姉の怒りに比べたら修羅も霞む。
本編で凄く扱いの酷いヘイカの影での頑張り。
今更ですが激怒したままのリーテの政治的攻撃に苦労してましたよ。
自業自得ですね。
「ねえ、【ラウディの生き残り】とかだと一体どうなる訳? そもそもそれって何? どうして私は誘拐されたの?」
ヘイカと一切接触していない日数、今日で五日目。本当に来ない事に驚いた。
ネアのやたら多いスキンシップのタイミングも分かるようになってきたし、それに対する防御も身に着けた。・・だって慣れないんだもの! そう簡単にやられてたら心臓が持たなくて倒れるわいボケ!
よく分からないけれど、見た目とイメージに反して予想外にベッタリさんだったネアは、今も私の茶髪を弄くっている。・・何でもないように書いてるけど、ドッキドキだからね! もうやだ泣きそうだ!
・・・そして一時すっかり忘れていた事を今更思い出した私は、ネアに聞いたのだ。
それに対するネアの答え。
「知らん。」
「・・・・。」
んな馬鹿な! 三文字! 三文字で終わったよ!
「嘘吐けぇい! せめて誘拐理由だけでも答えろ!」
「いや、本当に知らない。普段と違って真剣な陛下に「国王」として命令されたんだ。何も聞かず、ただ、ノウェル国の城にいる絶世の美女を攫って来いと。・・まあ渡された地図はアカシェの部屋のものだったがな。つまりはそれだけ重要だという事。話したくても聞きたくても俺は王族ではないからそういった秘密を聞くことは出来ないんだよ。」
・・お、重い事情・・。
そう考えた自分の感想の阿呆さに気付くのはもう少し後だ。
「国王として命令する程重要、って一体何? 他国の城に侵入して誘拐するのも厭わないという程でしょう?」
それに今私は不覚にもノウェル国次期王妃(仮。婚約だから)のたった一人の身内なのだ。
「知らないな。陛下に吐かせ・・聞くか。」
・・今なんだか一瞬ネアから姉と同じ匂いがした。聞いてはいけない単語を聞いた気がした。
「・・・そうだね。」
あと二日ほど経ったらそうするか。姉を狙わなくても良いようだから、もうその理由を聞いて急いで知らせる必要はないだろう。
そうしてまた私は暇つぶしの本に視線を下ろし、ネアの手が再び私の髪を梳い始めた時。
ドンッッ
「!」
「わっ!?」
一瞬の大きな響く・・何かが激突したような音がした後。
・・・・城が揺れた。
え? え? 揺れるものなの!? そう簡単に!?
「伏せろアカシェ!」
「は、はいっ。」
庇う様にネアが被さってくる。数秒待つがそれ以上は何もなく、部屋の外が騒がしくなるだけだった。
「地震・・ではないのか。何かあったな。俺は行ってくる。少しここで待ってろ、アカシェ。」
「ちょ、待ってよ! 私も行くに決まってるでしょ! 足手まといだけど!」
「駄目だ! 何があったかさえ分からないんだ、危険になるかもしれないだろ!」
「それはネアも同じでしょ! 大体、いいの!? 私はノウェルの城に一人で居るときネアに攫われたんだからね!? 何があるか分からないっていうならこの部屋も同じでしょ、一人で居るほうが危ないってば!」
「・・っ、分かった。」
「、わっ」
ぐい、と片手で抱えられた。・・私そんなに軽くなかったんだけど。特に此処に来てからはネアが無駄に美味しいお菓子ばかり持ってくるし・・。あああ、太ってる絶対! しまった!
「しがみ付いてろ。」
「ら、ラジャー!」
言われた通り自分の力で落ちない様にネアの首にしがみ付き、膝はネアの左腕が支えてくれた。
「行くぞ。」
「え、あっ、ちょっ・・・・・・早いぃぃぃっ!」
そして走り出したのだ。・・・全力疾走で。
城内を走っていると奇妙な目で見られたがお構いなしに騒ぎの中心であるらしい城門へと向かった。・・・ネアが。
揺れに酔いそうになるので、目を瞑ったまま目的地に着くまでじっと大人しくしていた。
しかしその城門――――しかも正門だった――――へ着いた時、私は唖然としたのだ。
え・・・・? なにこれ。何があったの・・・?
でかい。かなり大きい大きい城門。此処がこの城の入り口であると存在を指し示すように高い塀に連なってあった門が――――――
・・・壊れてた。正確には壊れて、外れて、倒れてた。地面に。
「ネア・・・これは夢だよねそうだよねそうに決まってるよね。」
幻覚だ。幻覚が見える。見てはいけないものが見える。ここにあるはずのないものが見える。
「おい・・っ、女だぞ!?」
「どういう事だ!? ただの侵入者か!?」
「見ろよっ・・! 見てみろよっ、あの女・・・!」
いや、正確には「人」である。居るはずのない人である。
誰もが見惚れるその美貌で人々の視線を集めたまま、さらりと金髪を靡かせ倒れた門の上に仁王立ちした絶世の美女は言った。
「この私のシェイちゃんを攫っておいて・・・てめぇら全員命は無いと思え!!!!!」
おおおおおお
「お姉ぇぇちゃんんんん!!?」
見誤った。
姉が大人しく私の帰りを待っているはずなど、無かったのだ。
・・・あの口調は、本気で怒った時の証拠。姉の怒りは誰よりも怖いのを私は知っている。
馬鹿でかい城門は、『BLEASH』ソウル・ソサエティ(漢字出て来なかった・・)編で一護がじ丹坊(「じ」の漢字が出てこない!)と戦った時の瀞霊門を思い浮かべて下さい、大きさは。
デザインはそれのちょっと豪華な西洋風の横開きの門です。
・・・あれ? 分りづらい? この例え。