第3話 静かな防衛線
第 3 話
昨夜の出来事が、まだ頭から離れない。
あの音。
あの空気。
そして――
「陽葵様は、狙われています」
蓮の言葉が、何度も繰り返される。
怖くてあまり眠る事が出来なかった。
重たい体を動かしリビングへ向かうと、そこに連が居ない。
変わりに蒼真がキッチンから朝食を運んでいる。
「陽葵、おはよ」
「蓮は…?」
「今日さ、朝から用があるから朝メシ俺ね。まぁ簡単なのだけど」
と、昨夜の事など何事もなかった様に話す蒼真。
運んでくれた朝食を見ると蓮と同じくバランスの良い美味しそうな朝食が並ぶ。
「これ、蒼真が作ったの?」
「そうだぜー。あ、料理出来ないと思ってたな?これでも、訓練所で料理の成績良かったんだからなー」
と私が言おうとした事をそのまま言われてしまった。
椅子へ座り、蒼真の作ってくれた朝食を食べる。
とても優しい味がする。
蒼真に包み込まれる様な気がして安心した。
—結誓連盟 会議室
「状況は?」
橘さんの声が響く。
「あまり良くない。尾行者と監視者を確認しました」」
昨夜の襲撃後、屋敷まで尾行する気配があった。
だが、攻撃をしてくる様子は見られなかった為、蒼真と交代でこちらも監視をしていた。
「屋敷の周りに部下の配置願う」
守りをこちらも強化する必要がある。
陽葵様は連盟の最重要保護対象だ。
承認は簡単だろう。
「分かった。早急に手配する。藤堂、頼む」
「承知しました」
藤堂はスっと立ち上がり、会議室から退室していく。
本当にあいつは仕事が早くて助かる。
今日の午後には配置されるだろう。
2人でも出来るが…寝不足で襲撃を受けるのはさけなければ。
必ず、陽葵様を守り抜く。
—一ノ瀬家 邸内
静かだ。
だが、物陰から見ている奴がいる。
殺気を殺し切れていないところを見るに駒を寄越しているだけのようだ。
敵の目的もまだ不明だ。
こちらも大きくは動かなくていい。
まっ、人員の配置は蓮が上手くやるだろ。
問題は…俺は陽葵に視線を向けた。
「ん?」
本を読んでいた陽葵が気づく。
昨夜の事で相当不安だろう。
だが、それをあまり見せないようにしている。
「大丈夫。俺らがいるから」
大きく見開く瞳。
少し驚いている。でも直ぐにいつもの陽葵の優しい眼差しになる。
「うん」
そんな話をしていると蓮の車が戻って来るのが見えた。
連盟との話はすぐにまとまったみたいだ。
「あ、蓮が帰って来たね」
陽葵も気がつく。どこいってたのかなーといつもの陽葵だ。
まだ不安はあるようだけど、少し落ち着いたみたいだ。
「申し訳ございません、陽葵様。蒼真が失礼な事してませんか?」
「お前が俺に失礼だろ」
「大丈夫。朝ごはんも美味しかったよ」
「それは良かった」
蓮が微笑むと陽葵も微笑んだ。
そして、物陰の影の気配が蓮が戻ると同時に消えていた。
あっちも作戦会議かね…。
薄暗い屋敷の中。
報告がなされていた。
「対象者の護衛につく者達は連盟の中でも精鋭の2名です」
「コチラの襲撃、監視に柔軟に対応しています」
「発動は見られませんでした」
「時が来るまで、監視を続けろ」
手下たちが部屋から出ていく。
部屋が静寂となる。
「お前たちに守り抜けるかな…ふっ」
その声は、どこか楽しんでいるようだった。




