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第7話 知らないままでいたくない

第 7 話 知らないままでいたくない



まだ、心臓の鼓動が少し早い。


戦いの音。

死を感じた恐怖。

血まみれの蒼真…。


怖い。

だけど、私は2人に守ってもらっているのに

何も知らずにいる。

橘さんは明日、改めると話していたけど…。


このまま私は守られてるだけでいいのかな。

あんなに必死に蓮も守ってくれた。


—私、このままじゃダメだ。


朝になったら天音さんと話をしよう。

1番偉い人だもん、何か教えてくれるはずだよね。


そう決意した途端、急激な眠気を感じた。

長い夜の緊張が解けた瞬間だった。



—結誓連盟 中庭


カチッ。ぼぉ…。ふぅー。と一服つく。


襲撃に出遅れた自分が情けない。

俺が気づいた時には蒼真は戦っていた。

ひとりで陽葵の部屋から敵を遠ざけようと。


「あいつの守り方って、時々尋常じゃねぇんだよな」

ぽつりと呟くと同時に「あー不良がいる」と声が聞こえた。

聞きなれた嫌味な声、奏だ。


「まだ吸ってたんすか」

「辞めれねぇんだよ。ほっとけ」

少しの沈黙。こいつ、何しに来たんだ?と思っていると奏が口を開いた。


「蒼真さん、なんであんなに無茶したんすか?あんな怪我してんの、初めて見ましたよ」

同感だ。あいつの戦い方じゃなかった。

あいつはバカな所はあるけど

あんな人数、撤退するか何か策を練るはずだ。

それなのに、俺にも声をかけず1人で戦っていた。


「分かんねぇよ。俺もあんな蒼真の戦い方、初めて見たよ。気迫っつーか…守り抜くって感じだったな…」

タバコをひとすいする。

1人にして欲しいと思いながらも、黒影の件が落ち着くまでは奏と上手くやっていく必要がある。

が、どうもコイツとは馬が合わない。


「蓮さんにも分からないなら仕方ないですよね。ぁ、そうだ、蓮さんその本性、陽葵様に見せてます?」

「は?本性ってなんだよ」

「タバコとか…」

「タバコは知ってるぞ」

「元ヤン」 

「おう、奏。そこに正座しやがれ、また教育してやるぞ」

「だからそういう素の黒瀬蓮ってことっすよ。見てるとなーんか気取ってて、蒼真さんは自然に陽葵様と接してんのに。なんでそんなに距離取るんです?」


なんでそんなに距離を取る?

当たり前じゃないか、俺は執事だ。

陽葵様とは主従関係だ。

素の自分を見せないなんて当然だ。

蒼真は特例すぎるだけだ。


「自然な方がいいっすよ。じゃないと、取られっちまいますよ」


取られる?

誰に、何を?


本当に何しに来たんだか、そのまま奏は屋敷内へ戻って行った。

ああ…タバコが燃え尽きる。

考え事するにはコレが1番なのに、勿体ない。

最後のひと吸いを終えると、俺は執事の黒瀬蓮の顔に戻る。


「なぁ」

突然の声に思わず身体がビクっと動いた。

「奏のやつ、めっちゃ勘違いだよな」

蒼真だ。

何でコイツ、こんな怪我して平気で歩き回ってんだ?


「居たのかよ。話聞いてたのか?」

「素の黒瀬蓮の辺りから。で、取られるって陽葵に俺が先に告るって意味なwww」

くっくっくっと蒼真が笑う。


「はぁ??なんで執事が主と付き合えんだよ?」

「だろ?だから、勘違い」

でもなぜか、蒼真は悲しそうな顔をした。

不思議に思いながらも蓮は口を開いた。


「まぁお前は昔から誰に対しても素の久遠蒼真だもんな」

「そういう事。でさ…」

「なんだよ、まだ何か…」

ふと、蒼真の顔を見ると真っ青だ。


「動きすぎたみたいで、貧血おこした…助けてくれ…」


当たり前すぎて、言葉も出なかった。

本当にコイツはバカなのか、ダメ人間なのか。


「頼れよ、次は。」

そう言って肩を貸してやる。

「いや、次は俺が前線だ。お前ばっかじゃ、陽葵様に俺が弱いと思われちまう」

皮肉も込めて言うと蒼真はおう。と小さく呟いた。


もう、夜は空けようとしていた。








「うーん」

襲撃から数日がたち私は自分のお屋敷に戻っていた。

でも、悩みが1つ。


天音さんと話す事が出来なかった。

襲撃事件以降、天音さんだけでなく橘さんも忙しそうに走り回っていた。


お屋敷の窓の修理も終わっているし

バタバタ騒がしい連盟にいるより、慣れて居る場所の方が安心ではないかとの配慮でもあったけど…。


やっぱり知らないままでいるのはモヤモヤする。


コンコンっと部屋にノックの音が響く。


「陽葵様、お茶をお持ちしました」

蓮だ。スマートな身のこなしであの襲撃事件の時の目の鋭さとは違う。

別人のように優しい目をしている。


蓮なら…なにか教えてくれるかも…。


「ねぇ、蓮っ」

「どうなさいました?」

「どうして、私は狙われているの?」


ストレートに聞いてみた。

蓮は優しく微笑んだまま表情を崩さない。


「…実は私もまだ分かりません。連盟の操作網でも中々、敵の情報が掴めないと報告がありました。不安ではあると思いますが、もう少しお待ちください」

優しさからの説明のような気もするし、嘘のようにも聞こえる説明。

当たり障りなく話しているような気がして、私は少し身を乗り出して話そうとした。

その時、お茶のカップが倒れかけ、中身が流れ出しそうになる。

暑いと反応したはずなのに

「あ…つくない…?」

カップは倒れておらず、中身もそのまま…。


「危ないぞ、火傷するぞー」

後ろから蒼真の声が聞こえた。

今日は病院に行くと聞いていたけど、戻ったみたいだ。


「お前、何その早業…」

「陽葵の為なら、俺の動きは神速をこえる」

ふふんっと得意そうにしている蒼真。

倒れかけたカップを支えたんだ、一瞬で。

でも、いてて…と肩を擦っている。

まだ怪我が治りきっていないんだ…。


そんな早業の出来る人に守ってもらえるだけで

私は幸せなのに、この人達を私も支えようなんて、おかしな話なのかもしれない…。


「蓮の言ってることは本当だよ。コイツ嘘つけないから。ぁクッキーもらうね」

ひょいっとクッキーを1枚取って蒼真は言う。


「陽葵は俺が守る。いや、俺達が、守る」


「だからお前は笑ってろ」


「それが俺らの力になるんだ」


真っ直ぐな力強い瞳。



「陽葵様、私達は陽葵様を守ると決めています」


「必ずお守りします」


「だから…笑ってください」


蓮も真っ直ぐで強い瞳。



どうして狙われているとか

もやもや考えても仕方ないのかかもしれない。


2人の言う通りに笑っていよう。


「はいっ!」


それが、今の私に出来ることだから。

でも…守られるだけじゃ、終わりたくない。




—守る者と守られる者。

お互いの心が通う時、約束は契約になる。




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