第二十三話:チアキに言われて
第二十三話:チアキに言われて 2011年 06月 02日 (Thu) 22時 37分 44秒
唐突に現われた太陽と月の巫女は美しき少女、しかし得体の知れ無いチアキと言う男……彼に対しては姫の近くにいる邪魔者だから何時か姫を奪われてハンカチを噛み締める運命にしてやろうなどと甘ったるい考えしかなかった。
だが全て彼のが何桁倍も素晴らしかった、そして俺は甘ったれた男だと気付いた。 他の国に比べてメタな発言だが原作では一番酷い国だと言うありさまだった。
彼によって多くの隠れた奴らを見つける事ができた。 だが彼には回した資金がどのように使われたか、結果も紙面で見ただけと言う事を突きつけられただけではなく俺がやっていなかったが為に出た死者や被害者の数までもどうどうと見せられた。
横領されているなど、欠片も思わなかった。 古参の貴族。 表向き好事家。 国政に興味を示す野心家たち。 今思えば、裏のありまくりの輩ばかり。 こんな奴らを従えていた俺のせいでどれだけの人が死んだ、悲しんだ……俺は馬鹿だった。
俺が国王になった頃、何度か娘を連れて城に上ってきていた、下心見え見えの奴もいたっけな・・・。父親に似て、野心ありまくりの、客観的に自分を見れない、勘違い女ばかりだったっけ・・・。 彼女達がチアキ殿に会えばどうなるか……見て見たいものだ。
――そうそう、目の前で「サー・イェッサー!!」と叫んでいる美しくも逞しい女性達は奴らに似ている。 もしや本当にチアキ殿が……? マサカ……ナ?
チアキ殿の言った孤児達への教育という名の支援を始めた。お金も守ってくれる親もいない彼らを、罪人にしないための近道。読み・書き・算盤を教えて、積極的に雇い入れた商店や会社を優良企業とした。
採掘やら何やら、温泉やら……。
一番最初に出来た保養施設では、姫が熱心に温泉の入り方を説いていた。
「お湯をきれいに保つ為に、まずはじめに身体をざっと洗うんです!あ、お湯の中にタオルは入れちゃいけません。髪の毛はお湯に入らないように、こうあげて・・・。」
長い髪をかきあげて、痣のあるうなじを見せていた。
痣!?
「ぇっとシャラ様。コレはこの間、チアキの目の前で両胸と下半身の放送禁止部分に絆創膏3つ以外完全に裸でチアキを誘ったらデコピンで吹っ飛ばされた跡です」
絆創膏とは確か傷口に被せるアレであったな、アレを最低限な秘所3つ……やはりチアキ殿は男としてどうなのだろうか!? ハッキリ言ってチヒロが哀れに思えてきた。 そうそう、男はチアキ殿に教えてもらっているらしく、こちらで一生懸命女性に説明を続ける姫は、可愛らしかった。
「こまめに水分を取りながら、出たり入ったりするんです。」
「・・・あの、絶対服を脱がなきゃいけないのでしょうか?」
女達の一人が言った。女達に限らず、俺だとて、全部脱ぐのは心もとないと思うのだ、湯着すら着ないというのはな・・・。
「湯着は邪道です! お風呂に布を着て入るような物!!」
いや普段風呂に入らぬ町の者達には分からないのでは!? というかきっぱり言い切った・・・。何なんだその自信は。
自信満々で、気持ちいいんです!と言い切られると、そんなもんか、と思ってしまうのか、周りの女達も丸め込まれてしまうのがチヒロマジック。
「・・・ええ、この世界初なんですものね。それに、巫女様がこんなにおっしゃってくださるんですし、ここで私たちがその良さを広く説明できなくては、国を挙げて作ったこの設備が泣きますわ。皆様、まいりましょう!」
女達の一人が意を決したかのごとく立ち上がり、言った。そうだ。この国には、後がないのだ。彼らの今後がかかっているんだ。
「そうですよー。みんなではいれば、恥ずかしくなんかないですって!それに、温泉の有効成分、じかに肌から入ったほうが効きますよ!お肌すべすべまちがいなし!」
その勢いに合わせて、姫がのんきに言った。いそいそと、姫曰く「お風呂セット」を腕に抱え込んだ。
「と言うか風呂は全身を洗う物のだから普通に裸だろう?」
――確かにそうだな……
「っと言うか待て貴様!? いつのまにチアキ殿がいる!?」
「――」何も答えない……。ッハ!! チアキ殿に貴様と使ってしまった!?
その後、シャラは血塗れで発見された。
その数分後、チヒロは……
「ぷふー♪ やっぱお風呂の後はコーヒー牛乳だよね、ここでコーラは邪道だよ!!」
まず普通、コーラは飲まないのだと思うのだが?
姫らしくない、しかしどんな姫より目を引く存在。 それが、太陽と月の巫女・オオツキ・チヒロだった。
「――ぁ、また増えた……」
何がとは言わない。
最強です。