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第40話 厄介な報奨

王都の軍務局では、戦後の予算縮小に伴う「英雄整理」が淡々と進められていた。戦争の火種が消えつつある今、莫大な維持費がかかる勇者たちは、国にとっての守護神から高価すぎる不良債権へと変わり果てていた。


大半の勇者たちは、提示された多額の手切れ金に満足して市井へと戻っていった。だが、事務官たちが頭を抱える例外がいた。


「金などいらん。俺が欲しいのは、俺に相応しい地位と権力だ」


そう豪語するのは、勇者の一人、パラガスだった。彼は金銭的な報酬よりも、自らの威光にひれ伏す民衆と、絶対的な命令権を何よりも重んじる、横暴で自己中心的な男だった。従来の恩賞制度では扱いきれないこの猛獣を処分するため、国は一つの嘘をついた。


「辺境に魔王軍の残党が潜伏しているとの情報がある。非常に重要な戦略拠点だが、過疎化が進み警備が手薄だ。貴殿にはそこへ赴き、実質的な支配者として村を守っていただきたい」


そう告げられた辺境の村こそが、ジークがようやく安寧を見出し始めた故郷であった。


数日後、パラガスは仰々しい鎧を鳴らし、土埃を上げて村に現れた。彼は開拓途中の麦畑を見下ろし、出迎えた村人たちに開口一番、傲慢な声を張り上げた。


「今日からこの俺が、貴様らの正義であり法だ。俺の言うことに従っていれば、魔族の影に怯える必要はない。まずはその、不揃いで見苦しい畝をすべて平らにしろ。軍隊に規律が必要なように、土地にも美しさが必要だ」


パラガスは自分が正しい判断者であることを疑わず、当然のように村を自分色に染めようとした。守ってやっているのだから従え。その態度は、ようやく手探りで自分たちの生活を再編し始めていた村人たちにとって、あまりに的外れで不快なものだった。


パラガスは、村人たちが恐れおののき、感謝と共に膝をつくのを待っていた。あるいは、無知ゆえに沈黙し、自分の威光にただ圧倒されることを期待していた。


しかし、返ってきた反応は、彼の想定とは大きく異なっていた。


「……あ、そう。じゃあ、警備は好きにやってくれ。俺たちは仕事があるから」


一人の農民が、パラガスの言葉を軽く受け流し、再び鍬を振るい始めた。他の者たちも、指示を聞いてはいるものの、その表情には疑問や、隠しきれない軽視が混じっている。彼らは無言のまま、ジークと共に決めた歪な畝を守るべく、自分たちのやり方を貫こうとした。


パラガスは困惑し、顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。


「なぜだ! なぜ俺の言うことを聞かない! 貴様ら、これが勇者の、国の命令だと分かっているのか!」


力でねじ伏せようとすればするほど、村人たちの心は離れ、冷ややかな空気が場を支配していく。かつて戦場で魔王軍を震え上がらせたパラガスの威圧も、明日の収穫と日々の暮らしに心血を注ぐ農民たちには、ただの作業の邪魔にしか映らなかった。


パラガスはその後も、自らの力を誇示しようと試みた。土地を肥やそうと光の魔術を放ったが、それはセラフィナが危惧していたリズムのズレをさらに悪化させ、かえって土を硬く焼き付かせる結果となった。


憤る勇者と、それを取り合わない村人たち。

その奇妙な対立の中で、皮肉にも一つの事実が浮き彫りになっていく。


この繊細に狂った土地の鼓動を聞き、人々の複雑な感情を解きほぐし、この村を真に前へ進められるのは、力で支配する英雄ではない。

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