第18話 誓いの言葉
広場の中央、壇上に立ったシスターが、集まった村人たちに向けて高らかに宣言した。
「修道院長が不在のため、本日はこの私が院長代理として、二人の婚姻の議の執り行いを務めさせていただきます!」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、村中から割れんばかりの歓声が上がった。
「シスター、頼んだぞ!」
「最高の式にしてくれ!」
地響きのような盛り上がりの中、シスターが静かに手を挙げると、広場は一転して水を打ったような静けさに包まれた。
ジークはゆっくりと立ち上がり、村人たちの顔を一人一人見渡した。
その中には、戦争で家族を失った遺族たちの姿もあった。
ジークは深く息を吸い込み、静かに、しかし力強い声で話し始めた。
「この七年……俺と一緒に戦場を駆け、誇り高く散っていった仲間たちがいた。俺が今ここに立っていられるのは、間違いなく彼らがいたからです」
祭りの浮かれた空気が、一瞬で厳粛なものへと変わった。
楽しげな熱が引き、祈りを捧げるような沈黙が場を支配する。
「遺族の方々には、これだけは伝えておきたい。彼らは決して無駄に死んだんじゃない。最後まで仲間を想い、誇りを持って戦い抜いた。俺は、彼らの分もこの村で精一杯働き、生きていくことを、ここで誓います」
ジークの言葉に、遺族の幾人かが目元を拭い、深く頷いた。
仲間の死を背負い、それでも前を向くジークの覚悟は、村人たちの心に深く届いていた。
そして、ジークは隣に座るセラフィナの方へと体を向けた。
先ほどまでの厳しい兵士の顔ではなく、一人の男としての、真っ直ぐな瞳で彼女を見つめる。
「そして、セラフィナ」
「……ええ」
「七年も待たせて、不安にさせて、本当に悪かった。あの時言えなかった言葉を、今ここで誓う」
ジークは彼女の両手をしっかりと握りしめた。
「今度は俺が、お前を一生守り抜く。世界中の何からもお前を遠ざけて、必ず幸せにする。俺の命を懸けて、お前を愛し続けることを誓うよ」
あまりにも真っ直ぐな言葉に、セラフィナの黄金色の瞳がみるみるうちに潤んでいく。
彼女は言葉にならない声を漏らし、ジークの胸に顔を埋めた。
「……バカ、ジーク。――――ありがと……」
静まり返っていた広場に、今度は温かな拍手が沸き起こった。
それは祝福の喝采であり、長い戦いを終えて帰ってきた英雄への、心からの労いでもあった。




