第23話 守られる理由
セラフィナは、自分を取り囲む温かな空気の中に立ち尽くし、激しく混乱していた。
ずっと恐れていたことが起きたのだ。自分が、人智を超えた暴力的なまでの力を持っていることを、村の皆に知られてしまった。
(怖がられると思っていた。化け物だと言われて、居場所を失う覚悟はできていたのに)
だが、目の前の光景は、彼女の想定とは真逆のものだった。
拒絶されるどころか、村人たちとの距離は以前よりも近くなっている。
「セラお姉ちゃん、さっきの凄かった! 強いお姉ちゃんの方が、かっこよくて大好き!」
一人の子供が無邪気に笑いながら、セラフィナの服の裾を引っ張った。
彼女にとって、それはあまりにも想定外すぎる反応だった。
化け物の力だと思っていたものは、村の子供たちにとっては「かっこいい憧れ」でしかなかったのだ。
立ち往生する彼女の隣に、ジークがようやく歩み寄った。
気の利いた慰めも、格好いい台詞も思いつかない。
だから、彼は自分でも驚くほど不器用に、ぶっきらぼうに告げた。
「……これからは、半分くらい俺にやらせろ」
その言葉に、セラフィナは弾かれたようにジークを振り返った。
そして、一秒の迷いもなく即答した。
「無理です」
「……え?」
「あなた、すぐ無茶をするので。見ていてハラハラします」
「……おい」
「それに、戦場帰りの割に判断が甘いです。あそこで左肩を貸す必要はありませんでした。あと、剣筋が直線的すぎます」
急に辛辣な言葉が矢継ぎ早に飛んでくる。
だが、その毒舌のキレの良さこそが、数日間失われていた「元の距離感」が戻り始めている証拠だった。
ジークは呆気にとられ、それから堪えきれずに吹き出した。
「……ははっ、手厳しいな」
「本当のことですから」
「……じゃあ、俺がその弱点を直すまで、稽古に付き合え」
今までの二人の関係は、圧倒的な力を持つ守護者と、その庇護を受ける側でしかなかった。
だが、今この瞬間、その形は明確に変わった。
どちらかが一方を守るのではなく、背中を預け合い、共に高め合うための「共闘関係」への移行。
「……高くつきますよ、私の指導は」
少しだけ、いつもの意地悪そうな笑みを浮かべてセラフィナが言った。
ジークはその微笑みに、本当の意味での「おかえり」を告げられたような気がしていた。




