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第43話 理不尽の咆哮

夕闇が降りる広場に、ジークの静かな声が響いた。


「レベルは1だ」


その一言が、パラガスの脳内で爆ぜた。

「……は? 1……だと?」


パラガスは動きを止め、信じられないものを見るような目でジークを凝視した。

レベリングシステムで最底辺。戦場で生きられるはずが無い、そんな奴が英雄である自分を、王国の象徴であるこの剣をここまで追い詰めたというのか。


「ふざけるな……ふざけるなよ! そんな奴がいるか! どこの馬の骨かもわからんレベル1のゴミが、俺様に、勇者パラガスに土をつけたとあっては、俺様の格が、歴史が汚れるんだよぉぉぉぉぉお!」


パラガスの顔が怒りで赤黒く変色し、その全身から剥き出しの魔力が噴き上がった。

もはや決闘の礼儀も、村人への手加減も、彼の頭からは消え失せていた。


「見せてやる、これが選ばれし者の……神の力だ! 《不速之致ス所(ふそくのいたすところ)》!!」


パラガスが叫ぶと共に、彼を中心に不可視の衝撃波が全方位へと撒き散らされた。

次の瞬間、轟音と共に周囲の地面が巨大なスプーンで抉り取られたかのように爆ぜた。土塊が礫となって降り注ぎ、広場に面した民家の壁がひび割れ、屋根の瓦が吹き飛ぶ。


それは技術でも、戦術でもない。

ただ圧倒的な出力を叩きつけるだけの、暴力的で、理不尽なまでの「火力」だった。


「ひっ、逃げろ! 巻き込まれるぞ!」

「家が……俺たちの畑が!」


村人たちがパニックに陥り、悲鳴を上げながら逃げ惑う。

セラフィナは、パラガスの放った無差別な余波が子供たちに向かうのを見逃さなかった。


「……っ、あの馬鹿!」


セラフィナはジークの身を案じてその場を動けずにいたが、村の被害が拡大するのを黙って見てはいられなかった。彼女はジークに一瞬だけ鋭い視線を送ると、身を翻して村人たちの避難誘導へと飛び出した。


「みんな、落ち着いて! 壊れた家の影には入らないで、あっちの広場へ! 急いで!」


竜の力を極限まで抑え込みながらも、彼女は飛来する土石を不可視の壁で弾き飛ばし、逃げ遅れた老人を抱え上げる。

だが、その瞳は絶えず背後――爆炎と砂塵に包まれたジークの姿を探していた。


「ジーク……! 無茶はしないで、お願い……!」


セラフィナの祈りにも似た呟きは、パラガスの狂気的な笑い声にかき消された。

土煙の向こう側で、レベル1という脆い存在のまま、ジークは「災害」と化した勇者と対峙し続けていた。

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