第10話:ケダモノよ、チアキに注意
――風の精霊は立派に消えて行った、まるで第2次世界大戦の人間魚雷のように……。
えっと、つまりは私を助ける為にチアキの拳を受けて全員延びちゃったようです。ついでにオウランは拳一つでノックアウトされた噛ませ犬でした。く、大魔神王め、惚れちゃうぜ☆
「あ?」ギョロ
ひぃん!! すみません!! もう睨まないで……。
「(――この少年……敵に回したら0,1秒も持たずに世界そのものが破壊できるのでは?)そそそそ、それで、カーシャ殿はどこの国が適任だと思われます? やはりここは、この500年ほど巫女姫を召還できていないわが国だと思うのですが、いかが?」
「――そもそも、コクロウ国は、姫の持つ精霊の適正から外れておりましょう。ただいまも見事に風を纏われた姫です。あきらかに風の恩恵を受けておられます。やはりここは、このシェンランで、力のコントロールを覚えられたほうがよろしいですわ。」
いやいや、チアキに教えてもらえるから良いかも知れんけど……ぁ、でもいつも頼ってたら殺されるだろうな~。
「そうかな? 今までの黒い太陽の巫女なら、せいぜい従わせてもひとつの精霊だけだったから、その言い分は通るけど、今回は、違うね。ねえ、チヒロ。君、風だけじゃないだろ? たしか火も扱えたんだよね?」
「えっと、私はチアキが保護者なのでチアキに聞いてください。」
「俺に丸投げするとは良い度胸だな? まぁ今回は許してやろう。別に貴様を助けたいわけじゃない、貴様の両親に借りがあるからだ。」
お、漢のツンデレでたぁーーーっ!! いや、チアキ、アンタが言ったらかっこよすぎだよ……。
「チヒロさま!」
カーシャが叫んだけど、不思議だったから聞いてみた。
オウランが原作と違ってボロボロのダックスフントに見えたが全く愛敬が出ないのはチアキと言う完全イレギュラーのせいだろうか? 寧ろこの世界の私はチアキのお陰で性格はかなり違う、膝でごろごろ大人がやってたらキモイの一言だ。例えどんな美男子だろうが今の私はクーデレでツンデレなチアキ派よ☆
まぁ、火の精霊のことは、くすくす笑いながら、オウランがあっさり、侍女から聞いた。と教えてくれた。さっきのろうそくの火、結構みんな、驚いていたもんね。
でも、それなら。と、名乗りを上げた国があった。
「火の精霊の恩恵を授かれるのなら、俺の国へ来いよ。火の制御は結構難しいから、その、俺がオシエテヤ_」
シェラの首にいつの間にか今にも締め付けそうな手があった。やはりチアキだった……。
「コイツの保護者はこの俺だ、保護者である俺がなぜ貴様のような男に保護対象を渡さなくばならない?」
シェラが完全に白目剥いて泡吹いてるよ……。
「――ふ、ふん。精霊のコントロール以外のことまで教えそうな事をしようとするからそんな目に遭うんだ。」
「――オウラン、お前も人の事を言えぬぞ……。」リシャール様が言った。
周りにいた人たちも、私もうんうんと頷く。
確かにあんたに言われたくない。
オウランは、ちっと舌打ちしてから、しばし考えていた。
そして、いかにも嫌そうに、いった。
「――まあ、最初は貴国に譲ってもいいよ。確かに火の精霊の制御はむずかしいし、何より……、チヒロ,今幾つだい?」
「16」
「誕生日は?」
「8月の15日。」
終戦記念日が私の生まれた日。つまりはチアキも同じ日。
「ハチガツね。ふーん、後二十日くらいで17か。ああ、心配しないでも、前の巫女が暦を教えてくれたからここでもちゃんと誕生日がわかるよ。後でここの暦も教えてあげる。――まあ、つまり、あと一年と二十日間ほど、君を本当の意味で味わえないって事だから、――最初に住む国が終の棲家になることもないし、ましてや、シャラ殿にチヒロが靡くとも思えない」
いやいや、アンタにも靡かないからね?
「あと、一年ほどで、姫巫女殿は成人するのか……」
――セイラン様が言った。
「では、初めはシャザクスで火の制御、次いで私の国はいかがでしょう。風と火を操れるならば、水も制御できるやもしれません」
――リシャール様が言った。
「風と火なら、木だってわからんぞ。俺のところはどうだ」
「兄上、何を教え込む気ですか。そもそも、兄上なら声だけで落とせそうなんで却下です。リシャール殿も憂いを秘めた瞳に物を言わせそうなんで却下。だいたい、年を考えてくださいな、チヒロはもうすぐ17。兄上は30歳!リシャール殿は28歳!アレクシス殿も28歳!対するチヒロは、若干17歳・・・」
マダ16デスガ、モシモシ?
しかもなんか、王様達が滅多切りにされてる感じが漂ってます。
って言うか私はデスヴォイスなチアキの声のが良いんだけど? 怖いけどね。
「まあ、シャラ殿だって25歳、僕が一番チヒロに似合いの年頃なんだよ」
そういって、オウランは笑った。なんか、黒いものがただ漏れの笑みだった。怖さのあまり息を呑む。
「慣れろ。チヒロ。俺はお前を諦めないことにしたんだ。お前は、面白いからな。いろいろと、オシエテヤル」
そう言って奴は。
私の後頭部を鷲掴むと、口付けしようとしたらチアキに床にめり込まされた。
「――い……一年経っ……た…ら、この……先も、全部。――俺が……こ…の手で……オシ……エ……がふ。」
この先“も”って何だよ!? 原作とは違ってディープなキッスはされてないけど!?
「ねぇチアキ、アンタは私と結婚したいって思わないの?」
この時、チアキと私を除いた全員の心が一緒になる。
なぜチアキなのかと。
「俺が貴様と? ふん、ならばさせてみろ? 奴らが貴様を欲し、惚れさせようとするように、貴様が俺にしてできたなら結婚してやろう。」
――ち、チアキかっこいいよ……。
「おっと、言い忘れてたがもうそろそろ地球に帰れる。だが貴様が俺を惚れさせなきゃ無しだな。」
――大魔神王はやっぱり大魔神王でした……。