世の中知らない事の方が多い。 後編
久し振りの更新ですー。
「【と、いう訳じゃ。】」
深刻なムードは一体何処に、老婆はけらけら笑って手を叩いた。
「【え、えっと・・・? あの、今の結構重い話じゃありませんでしたっけ・・・?】」
「【重いのう。しかし、昔の話じゃ。昔、の。今現在愚王達は死に、残ったのはラウディの血をひいているという自覚のある賢い王のみ。いつまでも昔の事をズルッズル引きずってたら切りが無い。何処かで区切らにゃ。】」
ズルッズルがやたらリアルな音だった。どうやって出したんだ、オイ。一瞬床を這って来る化け物の幻覚が見えたぞ。
何処かの尊敬するに微塵も値しないヘイカについての評価は聞き流す事にした。
おそらく、何処か違う王もしくはこの人の勘違いだろうそうに違いない。
「【ラウディの、血をひいているというのは本当ですか・・?】」
「【本当じゃよ。お前さんも会っただろう、あの猫目の小僧に。遠いが一応親戚だよ。】」
うわああああああ。
やっぱり王ってヘイカの事か! さっきの推測は後者だな! 誤って「賢い」とか認識しちゃったんだなきっと!
ていうか「親戚」って。「親戚」って・・・!
「【・・消えたい・・・・】」
そこまで言うか!!? と文句を言う声が聞こえてくるようだ。うわあ~、無いわー。本当無いわああ。本気で凹む。この急激なテンションの落下を誰かどうにかしてくれ。
「【贄から何があったのか知らんが王妃にまで上り詰め生涯を終えた子が居てのー。まあ、気が強いけど美しく優しい子だったから、王に何かやらかしたんじゃろうな。その子の血が、この国の王族に混ざっているからの。立派なラウディじゃよ。】」
「【じゃ、じゃあ、今のヘイカは何で自分の能力に気付いて・・・て、あ。そっか。あの長髪猫目、貴女に昔あった事があるんですね。】」
「【昔鼻垂らしながら泣いて迷っとったのー。基本的に何かに惹かれるのか、此処へ来るのはラウディの者だけのはずなんじゃ。】」
「【なるほどー。で、鼻垂らしながら泣いてたんですね?】」
良い事を聞いた。後でネタに使おう。決定。
「【今日は生き残りの子孫・・・お前に会えて楽しかった。もうラウディは王族として守られてきた猫目だけかと思っとったわい。】」
「【こちらも良い経験となりました。ありがとうございます。それで、その、私は間違いなくラウディだと思うのですが、この茶髪は・・・。】」
「【ふうむ。恐らく、揺れなかったラウディの血脈が揺れ始めた証拠じゃろうな。いい事だよ。
ラウディの能力も、血の子孫の特徴も、もう不要なものだ。】」
願望を言えば美形だという点は似ていたかったです。本当に。切実に。
「【お前さん達の代の子孫からは、能力を受け継がない子供が出てくるだろう。お前さん、好いてる者は居るかい?】」
・・・あー・・・。忘れてた・・・。
ネア、今ばっちし怪我人だよね(姉によって)。思い出したら、髪を弄って貰いたくなる。
ラウディの血脈が揺れ始めた、証拠の。
じいちゃん似の茶髪を。
ふわりと撫でて貰いたい。
「【では、私はもう戻ります。】」
「【気をつけて行くんだよ。】」
「【お婆さんも、一人暮らし? お気をつけて。】」
踵を返し、わたしたちの「いえ」を出た。
「【お婆さん!】」
おっと、聞くのを忘れていた。知っていなきゃ不便だし、些か失礼だもんね。
「【あの、お名前は!? どうして一人だけ此処に居るんですか!?】」
「【秘密。】」
・・・・・。
え、ええええええ。即答されたよ・・・。
「【ええっと、じゃあ、名前だけでも・・・】」
「【仕方ないのう。お前さん、案外我が侭だな。】」
あれ? 私我が侭になるのこの場合? 納得いかないけど取りあえずすみませんこうなったら何か意地でも知りたくなるんですけど。
「【リドシー、じゃよ。】」
「【古語ですね。意味は何でしたっけ・・・えとー・・・】」
「【どうでもいいから早よ行きなさい。猫目の小僧と、お前さんの姉さんにも宜しくな。】」
「【あ、はい。では、また。】」
足で元来た道を辿る。
暗いし不気味だけれど、来た時に比べたら全く怖くなかった。
(戻ったら真っ直ぐネアの所へ行こう。)
(リドシーの意味・・・なんだっけ・・・)
再び一人になった老婆は、広間の椅子に座って目を閉じた。
口元だけで笑う。
(ああ、そうだ。確か意味は、)
「【私の役目はこれで終わりかな・・・? やれやれ、長かったのぅ。】」
息を吐き、体の力を抜いて、
(『伝達者』だ・・・・・)
そのまま起き上がる事は無かった。
「シェイちゃんんんんっ! もうっ、何処行ってたの!? もう夕食の時間よ!?」
「ぅぷっ。ごごごごめんなさい。わああっ、拳に着いた血は何!?」
「あ・・、カスが私のシェイちゃんを隠したのかと思って一発殴ってきちゃった・・・☆」
「何そのお茶目な感じ!? カスって誰!? まさかネアじゃないよねっ!?」
「さ、夕食よー?」
「お姉ちゃんんんん!!?」
シリアス無理矢理終了。主人公喋らすと自然とコメディになる。何故。
期末という名の大敵を倒し終わりました。