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第17話 零れ落ちた本音

村の中央広場には、古くから伝わる婚姻者専用の特別製の椅子が二つ並べられていた。

職人が精魂込めて彫り上げた見事な木の椅子に、セラフィナは所在なさげに腰掛けていた。


「……なんだか、全然実感がわかないわね」


隣に座るジークに、彼女は俯き加減で、消え入りそうな声を出した。

いつもなら余裕たっぷりにジークを振り回す彼女だが、今ばかりは純白の花冠が震えるほどに緊張しているようだ。


ジークはしばらく黙って広場の準備風景を眺めていたが、意を決したように深く息を吸い込んだ。


「……セラフィナ」


「な、なあに?」


「ずっと、言えなかったことがあるんだ」


ジークは彼女の横顔をじっと見つめ、喉まで出かかっていた言葉をようやく形にした。


「俺、お前のことが……好きだ」


突然のストレートな告白に、セラフィナの肩がびくりと跳ねた。

ジークの言葉は、もう止まらなかった。今まで溜め込んでいた本音が、次から次へと溢れ出してくる。


「兵役中の七年間、明日死ぬかもしれないって思う夜が何度もあった。でも、そんな時はいつもお前のことを考えてたんだ。お前にまた会いたいから、死んでたまるかって、それだけを考えて頑張ってこれたんだよ」


飾りのない、剥き出しの言葉。

普段のセラフィナなら、「あら、熱烈な告白ね」とでも言ってからかうところだろう。


しかし、今の彼女にそんな余裕は微塵もなかった。

顔から火が出そうなほど真っ赤になり、膝の上で握りしめた拳が微かに震えている。


「ふ、ふ~ん……。そんなに私のこと、思っててくれたんだ……」


余裕のない声で、絞り出すようにそう答えるのが精一杯だった。

からかうどころか、まともにジークの顔を見ることすらできない。


「……ああ、そうだ」


ジークもそれ以上は何も言えなくなり、自分の口から出た言葉の熱量に今更ながら気付き、急激に恥ずかしくなってきた。

婚姻の主役である二人が、並んで座ったまま真っ赤な顔をして、互いに逆の方向を向いて黙り込む。


広場には、村人たちが準備に走り回る騒がしい音だけが、やけに遠く響いていた。

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