表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

第10話 届かなかった一歩の先で

第10話 届かなかった一歩の先で



夜は、やけに静かだった。

風の音すら遠く、ただ足音だけが地面を叩く。

誰も、口を開かない。

重たい空気が、その場にいる全員の呼吸を揃えていた。

「……場所、間違ってねぇんだな」

ぽつりと落ちた声。

蒼真だった。

前を見たまま、視線を動かさない。

その一言に、わずかに空気が揺れる。

「間違いない」

短く返したのは天音だった。

その言葉に迷いは一切ない。


再び沈黙が落ちる。

足音だけが続く。

規則正しく、けれど確実に、目的地へ近づいていく。

その中で――

蓮は、何度も同じ光景を思い出していた。

伸ばされた手。

届かなかった距離。

あの一瞬。

――守れなかった。

無意識に、奥歯を強く噛み締める。

「……次は」

小さく、誰にも聞こえない声。

だが、その言葉だけは確かだった。

今度こそ、守る。

その決意だけが、胸の奥で静かに燃えている。

前を歩く蒼真の背中が、やけに遠く感じた。

いや――違う。

あいつが、前に出すぎているだけだ。

「……遅れんなよ」

振り返りもせず、蒼真が言う。

低く、だが確かに聞こえる声。

「誰に言ってんだ」

蓮は小さく吐き捨てる。

そのやり取りは、いつも通りのはずなのに――

今はどこか、違っていた。

空気が張り詰めている。

踏み込めば、もう戻れない。

そんな予感が、全員の中にあった。

やがて、足が止まる。

目の前に現れたのは、人気のない古びた建物。

灯りはない。

音もない。

だが――

「……いるな」

蒼真が、低く呟く。

その瞬間。

空気が変わった。

まるで、向こう側もこちらに気づいたかのように。

静寂が、張り詰める。

一歩、踏み出せば――

戦いが始まる。



「正面ぶち抜くぞ」

蓮が強く、呟く。

普段、冷静な蓮がこんな事を言うのは珍しい。

蓮の隣で橘は不安を覚えていた。

蓮は常に冷静に見えるがそうじゃない

情に厚い。

陽葵さんの拉致も自分の責任だと思っている。

無茶な事、しなきゃいいが…。

「…行け」

一言 、天音が言葉を発した。

それを合図に蒼真が扉を蹴破り突入する。

蒼真を先頭に蓮も続く。

速い。

2人を追いかけ、隊員たちも一気に雪崩込む。


「侵入者!」

敵の攻撃が始まった。

ガチンッと金属がぶつかり合う音。

バババッと響き渡る銃声。


「どけよ、雑魚ども」

蒼真が低く、重たく呟く。

その覇気で敵が怯んだ隙に複数の敵をなぎ倒していく。

「邪魔だ、クズ」

蒼真の背中を守るかのような立ち位置で蓮が刀を振るう。

一瞬で敵を圧倒していく。


2人の横で刀を振るうのは奏だ。

「蒼真さん、蓮さん、先に行ってください。こんな雑魚共、俺1人で充分です」

戦闘センスは2人に次ぐ実力があるが、まだ若い。

「いけ、お前ら」

ここは俺の出番だとばかりに橘が奏の背中を守る。


「任せた」

蒼真と蓮の声が重なった。

迷いなく、2人は走り出した。

陽葵が居るであろう場所は天音から聞いていた。

敵が何人来ようと2人は無駄のない動きで制圧して進んで行く。


そして――

大扉の前に立った。

「……この先だ」

荒れた息を整えるようにゆっくりと蒼真が呟く。

「……行くぞ」

蓮も息を整え、2人で扉の先へと歩を進めた。






—その扉の向こうに、すべてがあった。


光の差し込まない、暗い部屋。

冷たい空気 が流れている。

陽葵は目を閉じて待っていた。

心の中で 「来る」 と信じながら。


その瞬間―ギィィィ…と扉の開く音が聞こえた。

光のない部屋に少しだけ光が差し込む 。

陽葵は思わず目を細めた。

逆光の中 には2つの影 。

「……待たせたな」

「迎えに来た」

蒼真と蓮の声で陽葵は緊張がほどけ涙が溢れそうになる。

「…っ、信じて、待ってたよ」

涙を堪えて、精一杯の笑顔を2人へ向ける。

2人もほっとした顔を一瞬向けた。


「ちょっと待ってな」

蓮はそう言うと優しく、私を傷つけないように拘束を解いてくれた。

「怪我はない?」

蒼真が心配そうに私の顔を覗き込む。

「うん、大丈夫」

「良かった…」

今にも座り込みそうな勢いで蒼真の肩の力が抜けたのがわかった。

「よし、撤退だ」

陽葵を戦闘に巻き込まない為にはそれが最善だ。

蒼真は頷き、陽葵の手を引いた。


その瞬間――

「ここへ来て、無事に帰れるとでも?」

背後から低い、重い声が聞こえた。

部屋の冷たい空気がピリピリと肌を刺す。


「てめぇ、覚悟は出来てんだろうな?」

蒼真が怒りを剥き出しにして黒影に対峙する。

「俺らを舐めんなよ」

2人とも陽葵の1歩前に出る 。


1対1では勝ち目がない。

2人で戦うしかない。


「愚か者どもが」

「守れると思うか」

お前達など敵ではないと黒影は鼻で笑う。


「思うかじゃねぇよ」

「理由も、理屈もいらない」

「守るんだよ」

「必ず」

2人の言葉が重なったその瞬間。

空気が震えた。


「その通りだ」

天音だ。

圧倒的な圧でこの場を支配した。

「思いだけでは、届かない」

「だが、覚悟で守り抜く」

静かに、だが強い天音の言葉だった。


—守る側と奪う側

すべてがここに集まる 。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ