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第42話 夕暮れの挑戦者

西日が広場をどろりとした赤色に染め上げていた。パラガスは鼻を鳴らし、腰の剣に手をかけた。


「貴様のような農夫が、これほどの女を隣に置くなど分不相応だ。身を引くというのなら、今の無礼は不問にしてやろう」


ジークは溜息を吐いた。


「バカバカしい。彼女は物じゃないんだ。あんたの機嫌でどうこうできる相手じゃない」


その言葉に、パラガスは顔を真っ赤にして叫んだ。


「ならば実力で分からせてやる。断るというなら、俺様が国から預かった公権力をもって、強制的に彼女を徴用してやるまでだ。逆らうというなら反逆罪だぞ」


その瞬間、ジークの瞳から温度が消えた。同時に、隣に立つセラフィナからも、冬の嵐のような鋭い魔力の胎動が漏れ出した。


「公権力をそんなことに使うのか。……いいだろう、あんたがそう言うなら、逃げるわけにはいかない」


「面白い。安心しろ、俺様は慈悲深い。村人相手に俺様の力を使うのは可哀想だからな。手加減(舐めプ)して、剣技だけで相手をしてやるよ」


パラガスは勝ち誇ったように笑い、抜いた剣を無造作に構えた。彼にとって、それは退屈しのぎの「教育」に過ぎないようだった。



「身の程を教えてやる。英雄の剣筋、拝ませてやるぞ!」


パラガスが叫び、凄まじい風圧を伴って大剣を振り下ろした。黄金の装飾が施された刃が夕日を反射し、爆音と共に地面を深く抉る。村人たちが悲鳴を上げ、砂塵が舞い上がった。一見すれば、パラガスの圧倒的な攻勢に見えた。力任せに振り回される一撃一撃が、ジークの細身の体をなぎ倒さんばかりに襲いかかる。


だが、ジークの表情には焦り一つなかった。


「どうした、逃げ回るだけか! さっさと剣を合わせろ!」


苛立ちを募らせたパラガスが、さらに大きく、力任せに横薙ぎの一閃を放つ。

だが、ジークはそれを、まるで紙一重で「計算」するようにかわした。


ジークの動きは、舞い散る木の葉よりも静かで、そして必死だった。

それは、戦場の最前線という地獄で、レベル1という圧倒的な弱者が生き延びるために削り出された、生存のための極限の合理化だ。


「なっ……!」


パラガスの脇腹に、ジークの短剣が鋭く突き刺さる。

鎧の合わせ目を正確に狙った、容赦のない一撃。

パラガスは狼狽し、大きく体勢を崩した。


「な、なんだ貴様……その動き……。お前、戦争に参加してたのか?」


パラガスが荒い息を吐きながら問いかけた。


「ああ」


ジークは短く答え、鋭い踏み込みでパラガスの懐に入った。パラガスは狼狽し、必死に剣を盾にして防ぐ。


「レベルは? 何だ!」

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