第12話 守るということ
第12話 守るということ
ーーすべてが終わったあとで、ようやく気づくことがある。
黒影との戦いから数日後。
一ノ瀬邸の中庭 に 穏やかな風が吹いている。
何事もなかったような日常 。
陽葵はベンチに座って新緑に輝く木々を眺めていた。
かさ…
草を踏む足音が聞こえ陽葵は口を開いた。
「…終わったんだね」
「まぁ一応は」
ダルそうに、あくびをしながら蒼真が陽葵の隣に腰掛ける。
「完全ではないですが…」
蓮はサッと日傘を開き、陽葵に陽が当たりすぎないようにする。
これがいつもの3人、いつもの距離。
きぃ…
屋敷の門が静かな音と共に開いた。
天音が柔らかな雰囲気を携え、ゆっくりと歩いてくる。
「もう、いいのか?」
と蒼真が問いかける。
「大丈夫なの?」
陽葵もあの日の天音を見ているだけに心配をする。
「問題ありません」
とニコッと天音は微笑む。
「聞きたいことがありますね」
図星だった。全てを見透かすような瞳で天音が口を開いた。
「…私の力って、何?」
陽葵は天音にまっすぐ聞く。
「…あなたの近くにいる者は、覚悟を決める」
天音は静かに語る。
「守ると決めた者は、限界を超える」
蒼真と蓮を見つめ、はっきりと言い放つと視線を陽葵へと向ける。
「あなたの存在は人を強くする」
「……そんな力」
それは蒼真と蓮が陽葵のために無茶をするということ。
「黒影はそれを利用しようとした。支配のために」
一瞬、過去を思い出したように、天音の瞳に影が指したのを蒼真は見逃さなかった。
「力は使い方によって、守る力にも壊す力にもなり得ます」
陽葵はうつむき、少し考えると…
「……怖いね」
正直な言葉だった。
自分の中にそんな力があったことも知らなかったのに。
「でもさ別に変わんないでしょ」
それがどうしたとばかりにサラッと蒼真が口を開いた。
「ああ、変わらない」
蓮は目を閉じ
「俺たちがやることは同じだ」
迷いのない声で話す。
陽葵は2人を見つめた。
少しだけ安心する。
「だからこそ、お前達を専属にした」
天音の言葉には重みがあった。
「お前達ならその力を“間違って使わない”」
天音は少し微笑んで「そう判断した」と話した。
蒼真と蓮は特に言葉はなく、ただ微笑んだ。
そんな2人を見て、陽葵も優しく微笑む。
空気がやわらぎ、優しい風が吹く。
何も変わらない日常。
でも確実に意味が変わった世界。
3人の距離が少しだけ近い。
それはもう “守るためだけの距離”じゃない。
――誰かを強くする力
それは“守りたいと思われる存在”であること
そして “信じることができる関係”だった
そして、それはまだ終わらない。
END




