プロローグ
「守られているだけのはずだった——」
名家・一ノ瀬家に仕える2人の執事、蒼真と蓮。
穏やかな日常の中で、少女・陽葵はただ守られる存在だった。
だがある日、その日常は突然崩壊する。
“守る”という契約。
“力”という代償。
そして——命を懸けた選択。
守るとは何か。
その覚悟は、救いなのか、それとも——。
「壊して、支えて、少しだけ救う」物語が、今始まる。
—全てはあの日から始まっていた。
あの日、私達は選んでいた。
ここは、結誓連盟という名の執事さんの所属する組織のお屋敷。
私、一ノ瀬陽葵は突然、このお屋敷へ呼び出された。
なんでも私に執事がつくと言うけど……。
ソファーに座り、出された暖かい紅茶を飲む。
「美味しい…」
一ノ瀬家のお手伝いさんでもこんなに美味しいと感じた事はなかった。執事さんが入れる紅茶ってこんなに美味しいんだ…。
「気に入って頂けて良かった」
結誓連盟の総統の神代天音さんが微笑む。
「この紅茶、あなたの専属執事になる者がいれたんです。紹介しますね。」
天音さんが扉を開けると2人の執事さんが現れた。
1人は黒髪できっちりとスーツを着ている。
もう1人は…銀髪にネクタイも緩んでいて、ジャケットも着ていない…。
でも…何故か2人を見ていると安心する様な…。
そして、俗に言うイケメン…思わず見つめてしまう。
2人と目が合うと…2人とも驚いたような目をした気がする。
「陽葵さんが美しいのは分かりますが、名乗りなさい」
天音さんの言葉でハッとした黒髪の執事さん。
「申し訳ございません…黒瀬蓮と申します」
銀髪の執事さんは、なんだかダルそうに…
「久遠蒼真です」と名前を言い終えると欠伸をし出した。
「おい、蒼真!」と黒瀬さんが一喝。
「だってよー眠いもんは眠いんだよ…まっ、そういう事で、陽葵さん、よろしく」
なんて…適当な執事さん?と思ったけど…。
突然お屋敷に呼び出されたからか緊張していたが、緩い久遠さんの態度に緊張が解れていた。
「よろしくお願いします、黒瀬さん、久遠さん」
自然に挨拶をする事が出来た。
私はこれからこの2人と生活を共にしていくんだ。
—-陽葵が結誓連盟を訪れる前日。
俺は明日から一ノ瀬陽葵の専属執事となる。
資料が回って来た時、いつもなら実務は若手に任せるが、この人は俺が守る、とひと目で決めた。
橘さんも天音さんもすぐに承認してくれた。
遠い記憶の中に1人の少女が不安そうにしている。
俺は何かを呟いたが思い出せない。
その記憶と関係があるのかは分からない。だが、この人は俺が守る。
「なぁー蓮。俺はなんで執事してんだろ」
同期の久遠蒼真だ。執事であるにも関わらずネクタイもしっかり締めない、ダルそうにやる気のない態度だが、連盟に所属している。
蒼真は何これ?と俺の手から資料を横取りしていく。
「さぁなー資料返せよ!」資料を奪い返そうとするとヒョイっと避けられた。
「…決めた。おれ、こいつ守るわ」
「はぁ?もう俺に決まったんだよ!」
「天音に伝えりゃ大丈夫だろ」と資料を持ったまま総統室へ向かっていく蒼真。
「勝手なヤツ」
奴の適当さ加減はどうにかならないのかと思うが……まぁ蒼真だから、仕方ない。
遠い記憶の中で花を愛でる1人の少女がいる。
なぜか不安そうにしている。
俺が「守る」とその少女に向かって呟いた。
何から守るのか、なんでそう思ったのか思い出せない。
だが、この子は俺が守ってやる。
すべてはあの日から決まっていた。
誰が、誰を守るのか。
そして、……誰が全てを背負うのか。
物語は、ここから始まる。




