第13話 誇らしげな笑顔
村での倒木処理を終え、ジークは修道院へと戻った。
そこではシスターの指揮のもと、数人の村人とセラフィナが、ひしゃげた屋根や壁の修復作業に追われていた。
「戻ったか、ジーク」
「村の方は片付いたのかい?」
シスターに促され、ジークはすぐに作業の輪に加わった。
現場では、二十歳の人間たちが四人がかりで、崩れた巨大な石材を運ぼうと悪戦苦闘していた。
「おい、せーの……!」
「くそ、重すぎるだろ、これ!」
「あと三人くらい呼んでこないと動かねえぞ!」
男たちが顔を真っ赤にして踏ん張る横で、ジークはひょいと石材の端に手をかけた。
「これ、あっちに運べばいいんだな?」
ジークは無造作に、まるで軽い荷物でも扱うかのような手つきで、その巨大な石を一人で持ち上げた。
その場にいた全員の動きが、一瞬で凍りついた。
「……えっ?」
「おいジーク、お前それ、一人で持ち上げたのか……?」
ジークは驚く村人たちを余所に、鼻歌でも歌い出しそうな軽やかな足取りで石材を運び、指定された場所に静かに置いた。
二十歳の男たちが何人も集まってようやく運べるほどの重量を、彼はたった一人で、しかも事も無げに処理してしまったのだ。
「ジーク、お前いつの間にそんな力をつけたんだ!」
「二十歳の連中が何人もがかりでやっとの物を一人でなんて、感心したぞ!」
「逞しくなったなあ、本当によくやってくれた!」
次々に浴びせられる称賛の声に、ジークは少し照れくさそうに頭を掻いた。
自分の中ではずっとレベル1の落ちこぼれだと思っていたが、今の肉体には、確かに常人離れした力が宿っている。
自分でも驚くほどの身体能力の変化を、ジークは改めて実感していた。
ふと視線を感じて振り向くと、そこには少し離れた場所で掃除をしていたセラフィナが立っていた。
彼女は掃除の手を止め、ジークのことをじっと見つめている。
「……ふふっ」
セラフィナは、朝の気まずい時間に見せていた「大人びた」すまし顔をどこかへ忘れてきたかのように、満面の笑みを浮かべていた。
自分のことのように嬉しそうに、そしてどこか誇らしげに胸を張る彼女。
「ねえ、ジーク」
「やっぱり、ジークは凄いんだよ」
誇らしげに笑う彼女の姿に、ジークは胸の奥が熱くなるのを感じた。
気まずかった空気は消え去り、彼女の弾んだ声が、修道院の庭に心地よく響いていた。




