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賽を投げるタイミングを教えてくれ。 後編

さて。

話は元に戻り少しだけ遡る。

「へええええ。これがドレス。ドレスドレス。・・・初めて見たわあ。」

目の前には淡い青の・・・水色にも近いだろうか、文字通りドレス。本物。うわあ、高そう。

「そうですよ! どうやら、リアテーナ様と同じ生地で作られているようです。素敵です。高級品ですよ、アカシェ様!」

ひい。やめてフィノル。破いたらと思うと恐ろしい。

主役と同じ生地らしい。いいの? まず私が出る事からして。・・・いや、そんな事を言っても婚約発表は一般市民の方々には今朝一番で知らされているし、貴族の方々には今夜パーティで正式に発表、らしい。知らせだけならもう伝わっているはずなんだけど。

「でもねフィノル聞いて。私はね、礼儀作法なんて習ったことも無いし、基本の事でさえ知らないのよ! ましてや言葉遣い。ああこれがきっと一番駄目だ。敬語? なにそれザマス? どうしよどうしよ。」

姉の婚約発表で、妹の私が恥晒す訳にはいかないでしょう!

「大丈夫です、アカシェ様。」

「フィノル・・・・」

「取り合えずは優雅に微笑み、頭をぺこりと下げて去っていけばいいのですから!」

「・・・・・・、ふ、ふうん?」

去っていいの? そこ。まあいいや。

「でも一応貴族の方々のお顔と名前、重要な方々だけでも覚えておいた方がいいですね。」

「え・・・、な、何人位いるの?」

「ざっと30人は覚えておいた方がいいです。」

「・・・・・・それ基本?」

「はい、基本です。」

ううむ。言ってはいけない気がするが何故私が会ったことも無い相手の顔と名前を覚えなければいけないんだ。一般、私は一般市民ですよー。

「仕方ない。やりますか。」

「はい昼までにお願いします。それからはお着替えがありますので。」

あああ。もうあと少ししかありませんよフィノルちゃん。実は鬼ですか、鬼畜ですか。

そんな訳で私はひたすら人の名前を呪文のように唱え続けていたのである。




夕方になった。ドレスは直前に着るので、その為の何か薄い生地―――だけを羽織って(顔も久し振りに化粧されて、髪も結われてしまった。鏡の中の平凡な自分より姉を見たい。絶対に目の保養になるに違いない。)私は大人しく椅子に腰掛けていた。だって動くと怒られる、フィノルに。天使なだけに何処か迫力があるのだ。

日が暮れて空が赤くなった。ああ、後もう少しで姉はラウディの家を出る。二人で一緒に生きてきたけれど、姉は出て、もう一人の誰かと生きていくのだ。そして私は一人となるのか。

寂しく感じるのは、仕方ない。私の姉が誰かのものになる。生まれた時からは一緒でも、きっと死ぬ時は別々なのだろう。・・・殿下ならきっと大丈夫。姉の心配は要らない。


感傷的になってしまった。さあ、今日は笑顔で心からのおめでとうを言おう。(まだ婚約段階だけれど)


先に言っておく。この時はテンションが変だったのである。


「おーめーでーとーおぉぉぉぉぉおおお!!!」




叫んだ。窓から外に向かって。


で。


落、ち、




「る、ッ!!?」



ひいいいいいいい。ここ、ここ高い! めっちゃ高いよそらもう高いよ! 5階だよここ、城の!

ガッとお腹に腕を回されて何とか落下は避けられた。ふう。姉の目出度いはずの日が妹の命日だなんて、洒落にならない。間一髪。

「あ、ありがとー。フィノ、ル・・・?」

良く見ればあの天使の腕では無い。こんながっちりしていない。てゆかもっと肌色白で肌理細やかな美しいほっそりとした腕で・・・





「・・・・・・・・・誰?」




知らない人が居た。無表情ではあるけど、目に感情が無い訳ではない人。見たことあったかな。・・・世間様の基準よりは高いお顔をしてらっしゃいますね! 畜生!

朱と、所々に金の混ざった髪が風に靡く。

「え、えと?」

「お前がラウディ家の娘、リアテーナか。」

何で姉の名前? 姉に何の用? いやそれよりも。


違います、

そう否定する前に痛みを感じ意識は沈んだ。

何故美女と有名すぎる姉と私を間違える。阿呆かこいつ。(断じて私は普通だ。)

ああ、でも。









こいつが間違えてくれて良かった。

ちゃんとパーティ無事に終えなよ、お姉ちゃん。


主人公がネガティブにならぬ限りこの話はシリアスになりません(断言)。


題名通り。動き出す始まり、と取って下さって結構です。

賽は投げられます。たぶん

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