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第1話 日常の始まり-静かな違和感-

第 1 話

日常の始まり-静かな違和感-


「おはようございます、陽葵さん」

目を覚まし、朝食を食べにリビングへ向かうと、

今日もしっかりネクタイをしめた黒瀬さんが出迎えてくれる。


久遠さんと黒瀬さんが執事として来てくれて1週間。

毎朝、バランスの良い朝食と美味しいコーヒーを頂くのがルーティンになった。


「申し訳ございません、今朝も久遠が…」

「大丈夫ですよ」


なぜ黒瀬さんが謝るのか。

初対面からなんだか緩い久遠さん。

この1週間、私よりも先に起きていた事が実はない。

別に私は気にしてないんだけど、黒瀬さんはやっぱり気になるらしい。


朝食を食べ終え、食後のコーヒーを飲んでいると

「おはよぉーございます」とまだ寝惚けた顔の久遠さんがやってくる。

「遅いぞ、何時だと思っているんだ」

「ぇ、8時は早朝だろ?」

と、これもいつものやり取り。


「陽葵様、今日はよろしければ一緒に買い物に行きませんか?」と黒瀬さん。

「あ…でも…」

私は幼少の頃から両親に外出は極力避けるようにと言われて育てられた。

街へ出掛けることは滅多にしないこと。

それも黒瀬さんも知っているはずなんだけど…。

「いいじゃん、行きましょ、陽葵さん」と久遠さんにも誘われる。

1人の外出じゃないし、執事の2人が居るんだし外出も問題ないよね?

「そうですね、行きたいです」

「決まり!お、このパン美味そう」

「蒼真、お前色々といい加減にしとけよ?」

2人のそんなやり取りが面白くて私はクスッと笑った。

笑う私を見て、2人も微笑む。





「へぇ〜食べ物ってこうやって売ってるんですね」

「陽葵さん、本当に買い物した事ないんだ…」

お買い物と聞いていたので、洋服等の買い物と思っていたけど、車に乗せられ着いた先はスーパーマーケットと呼ばれるお店。

不思議そうな顔でお店を眺めている私に黒瀬さんが

「陽葵様のお好きな食べ物はご両親から伺ってるのですが、ご自分で選ぶと食事もさらに良いものになるかと思いましたのでお連れしました」と連れてきてくれた理由を教えてくれる。


黒瀬さんの作ってくれる食事は本当に美味しいし、何も不満はないんだけど…と思いながらお店に入ると、私の世界は一変した。

小さな子供やお年寄り、様々な年齢の方が居て好きなように商品を選んでいる。

そして、見た事のないお菓子や飲み物が並ぶ。

「何を選んでもいいんですか?」

「ええ、ご自分の好きな物をお取りになって久遠の方へ持たせてください」と私に告げると

「蒼真、俺は普段の食材を見てくるから、陽葵様を頼むぞ」

「へーい」とやる気のない返事をする久遠さん。

本当にいつも緩いなぁ…でも、時々鋭い目つきになる時があるのはなんでだろう?

まったく…と呟きながら黒瀬さんは食材を選びに行く。


「陽葵さん、甘い物は好きでしたっけ?」

久遠さんが優しい眼差しで私の目を覗き込む。

「甘い物、好きです」

「俺も甘党なんで、スイーツでも見ますか」とスイーツ売り場へ案内してくれる。

歩き方、案内の仕方がスマートだ。

いつもの緩さが消えて、黒瀬さんと同じ雰囲気に包まれる執事さん。


「あれ?」

スイーツ売り場まで歩いている途中で黒瀬さんをみつける。

でも、なんだかソワソワしてる様な気がする。

「陽葵さん、どうかした…蓮?」

蒼真さんもいつもと違う様子の黒瀬さんに気がつく。

その時…黒瀬さんの腕が動き、マヨネーズを1本、2本…止まらない。

一体、何本のマヨネーズをカゴへ入れるのか。

「マジか…蓮…」と驚く久遠さん。

その声が聞こえたのかビクッと黒瀬さんの動きが止まり、こちらに気づく。

「いや、これは…マヨネーズは万能なので!あると助かるんです!」とものすごい早口で苦しそうな言い訳を話し出す。

「だとしてもそんないらねーよ、お前マヨラーかよ」と呆れ顔の久遠さん。


マヨラーってなんだろう?

と考えながら言い合う2人を見ていたら、2人の視線が一瞬だけ鋭くなったのを、私は見逃さなかった。








お買い物の帰り道、黒瀬さんが少し連盟の方へ顔を出すとのことで、同行させて頂く事に。


「急にお付き合いいただいて申し訳ございません」

「かまいませんよ」

「私は少し上司と話して参りますので、陽葵様は久遠とお過ごし下さい」

そう告げると足早に黒瀬さんは屋敷の中へ入っていく。

「今日は天気も良いし…庭でも見てみます?薔薇園がもうそろそろ咲く頃なんですよ」

久遠さん、薔薇の開花を知ってるって、やっぱり連盟の執事さんなんだと再認識させられる。

お庭に薔薇園があるってここに居なければ分からない事だもんね。

「はい、ぜひ」

「こっち」と久遠さんが優しくエスコートしてくれる。

本当にこの人は、いつもの緩さが信じられないくらい、執事の顔になる事がある。

真剣な眼差し、でも優しい眼差し。

どこか、懐かしい。



—結誓連盟 総統室


「黒瀬、どうしました?」

「急で申し訳ない。実は陽葵様を外にお連れした際に尾行者を確認しました。陽葵様を狙う者です」

買い物中、一瞬だが感じた気配。

陽葵様を狙う者の気配だった。

蒼真との言い合いで俺たちの気が逸れた瞬間だ。

相手は隙を伺っている。


「今すぐに手を出して来る様子では無さそうですね」

さすが神代天音。

俺が報告しようとした事を既に理解している。

言葉を出す必要もなく、俺は頷くだけだった。

「では、引き続きよろしくお願いします」

頭を下げ、総統室を後にしようとしたその時

「あ、黒瀬」と呼び止められた。

他に何か連絡事項はあっただろうか?と考えていると


「コレステロール値、気にしろよ」…と。


天音さんの見通す力はつくづく恐ろしい…。






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