第5話 食卓にて
村長の号令により、俺の帰還を祝う宴が催されることになった。
場所は村で一番デカい村長の家だ。
屋根をひしゃげさせた張本人である銀色のドラゴンは、まだ修道院の上に居座っている。
「……お前、あとで色々聞かせろよ。なんでそんなデカくなってるのとか、全部な」
俺がそう言うと、巨大な龍は黄金の瞳を細めて、満足そうに鼻息を吹いた。
その風圧だけで俺のボロボロの装備がガタガタと鳴る。
宴の前に、まずは七年分の汚れを落とすことにした。
村の外れにある馴染みの川へ向かい、こびりついた戦場の泥と、血の匂いが染み付いた服を洗い流す。
冷たい水に浸かりながら、自分の体を見る。
あっちの世界や軍隊では、レベル1というだけで「役立たず」のだった。
だが、七年間も地獄のような実戦を潜り抜けてきたんだ。
「……これくらいなら、いけるか」
川岸にある、大人が両手で抱えるようなサイズの岩に手をかける。
ぐっと足を踏ん張ると、意外なほどあっさりと岩が浮いた。
レベルは1で固定されたままだが、俺の肉体は七年分の鍛錬を裏切っていない。
魔族がうようよいる戦場ではゴミ同然の力でも、この平和な村なら、常人よりは少し強いくらいにはなっているはずだ。
「まあ、畑仕事の手伝いくらいはできそうだな……」
少し安心し、乾かした服に着替えて村長の家へと向かった。
家の中は、料理の香ばしい匂いと村人たちの笑い声で溢れていた。
俺は促されるままに、上座に近い席へと足を運ぶ。
そこには、一人の少女が座っていた。
「……え?」
思わず足が止まる。
長い銀髪を揺らし、夕光のような瞳を細めてこちらを見る美少女。
十六歳。成人を迎え、大人の女性へと脱皮する途中の、危ういほどに綺麗な姿。
そこには、さっきまで修道院をプレスしていた巨大なドラゴンの面影はなかった。
「あ……セラフィア……?」
「おかえり、ジーク。ずいぶん長風呂だったね」
少しだけ成長した彼女の声は、記憶の中の幼なじみよりもずっと艶っぽくて。
一度も赤くなったことのない俺の顔が、一気に熱くなるのが分かった。
「……な、なんだよ。人にも戻れんじゃねぇか……」
照れ隠しに顔を背けて毒づくと、セラフィアは椅子から身を乗り出してきた。
そして、柔らかい指先で俺の頬をツンとつく。
「あ、やっと照れた。さっきはツッコミばっかりで、全然可愛い反応してくれなかったもんね」
「うっせ……。デカすぎたんだよ、お前が」
「ふふ、これからはこのサイズで、ずっと君の隣にいてあげる。……覚悟してね?」
彼女の悪戯っぽい、けれど少しだけ真剣な瞳。
クソッッ!!可愛いじゃねぇか!!




