口は災いか幸か自爆の元か。
・・・・・・えーーーーーっと?
唇にあった熱はやがてゆっくりと離れていった。それと同時にネアの瞳も開かれるのを見る。
ネアは誤解してないだろうか。というかあのタイミングは絶対に誤解してるだろう。何故あそこで言葉を遮る。人の話は最後まで聞きなさいと言われなかったか。
「ネア。あの、ね。ヘイカとは」
「いい。聞きたくない。」
いや何で。駄々っ子か。
「だから、ヘイカとはっ」
「五月蝿い。またするぞ、キス。」
顔に再び熱が集まる。え、さっきのキスで間違いなかったの? ああ、そう。妄想とかじゃないんだ、私の。幻覚でもなくて。
「ちょっ、何!? 何事!? あれキスだったのやっぱり!?」
「・・・。お前は、それ以外になんだと言うんだ。」
「いや、だからねっ!? そうなの!? 現実!? だってまさか自分の身に起こるものだとは思ってないじゃない!」
あああああああああ・・・。自分が何を喋っているのか分からなくなるのはどうなのだろう。
ぶっ飛んでないだろうか。色々と。順序。
やめて、時間が経てば経つほど恥ずかしい!
「・・・って、そうじゃなくてっ。ネア本当に聞いてってば。ヘイカとはっ―――――――――ひっ!」
また遮られた。強制的に。考えるな考えるな私! セカンドキスだなこれとか考えるな説明も何も出来なくなるから!
・・・・・な、長い。長いですちょっとで良いので離して下さいっ。
願いが通じたのかゆっくりと再び離れていく。・・・。ん?
「な、舐めた・・・?」
「何のことだ。」
「いや今ペロリと。離れ際に。」
「知らんな。それよりも「ひ」とは何だ。」
「反射的に・・。え? 舐めたよね? 舐めたの?」
「・・・アカシェ。舐めた舐めた連呼するな。」
「すみません。」
あれ主従関係? 違うよね違うよ。謝るな私。でもね。毒舌っていうのは口から言葉が発せられて成り立つもので、口を遮られたら私は何の戦闘能力も失うのよ。殆どゼロになるのよ。
「ちょっとネア最後まで聞いて。ヘイカとはね、」
おっと。
学ぶ。二度もあればさすがに学ぶ。近くに来たネアとの間に手を添えて一先ずのガード。取り合えず今は喋らせて。
「・・・・・。」
「何その顔。だから最後まで聞いてって。別にヘ―――――――――、っ!、」
一文字! 一文字だったよ今! 一瞬で手を掴まれて私の僅かな間の抵抗終了。
恥ずかしいよ死ぬほど恥ずかしいけど。今の私の中では 説明>キス なのだ。すまんネア。優先順位があるから今それはやめてくれ。
さっきは舐めたと思ったら今度は甘噛みしてきた。犬? ねえ犬なのこの人!?
「ちょっ、だからっ!・・」
「・・・・・。」
「、待ってって・・・」
「・・・・・。」
「――――――――っ、このっ、」
・・・腹立ってきた。ネアでもここまで話を聞いてくれないと爆発する。仕方ない。
「やめなさいって言ってんでしょっ!」
おお、効いた、鳩尾パンチ。ちなみに姉直伝。役に立つなぁ、この国に来てからよく姉の教えは。
でもかなり痛いと聞いていた事を思い出し罪悪感。しまった、ヘイカにやっておけば良かった。
「・・あ。ごめん、いやでも今のはネアが悪いよね。」
「・・・っ、・・すまん。」
ああ痛そう。本当にごめん。力加減を間違えた。思いっきりやって良いのは嫌な奴と敵限定だった。仮にも好きな相手にるものでは無かっただろうかと反省する。
「あのねネア。ヘイカには嫌がらせでキスされそうになっただけで・・それも首筋に。その前にネアが来たから本当に何も無かったんだよ。」
やっと言えた。
「・・・そうなのか?」
「そうだよ。大体私ヘイカなんかにキスされる位ならこの城から飛び降りた方がまだマシだから。」
つまりは死んだほうがマシだと。
それを聞いたネアはほっと息を吐いた。――――――お腹を押さえたまま。
「そう、か。良かった・・・。すまないアカシェ。・・結局俺は陛下と同じ事をして・・、」
「いいよ別に。好きな人にされるのと大嫌いな奴にされるのとでは天と地の差でしょう。」
「・・・・・・。」
黙ったネアを不審に思う。こちらを凝視してる。何か私は変な事を口走っただろうか。ただ本音を言っただけのはずなのだけれど。別に、いい。好きな人と大嫌いな奴では天と地の差・・・、だ・・・・・と ?
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・い、いや。ななななんでもないでっしゅ。わすっ、忘れてくださいいいいいぃぃ。」
「・・・噛んでるぞ。」
自爆、自爆自爆。自爆、した・・・・。
なんて事を口走ったんだ私・・いやでも「別にいい」の理由を正直に言ったまでで・・。
それが駄目なんじゃないかと気付いたのはその直後。
どうやら私は相当の阿呆らしい。
「・・・そうか。・・では、互いに同じ気持ちなら『別にいい』よな、キスしても。」
「・・・・は、う? うん? そ、そうだ、ね・・・・?」
え? 何が?
「陛下も一週間は来られないようだから丁度良い。」
えとだから何が?
「取りあえず鳩尾はやめて欲しい、アカシェ。」
「あ、はい・・・?」
キャパオーバーです。
誰かナレーターを、状況説明を!
・・・アカシェから事の全貌を聞いたネアにより翌日、城に陛下の悲鳴が響くのはまた別の話。
お姉ちゃんに知られたら漏れ無くネアの存在を消されそうです。
大砲はやめて、大砲は。
いちゃつき?
どうだろうキャラ崩壊。もういいや、うん。