地球で俺を発見したからだ」

 「――やっぱ地球に戻れる方法あったんだ!」私は喜んで叫ぶ。

 「オイオイ、俺の入った穴が偶然にも地球だったが、月やら水の中、はたまた別の世界で猛獣の住みかとかだったらどうすんだよ?」


 私の野望は終わった……。


 「うぅ……やっぱチアキ……ってアイツ地球に戻れたんだ!!」


 何て奴だ……。


 脱、この世界は遠い……。


おお、そろそろ、チアキ様の無敵ぶりと、その訳がわかりそうな予感!


読んでいてどきどきしました。マグマ様、ありがとうございます。

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