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第11話 守る者の覚悟

第11話 守る者の覚悟




空気が、変わった。

張り詰めた静寂の中――

最初に動いたのは、蓮だった。

「――行く」

低く呟いた瞬間、地面を蹴る。

速い。

一瞬で間合いを詰め、黒影へ斬りかかる。

鋭い一閃。

だが――

「遅い」

低い声と同時に、刃が弾かれた。

キィンッ!!

重い衝撃が腕に走る。

次の瞬間。

――見えない。

「っ……!」

気づいた時には遅かった。

黒影の一撃が、蓮の体を横から薙ぎ払う。

ドンッ!!

壁に叩きつけられる。

「ぐっ……!」

床に膝をつき、血が滲む。

それでも、刀を握る手は離さない。

「……っ、まだだ……」

息を荒げながらも、立ち上がろうとする。

だが――

「その程度か」

黒影の声は、冷たく落ちた。

圧倒的な力の差。

その現実が、空気を重くする。

黒影の刃が蓮へ振り落とされる、その時だった。

ガチンッ!!

と刃が重なる重たい音が響く。

蓮は目を見開いた。

「蓮、下がれ」

低く、静かな声。

蓮の目の前に居たのは天音だった。

「蓮、俺はお前を、駒だと思ったことはない」

静かにだが確かに響く 。

「ここで俺は」

一歩、踏み込み黒影の刃を押し戻して行く。

「お前や蒼真を見捨てることはしない」

「彼女の専属にお前達をしたのも」

視線が鋭くなり、不敵に笑みを浮かべる。

「お前達が、本当に守るべきものが何か」

「知ってほしかったからだ」


その瞬間。

—ドクンッ。

蓮と蒼真の心臓の鼓動が重なった。


キィィンっ。

天音と黒影の刃が離れると、一瞬で天音は距離を詰める。

一切の無駄のない動き。

その存在だけで、空気が変わる。

「衰えていないようだな」

天音は何も言わない。

ただ、一歩踏み込んだ。

ガキィンッ!!

凄まじい速度で刃がぶつかり合う。

一撃。

二撃。

三撃。

重く、速く、正確。

そのすべてが“完成されている”。

だが――

「……甘い」

黒影の声。

次の瞬間。

衝撃が弾けた。

天音は一瞬、踏ん張ったが体が大きく吹き飛ばされる。

床を滑り、壁に叩きつけられる。

「……っ」

その場にいた全員が、息を呑んだ。

――天音が、体勢を崩した。

ありえない光景。

だが、それが現実だった。

「な……」

蒼真の視界が揺れる。

胸の奥で、何かが弾けた。

「ふざけんなぁぁぁ……!」

怒りが、理性を押し流す。

気づけば、体が動いていた。

「蒼真、待て――!」

蓮の声も届かない。

一直線に、黒影へと突っ込む。

ガキンッ!!

刃と刃がぶつかる。

重い。

圧倒的な重圧。

「ぐっ……!」

腕が軋む。

だが、それでも押し返す。

「守るって……言っただろ!!」

叫びと共に踏み込む。

だが――

「脆い」

黒影の一言。

次の瞬間。

視界が揺れた。

衝撃。

体が宙を舞う。

「がっ……!」

地面に叩きつけられ、息が詰まる。

痛みが全身を駆け巡る。

目の前が暗くなる。

でも…

陽葵の「蒼真ッ!」と叫び声が聞こえる。

痛みを堪え蒼真は、立ち上がる。

膝が震える。

呼吸が乱れる。

血が流れる。

それでも。

「……まだ、終わってねぇ……」

ふらつきながらも、前を向く。


その背中を見て――

陽葵は、震えていた。

怖い。

逃げたい。

でも――

「違う…」

胸の奥で、何かが揺れる。

「守られてるだけじゃ…」

ぎゅっと拳を握る。

足が、前に出る。

「……もう、守られるだけじゃ嫌なの」

小さな声。

だが、確かに響いた。

蒼真と蓮の背中を見つめて。

「私も、守る」

その瞬間。

――光が、溢れた。

温かい光。

暗闇を裂くように広がっていく。

黒影の動きが、一瞬止まる。

「……これは」

初めて、声に揺らぎが混じった。

蒼真が顔を上げる。

蓮が目を見開く。

陽葵から溢れた光が、蒼真と蓮へと届く。

痛みが消えていく。

体が軽い。

「……行くぞ」

蒼真が、低く言う。

「遅れんなよ」

蓮が応じる。


その瞬間。

2人の動きが、重なった。

踏み込む。

斬る。

貫く。

光と刃が交差し――

黒影の体を、捉えた。

ドォンッ!!!

衝撃が弾ける。

静寂が戻る。

その中心で――

黒影が、膝をついた。


「終わりだ」

「悪いな」

2人が黒影へ刃を振り下ろす。

黒影は目を見開いたまま 動かない

「……そうか…守る、か…」

何かを理解したような顔をしている。

そして―― ドサ…

倒れてそれ以上、なにかを語ることはなかった。


静寂が部屋に訪れた。

戦いが終わったのだ。

2人は振り返り、陽葵を見つめた。

その目は優しい、執事の2人の目だった。

ゆっくりと蒼真と蓮を取り巻いていた光は陽葵自身の中へ帰って行く。


「…帰ろう」

「……ああ」


「蒼真、蓮…良かったっ」

陽葵は2人の元へと歩きだそうとするが、少しだけふらついた。

2人は「危ねぇな」と同時に支える為に陽葵の元へ駆け寄った。

支えられながら陽葵は「守れたね」と呟いた。

小さい、けれどハッキリと。

2人は頷き、光が差し込む場所へと向かって歩いた。


――守る者と、守られる者

その関係は、もう同じ場所にあった。


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