全力で潰せるって、いい。
ドアを開けると、まあ予想通りというか何と言うか・・・、姉が居座っていた。想像出来すぎていたので、私はリアクションせず。なんだけど、
「で、殿下! スパイかも分からぬような女を、大事な書類があるこの部屋に・・・」
「ラークス。あのね、リーテは仮にも俺の婚約者だから。」
・・・・・・あ、あれ・・・?
気付いた。私は気付いた。そして横の無駄に姉を敵視しているザッキンも気付いたらしい。口が開いている、それはそれはもうポカンと。
いち。いつの間にか愛称になってる。何かあったのか?
に。かばった! 前まで傍観してるだけだったのに、かばった! 何かあったのか!?
さん。「婚約者」って言った! 「婚約者」! 認めなかったのに今までむしろ邪険に扱ってたのに近寄られるのも嫌そうだったのに最初は! ・・・何かあったのか!!?
「いいですよラヴェンツ様。虫けらの言うことなど、屁ではありませんわ。それにしてもラークス殿、シェイちゃんにそんなに持たせるだなんて気を遣うという言葉が貴方の辞書には無いのですね?」
おお、言った。屁ではないだなんて言ってるけど、色々と涙目になっていたのは誰ですか。何があったのか正直物凄く聞きたいし、興味津々なんだけど我慢する。分かったこと。復活すると口も元に戻るんだ。
まあ珍しく容赦なく全力を出して(しかも私たち二人で)良い相手が居るので私も参加しよう。
「本当、まず頭の中に辞書というものが存在しないんじゃない? 色々一から学ぶのに単語帳必要でしょう、私が小さい頃に使ってたのがあるけど、仕方ないからあげようか?」
ついでににっこり笑って上に書類全て重ねてやった。
崩れるかと思ったけど、耐えたみたいだ。筋肉がピクピクしている。
「あ、阿呆に貰うものなど何も無いわ・・・!」
凄い捨て台詞っぽい。負け犬っぽい。・・・何ていうか、歩き方が。
鍛えた人でもさすがに二倍は重かったのか。
部屋を出た後で、一応聞く。
「ねえ、ザッキン。どうしてそんなにお姉ちゃんが嫌なの?」
・・・・・・・・・。も、もしかして。
「お姉ちゃんに・・報われぬ恋をしているのか・・・。」
「違うわ阿呆!」
うんうん。否定しなきゃいけないよね。だって自分の主の婚約者だしね。姉の美貌を見て揺らがない方がむしろ珍しいよ。
「そっか・・・。辛いんだね、うん。でもごめん。私はお姉ちゃんの気持ち優先だから・・・」
「お前の耳は飾りなのか!?」
「駄目だなザッキン。それ、定番だから。」
嫌味として。
一つ。
ザッキンでも姉に恋をした様です。
むしろザッキンの癖に、
違います。